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第八章

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 ターナップの好機を逃さぬ問いに、仲間たちも耳をそばだてたが、ゴゼンは意外にもあっさりと、
「それはだョねぇ~♪」
 軽く答えようとした。

『ゴゼェェェン!!!』

 かつてない強い口調で制したのは、リンドウ。
 射貫くような眼光で、短く一言、

「黙るしぃ……」

 その「怒り」を多分に含んだ本気の目に、
「…………」
 彼は短くため息を吐き、

「ヤレぇヤレぇ分かったよぉ♪ 期待させてぇゴメンねぇターナップちぃん♪」

 小さく笑ったが、リンドウは平時から一変した重々しい口調のまま、

「今は、まだ話せないしぃ」
「「「「「「「…………」」」」」」」

 言葉少な、余談許さぬ物言いで、

「今日は「お開き」しぃ……」 

 立ち上がって屋敷内に戻って行き、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 ゴゼンとヒレンも立ち上がり、

「ボスがぁ、あぁ言ってるんでぇゴメンねぇ~♪」
「アンタは口が軽過ぎるのよ」

 彼女の後に続いた。

「「「「「「「…………」」」」」」」

 中庭に取り残される勇者組。
 本題であった筈の「病めるラディッシュへの対応」は、結果的に話されぬまま。

 屋敷内の廊下を、先陣切って黙々歩くリンドウ。
 その背が放つ重苦しい空気に耐えかねたゴゼンが、あえて明るく、いつも通りの軽口で以て、

「ョおョおリンドウちゅぁん、なぁんでぇ話しちゃいけないのョおぉ?!」
「…………」

 歩みを止めず、答えもしない背。
 すると見兼ねたヒレンが、

「馬鹿ね」
「およよぉ?」
「話せる訳が無いでしょ」

 リンドウの内なる考えを代弁するが如く、

「百人の天世人の「順位入れ替え」が何で決めているかも、説明する事になるのよ?!」

 天世の「民の声」以外の、何かしらの選考基準があるのを窺わせると、責めるように諭されていたゴゼンも、
「あぁ~確かにソレはぁマズイョねぇ~♪」
 笑っておどけ、

「「?!」」

 急に足を止めるリンドウに二人は驚いた。
「「?」」
 すると彼女は肩越しチラリと振り返り、怪訝な表情で、

「この町から早く出るのしぃ」
「「え?!」」
「ラミウムとの縁(えにし)が深いこの町にぃ、この国にぃ、今の状態のラディをいつまでも置いておくのは良くないのしぃ」

 その横顔は「反論許さぬ」とでも言いたげであったが、

「まぁねぇ~♪」
「そうね。心が壊れて、戦力として使い物にならなくなったら困るわね」

 異を唱えること無く、天世の三人は後日、次なる「中世の文化習得」を理由に、エルブ国からの出立をラディッシュ達に申し出た。
 半ば、強制的な物言いで。

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