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第七章

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 中性的な装(よそお)いからも、面立ちからも、その穏やかな声からも、男性であるか、女性であるか判別のつかない、両目をつぶった「容姿端麗な人物」が一人。
 それは「地世の現魔王プエラリア」であり、初対面となるラディッシュたち勇者組が「知り得ぬ人物」であったが、
「ぷ、プエラリア……どうしてここに……」
 サロワートの慄きの呟きにより、

《現魔王!》

 地世の七草筆頭であると知る。
 勇者組が「思い描いていたイメージ」との違いに戸惑う中、プエラリアは委縮する地世の七草サロワートにニコやかな笑顔で以て、

「どうしてじゃないよぉ♪ 七草は自主性を重んじるとは言え、キミ達ぃ~少しやり過ぎだよぉ♪」
「「…………」」

 緊張から息を呑む二人を何処までも穏やかに諭すと、閉じた瞳をラディッシュ達に向け、

「ようこそ地世に♪ ボクが地世の「今の王サマ」で、地世の七草のプエラリアだよ♪」

 愛くるしい笑顔を見せたが、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 警戒心露わなラディッシュたち勇者組。

 当然である。

 いくら友好的に話し掛けて来ようとも、相手は「地世の魔王」であり、中世で繰り広げられた悲しい出来事の数々の「元凶」なのだから。
 その存在がいきなり目の前に現れ、心中穏やかで居られる筈は無かったが、当のプエラリアは、悲劇の元凶主であるのを忘れそうになるほどの「愛くるしい笑顔」で以て、

「まいったなぁ~♪」

 笑い掛け、
「そんなに警戒されちゃ話も出来ないよぉ~♪」
 困惑すると、

「そうだ♪」

 何か思い付いた様子で、傍らに跪く「怯えた様子のフリンジ」を笑顔で見下ろし、
「ねぇキミ、帰ってイイよぉ♪」
『えぇ!?』
 見上げる慄き顔に、

「だってさぁ、ラディくん達に「色々としでかしたキミ」が居るとぉ、落ち着いて話も出来そうにないからね♪」

 反論の気配も無く、
「は……はい……」
 平伏したまま、ただただ承服する地世の七草のフリンジ。
 二人の間に垣間見えたのは、圧倒的チカラの差を背景にした、例外を許さない、絶対的上下関係であり、

《どれ程の力量差があるのか?!》

 ラディッシュ達が言葉を失い見つめる先で、視線に気付いたプエラリアは振り向いてニコリと笑いかけた上で、意気消沈のフリンジに、

「ボクが帰ったら「お仕置き」だからねぇ♪」
(((((((オシオキ!?)))))))

 天使な笑顔から下された判決に、思わず息を呑む勇者組。

 魔王直々の、どれ程に「過酷な仕打ち」が彼を待ち構えているのか。

 卑劣漢である敵ながら最悪を想像し、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 同情を禁じ得ずに居るとフリンジは、

『待ってますねぇ魔王様ぁ♪』

 かつて見た事の無い悦に入った満面の笑顔で、神経質キャラが崩壊。

(((((((えぇっ?!!!)))))))

 唖然とする勇者組を尻目に、粛々と跪いていたのが噓のような、おとぎ話に出て来る少女のような軽やかなスキップで森の闇に消えて行った。
『『『『『『『・・・・・・』』』』』』』
 絶句するラディッシュたち勇者組。
 その一方で消えて行った背に、

「やれやれ「お仕置き」に悦ぶなんて、フリンジくんは「ホントに困った変態くん」だよ♪」

 屈託ない笑顔を見せるプエラリア。
 喜劇のような一場面を見せられ、思わず気が緩みそうになる七人であったが、

「「「「「「「…………」」」」」」」

 気を抜くことは許されない。
 如何に「愛らしい容姿」を持っていても、どれ程に「屈託ない笑顔」を見せても、目の前に居るのは「地世の魔王」なのだから。
 すると、
「?!」
 目には見えない強固な防壁を構築する勇者組にプエラリアは、

「困ったなぁ~♪ そんなに警戒しなくても大丈夫なのにぃ~♪」

 愛らしく笑い掛け、
「なんたってボクは「キミと同じ」なんだからぁ♪」
 閉じたままの両目でラディッシュを見つめ、

「ぼっ、僕ぅ?!」

 ラディッシュと仲間たちが戸惑いを覚えると、それまで何故か黙していたサロワートが急に、

『プエラリアそれ以上は!』

 話を遮るように声を荒げ割って入ろうとした。
 しかし笑顔のプエラリアは気に留める風も無く、

「そうだよぉ♪」

 笑顔で首を傾げ、

「ボクはキミと同じ「ラミィに選ばれた者」なんだからぁ♪」

『『『『『『『なっ?!』』』』』』』

 警戒心の維持を忘れるほどに驚くラディッシュたち勇者組に、プエラリアは追い打ちをかけるが如く、

「言わばボクはキミの「先輩」だねぇ♪」

 天使の笑顔で畳み掛けた。
 サロワートの苦悩など存在しないが如くに。
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