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第八章

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 下位の者(親衛隊)らに命令を鼻先であしらわれ、物言いが「癪に障る」とまで言われた百人の天世人リンドウたち。
 黙って引き下がる筈も無く、暴発寸前の怒りの矛先はラディッシュに。

『ならぁイイしぃ! 師匠のアータがぁウチらを満足せる料理が作れたらぁ、「末席」と呼ぶのも止めるしぃ、「謝罪」もするしぃ!』
「え?!」

 まさに、とばっちり。
 八つ当たりをぶつけられ、

(なぁ~んか面倒な事になっちゃったなぁ~)

 仕方が無いと言わんばかりの困惑笑いを浮かべるラディッシュであったが、そんな当人を差し置いて、

「「「「「「…………」」」」」」
「「「「「…………」」」」」

 怒り心頭の御様子なのは勇者組の仲間たちや、親衛隊の面々。

(僕には、ヘタレで怒れない僕の代わりに、怒ってくれる人達が居る……だったら「ウマイ」と唸らせる料理を作らないとぉ♪)

 内心で嬉しく思いつつ覚悟を決め、しかし表面上は渋々を装い、

「分かりましたぁ、作りますよぉ」

 ヤレヤレと言った口振りで、
「それで「どのような品」をご所望でぇ?」

 皮肉交じりの笑顔でおっとり問うと、リンドウは「腹の虫の音(ね)」がよほど恥ずかしいのか未だ「鳴きやまぬ腹」を懸命に抑えながら、

『とぉっ、とにかく「早く」しぃ!』

 ゴゼンは変わらぬ軽薄で、
「ヤッパぁ「肉」っしょお♪」
 そしてヒレンは、
「手軽に食べられる物よ! 本を読む時間が食事に取られるなんて有り得ないわ!」

 統一感が無く、各々好き勝手に言いたい放題。

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 天世人のワガママに仲間たちや親衛隊の面々が呆れた顔をする中、ラディッシュは何か閃いた様子で、

「ナントカの一つ覚え、みたいにはなるけどぉ♪」

 自虐的に小さく笑って、

「要望を満たすには、やっぱり「アレ」しかないかなぁ~」

 口にした「アレ」に弟子(スパイダマグ)は、
「!」
 以心伝心。
 提示された条件と、彼の様子から何を作ろうとしているか類推し、

「なるほどぉ「アレ」ですなぁ?!」

 頷くき、

「うん♪」

 師匠は即座に頷き返して、

「そうだよぉ♪ さっそく始めるよ♪」

 二人は腕まくりして厨房に入って行った。

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