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第八章

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 人の弱みに付け込み精神的優位に立ったフリンジからの、

『どうしましたぁ「当代の七草」ぁあぁ♪』

 不気味な半笑いから繰り出される休む事の無い連続攻撃に、
(クッ……)
 防戦一方のラディッシュ。

 そんな彼の心の傷口に、更に塩を擦り込むように、

「思い当たる節があり過ぎてぇ、もはや反論も出来ませんかぁ♪」

 悦に入った表情で、いつもの無表情と四角張った物言いは何処へやら。
 そこへ、

『この外道がァアアァァア!』

 鋭い一刀を叩き込んだのは、ドロプウォート。
「チィ!」
 咄嗟に飛び退くフリンジに切っ先を向け、

「他者の悲しみに付け入るばかりの戦いなど、騎士として以前に人として恥ずべき行為ですわァ!」

 怒りを露にしながらも、

『貴方は何をしていますわのぉラディ!』

 動揺を隠せぬ目をしたラディッシュに活を入れ、

「外道の世迷い言ごときに何を動じていますわの!」
「そ、それは……」
「開戦間近であった勇者同盟四国を「融和に導いた」のは誰ですわの! アルブル国を救ったのは! 弱体化したパラジット国が蹂躙されるのを防いだのは! アクア国の崩壊を未然に防いだのは! 貴方が活躍していなければ、より多くの人々が苦しんだのですわよぉ! 自分にもっと自信をお持ちなさいですわぁ!」
「じ、自信……」
「そうですわ! 人は神ではありませんのですわ! 個人に出来る事など限られているのですわ! 貴方は一人の人間として十分過ぎる働きをして来たのですわぁ!」
(そうだ……僕は、救えなかった人達の事ばかり後ろ向きに考えて……)

 それは救われた人々の想いに、後足で砂をかけると等しい行為であったのに気付き、反省に至った彼の目は輝きを取り戻し、

『ゴメンねドロプ、目が覚めたよ!』

 狼狽えは毅然へと置き換わり、

「ありがとう!」

 その晴れ晴れした笑顔に、
(もぅ御尻を御叩きする必要は、ありませんのですわねぇ♪)
 安堵を得たドロプウォートはフリンジに切っ先を向けたまま、喜びのあまり思わず、

『それでこそ「私の勇者」ですわぁ♪』

 口走った一言に、ラディッシュはドキリ。
「わっ、私の勇者ぁって……」
 赤面顔で彼女の言葉を反芻すると、気付いた彼女も慌てに慌て、

『こぉ、これはぁ、誓約者としての言葉として、ですわぁあぁ!』

 裏返り気味の声で弁明。

「あっ! う、うん! そ、そうだよねぇ♪ もぉ、モチロン分かってるよぉ!」

 ラディッシュも釣られて慌てた様子でフォローを入れたが、

「「…………」」

 気恥ずかしそうに見つめ合う二人。
 未だ次のステージへ踏み出せない、初々しい青春(あおはる)の様相を見せ、平たく言えば目の前で「イチャつく二人」に、

『当方の存在を無視するなぁあぁ!!!』

 激昂するフリンジ。
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