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第七章

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 サロワートを先頭に未開の森を進むラディッシュ達――

 ついに森を抜け、

「「「「「「「!」」」」」」」

 眼前に広がっていたのは中世と何ら変わらぬ緑豊かな農地であった。
 規則正しく等間隔に、農作物が描く美しい幾何学的模様からは、生産者の「深い愛情」と「こまめな手入れ」が遠目からでも窺え、 どこまでも広がる壮観な景色を前に、

「「「「「「「すごい……」」」」」」」

 勇者組の語彙(ごい)は、感心のあまり崩壊。
 稚拙な感想が口を衝いたが、それと同時、

(((((((!)))))))

 自分たちの中にも、知らず知らずのうちに「地世を下に見る差別意識」があったのに気が付いた。

≪まさか地世の人間に≫

 それは「今日までの地世とのかかわり」を思えば止むを得ぬ事ではあったが、潜在的な差別意識に、
「「「「「「「…………」」」」」」」
 自省のラディッシュ達。

 しかしそれは「こちらの世界」において、特殊な部類の思考と言える。

 空模様と同様の曇りを胸にサロワートの後に続く一行は歩みを進め、やがて畑に近付き、
「「「「「「「!?」」」」」」」
 とある異変に気が付いた。

「「「「「「「…………」」」」」」」

 怪訝な表情で畑を見つめながら彼女の後を歩いていると、前を行くサロワートが、

「気付いたようね」

 少し暗い声色で足を止め、
「地世では「どれほどの愛情」を注いでも、これが限界なのよ」
 育った作物たちを悲し気に見つめた。

「「「「「「「…………」」」」」」」

 押し黙るラディッシュ達。
 遠目では緑豊かに、実り豊かに育っているように見えたのだが、近づいて改めて見ると、

(((((((やせてる……)))))))

 明らかに痩せ細っていた。
 周囲に雑草は皆無で、枝葉の手入れも入念にされているのが素人目にも分かるものの、受けた印象を一言で言うなら、栄養不足。
愛情を十分過ぎるほどに掛けて育てられ、収穫間近を感じさせる色、形をした実も、総じて小ぶりであった。

(どうしてだろ……)

 ラディッシュは切れ間を見せぬ曇り空を見上げ、
(日照不足?)
 湧いた素朴な疑問から、

「ねぇサロワ」
「?」
「地世って、いつもこんな曇り空なの? 作物も元気が無いみたいだし……凶作の年?」

 すると彼女は「ふっ」と小さく笑って、

「今日は「晴れ」よぉ」
「「「「「「「ハレぇ?」」」」」」」

 思わず空を見上げる勇者組。
 当然である。
 空は明るくあるものの、どこまでも雲に覆われた「薄曇りな明るさ」であったから。

「「「「「「「…………」」」」」」」

 サロワートは物言いたげに空を見上げる七人に、

「これが「地世の晴れ」なのよ」
「えぇ?! いや、確かに明るいけど、」
「そもそも、この世界に「太陽は無い」のよ」

『『『『『『『ナイ?!』』』』』』』

 意味が理解できない勇者組は、

≪ならば何故に明るいのか?≫

 当然の疑問が湧くと、彼女も空を見上げ、見上げながらその表情は何処か悲し気に、

「雲が太陽の代わりに光を放っているのよ」
「雲がぁ?!」
「そうよ。アレが無ければ、この世界は永遠なる「闇の中」よ」

「「「「「「「!」」」」」」」

「アレは、初代魔王が作った物なの」
(初代魔王!)
「雲は地世の世界を覆っている太陽であり……天世から地世の民を守る「盾」でもあるのよ」
「守るって……天世から?!」
「そうよ。目隠しの役目も果たしているの。天世には、何をしているか見えない相手に手出しする気概は無いのよ。もっとも、天法の効果を阻害する地法が織り込まれているのは当然だけど」

「「「「「「「…………」」」」」」」

 沈黙する勇者組。
(分からない……)
 内心に混乱を覚えていた。

(中世は地世からの攻撃や汚染に、常に晒されている。それは事実であって、それを守ってくれているのが天世で……)

 しかし思い出されるは、
(…………)
 怠惰な、天世の世界。
(((((((…………)))))))
 護るべき真実は何処にあるのか。
 思い惑う七人の心中を察したサロワートは「仕方が無いわね」とでも言わんばかりの笑みを見せ、
「さっきも言った通り、アタシは何も言わないわ。何が真実か、先入観無く、アンタ達が自分の眼で見て判断すると良いわ♪」
 再び背を向け、

「さぁ行くわよぉ。ヘンタイの玩具にされたくはナイでしょぉ」

 先陣切って歩き始めた。
「「「「「「「…………」」」」」」」
 心のモヤモヤが晴れない七人を引き連れて。
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