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第八章

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 乗り越えなければならない問題が解決に至るより先――

 村はずれに身を隠し、密かに指示を出していた「首謀犯の天世人四人」がほどなく捕縛された。
 呆気ない幕切れであったが、スパイダマグたち親衛隊の尋問に対し四人は犯行理由を、

《チョウカイ様の密命により》

 実行に至った動機を、

《百人の天世人の席を与えると言われ》

 同胞の稚拙さ、短絡さに、
「「「「「「「「…………」」」」」」」」
 呆れるばかりの中世に降りた天世人、スパイダマグたち親衛隊やリンドウたちであったが、捕らえた四人の胸元に目を留め、

『『『『『『『『ッ!』』』』』』』』

 ギョッとした。
 天世組の驚きように、

「どっ、どうかしたの?!」

 戸惑いを覚えるラディッシュたち勇者組。
 するとスパイダマグは困惑した口振りで、

「か、彼らが身に付けている首飾りは「地世のチカラの浸蝕を阻む」と言う、天世において非常に貴重な装飾品なのです」
「「「「「「「?」」」」」」」

「つまりは、その……捨て駒に与えるに「あまりに不釣り合いな品」でして……」
「「「「「「「…………」」」」」」」

 チョウカイの真意が読めずに居ると、

『なるほどしぃ~♪』

 気付き声をあげたのは、彼女との因縁浅からぬリンドウ。
 振り向くラディッシュ達やスパイダマグ達を前に、

「何でコイツらぁ「わざわざの四人」だとぉ思うしぃ?」

 辟易した笑いを見せながら、実行犯の一人から首飾りを取り上げると、

「あぁ~なるほぉ」
「そう言う意味なのねぇ」

 ゴゼンとヒレンも何事かに気付いた様子の半笑いで、各々実行犯から首飾りを取り上げると、リンドウは残る一人からも首飾りを取り上げ、

『これってばぁアーシ達に宛てた物しぃ♪』

 それを未だ理解の及ばぬ様子のスパイダマグに差し出し、
「アーシらにぃ「(邪魔だから)帰って来るな」って当て付けしぃ♪」
「!」
「回りクドイのが好きなぁアノ女がやりそうな事しぃ~♪」
 呆れ笑いに、

「「「「!?」」」」

 愕然とする、指示役であった天世の四人。
 話の流れから、自分たちが「アサシン(暗殺者)」として放たれたのではなく、計画の成否は二の次の、捨て駒、単なる運び屋、メッセンジャーとして、中世に降ろされたのだと悟り。
加えて、捕縛されるのも織り込み済みであったとも理解した。

 地世のチカラの浸蝕を妨げる首飾りを取られ、村から逃げる事も出来なくなった失意の天世人四人。
 その一方で、とある懸念を抱えていたラディッシュにとってリンドウ達が首飾りを手にしたのは、

《ラッキィー♪》

 正に棚から牡丹餅であった。
(これでリンドウさん達を、自由に連れ回せぇる♪)
 とある懸念とは「地世のチカラの浸蝕」。

 長距離移動ともなれば天世人三人が受ける汚染は免れず、かと言って敵の襲撃がいつ、何処であるか不明な旅路で、村や町に定期的に入って「教会で浄化を受ける」など現実的な話ではなく、三人が地世のチカラの浸蝕を受けないようにする方策は、解決必須必の事案であった。
 しかしそれも「地世のチカラを阻む首飾り」を手に入れた事で無事に解決。
 ラディッシュは、

(行こう!)

 旅立ちを決意した。
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