上 下
509 / 706
第七章

7-44

しおりを挟む
 まかりサロワートが強く反発していたら、元より気の短い三人は考える余地などなく、スグさま強く反発し返していたであろうが、
「「「…………」」」
 思惑通り黙り込んだ三人に、

(…………)

 彼女は内心でホッとしつつも顔には出さず、
「この世界にある物は全て初代魔王が創った物よ。意図的で無い限り、地世で生まれたモノが「地世のチカラ」で汚染獣化したり、狂暴化したりはしないわ」
「「「「「「「…………」」」」」」」
 彼女の言葉には「真実味」があった。

 そう感じた理由も同様で、ラディッシュ達が地世に来てから現在まで、実際に目にして、耳にして、体験した物と相違が無かったから。
 口先だけと感じた天世との違いに、

(((((((…………)))))))

 勇者組の心中は、複雑。
 その様なタイミングで、

『何だいアンタ達はぁ若いのにしょぼ暮れてぇ! ウチの店のご飯を食べたら元気がでるわよぉ!』
((((((((!))))))))

 店の女主人が、ニコやかな笑顔で料理を運んで来た。
 注文に悩むであろう勇者組を見越したサロワートが、先んじて頼んでいた「サロワートセレクト」の品々である。

 中世の一般的な食堂より、やはり見た目は見劣りするものの、こだわりが感じられ、味も良く、何より「食したから」と言って違和感も無く、体に異変など皆無であり、
((((((((…………))))))))
 それぞれが、それぞれの想いを抱きつつ食事を進め、

「「「「「「「「ごちそうさまでした」」」」」」」」

 食材を作った人々と、調理してくれた人々に感謝。
 店から出るとサロワートは勝ち誇った笑みを浮かべ、

「アンタ達がゴネたせいでぇ随分と時間を食っちゃったわねぇ♪」
「「「…………」」」

 バツが悪そうに黙るターナップとニプルウォート、そしてカドウィードをチラ見。
 そんな三人に苦笑するラディッシュやドロプウォート達を横目に、

『さぁ、行くわよぉん♪』

 上機嫌で、再び先陣切って歩き始めた。
 しかし、
(((((((?!)))))))
 村の外にまで出てしまう、サロワート。
 遅くなったと言う割には宿泊先も探さずに。

 太陽代わりの雲が明るさを落とし始め、時間が夜へと移り始める中、

「「「「「「「…………」」」」」」」

 黙って彼女に付き従う勇者組。
 彼女の「次なる目的が読めぬ故」であったが、しばし歩くと、

『これくらい離れれば大丈夫でしょ』

 急に足を止め、
「「「「「「「?」」」」」」」
 不思議に思う七人に、

「野営するわよぉ♪」

 笑顔で振り返り、

『『『『『『『やっ、やえい?!』』』』』』』

 驚きを隠せない勇者組。
 狂暴な汚染獣は「出ない」とのお墨付きを貰っているとは言え、何が起きるか分からない世界の森で野宿など、心中穏やかで居られる筈が無かった。
 しかし彼女は「何を驚いているんだ」と言わんばかり、

「当然でしょ?」

 首を傾げ、

「だって「村に迷惑」は掛けられないもの」

 それを言われてしまっては返す言葉も無く、

「「「「「「「…………」」」」」」」
「野営できる装備は持って来てるんでしょ?」
「「「「「「「…………」」」」」」」

 なし崩し的に、何が起きるか分からない「未知なる地世の森」での一泊を余儀なくされ、

(((((((フリンジめぇえ!)))))))

 怒りを新たに抱く中、

『ほらぁ、何してるのぉ! 置いて行くわよぉ!』

 急かすサロワートは森の奥へと分け入り、
「「「「「「「………」」」」」」」
 渋々後に続くラディッシュ達であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼はもう終わりです。

豆狸
恋愛
悪夢は、終わらせなくてはいけません。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!

さとう
ファンタジー
異世界にクラス丸ごと召喚され、一人一つずつスキルを与えられたけど……俺、有馬慧(ありまけい)のスキルは『模倣』でした。おかげで、クラスのカースト上位連中が持つ『勇者』や『聖女』や『賢者』をコピーしまくったが……自分たちが活躍できないとの理由でカースト上位連中にハメられ、なんと追放されてしまう。 しかも、追放先はとっくの昔に滅んだ廃村……しかもしかも、せっかくコピーしたスキルは初期化されてしまった。 とりあえず、廃村でしばらく暮らすことを決意したのだが、俺に前に『女神の遣い』とかいう猫が現れこう言った。 『女神様、あんたに頼みたいことあるんだって』 これは……異世界召喚の真実を知った俺、有馬慧が送る廃村スローライフ。そして、魔王討伐とかやってるクラスメイトたちがいかに小さいことで騒いでいるのかを知る物語。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました

竹桜
ファンタジー
 自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。  転生後の生活は順調そのものだった。  だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。  その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。  これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

処理中です...