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第八章

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 共に召喚され行方不明となった九十九人の勇者、誓約者たち、中世を守る為に命を落して行った数多の人々の事を思うと、ラディッシュ達はやるせない気持ちになったが、元老院に敵対する意思を持った彼女たちの解説は止まず、

「百人の天世人に順位を付けて競わせているのは、元老院に対する不満の矛先を逸らす為のガス抜きしぃ。で、勇者一人しか召喚させない規則は、公平を言い訳に戦力を持たせない為の方便しぃ」
「反乱を起こされた時に、手駒(勇者)を多く持たれてると厄介でしょ?」
「手駒って「天世の七草」みたいに?!」
「そうしぃ。でも、それはあくまで「元老院守護者の総称」しぃ」
「ソウショウ?」
「実際には、七人以上いるのしぃ」

「七人以上ぉ?!」

「召喚の度に「成績優秀だった勇者」は、元老院に保管されるのしぃ。百人の天世人に渡す得点と引き換えにぃ」
「「「「「「「なっ!?」」」」」」」

 不快を覚えるラディッシュ達。

《命懸けで戦った人を物のように!》

 その眼は百人の天世人であるリンドウとヒレンにも向けられたが、二人は即座に、

『『(アーシ・私)達は渡してナイ(しぃ・わ)!』』

 ゴゼンも含めて無罪であるのを強調し、
「アーシはぁ、あくまでぇ天世での功績とぉ民の後押しで登り詰めたしぃ!」
「わ、私とアレ(ゴゼン)は前任者の七光り、権威で上位に居るだけよ!」
 罪を否定したが、当然の疑問として、

「それなら二人が召喚した勇者はどうなったの? ラミウムは「必ず一人は」って、言ってたけど」
『『!』』

 一瞬、ギクリとした顔を見せる二人。
 気マズそうに視線を落とし、
「「…………」」
 察したラディッシュの、

「亡くなったんだね……」

 悲し気な問いに、二人は小さく頷き、

「昔のアーシ達はぁその事にぃ……そこまで深く疑問を持たなかったのしぃ……」
「そんな私たちに気付くきっかけと、動くきっかけを与えた天世人が居たの……」

((((まさか!))))

 即座に一人の人物を頭に描く、ラディッシュ、ドロプウォート、パストリス、ターナップ。
 気付きを見せた四つの顔に、リンドウは小さく頷き、

「そうしぃ。それがラミウムしぃ」
「「「「「「「!」」」」」」」

 古参の勇者組、新参の勇者組、それぞれに思う所がある中、

「蜂起を決定づけたのはぁ、エルブ国でのあの一戦しぃ」
「あんな献身を見せられて、動かない訳にはいかないわ」

 心振るわせる二人。
 ラディッシュたち勇者組は、ラミウムと言う存在の大きさを改めて知った。

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