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第七章
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声の主と思われる彼女は用意された花道を、しゃなりしゃなりと歩み進んでラディッシュ達の下までやって来て、
「ごきげんよう」
両手でスカートの裾を軽く持ち上げ、社交界で女性達が行う挨拶のカーテシーを行いながら、
「わたくしは当店店主の「カンパニュール」と申します」
恭しく頭を下げた。
気品と言う名のドレスでも纏っているかの様な店主の登場に、そのオーラに、
『あっ、いえぇ、そのぉ、こ、こちらこそ、どうもぉ!』
しどろもどろの笑顔で頭を下げ応える「コミュ障の集まり勇者組」であったが、この世界での暮らしも長くなったラディッシュは、
(ん?)
とある違和感が気に掛かり、顔を上げるなり、
「店主さんの名前って……なんか「エルブ国の人」っぽくないですね? なんて言うか「フルール国」の人?」
すると彼女はたおやかな笑みを浮かべ、
「御明察の通りですわ、勇者様。わたくしはフルール国より、文化を通して両国の懸け橋となるべく参ったのでございますわ」
「へ、へぇ~、そうなんですねぇ~♪」
笑顔で敬意を示しつつ、
(懸け橋として扱ってる本は「アレ」だけど……)
釈然としない思いを残す中、店主はそれと気付いているのかいないのか、変わらぬたおやかな笑みで以て、
「宜しければ御来店の縁に「皆様のサイン」などいただけませんでしょうか? 当店の箔となりましてですわ♪」
色紙を差し出され、
(!)
有名人扱いに戸惑いを覚えつつ、気恥ずかしくも思いつつ、嬉しくも思うラディッシュ。
ここが「マニアな人々が集う専門店」であるのも忘れ、照れ笑いを浮かべながら、
「どぉ、ドロプが居ないけどぉ僕たちだけ勝手に書いてイイのかなぁ♪」
満更でもない笑顔で振り返る彼に、
「あ、アイツも後で来るだろうからさぁ♪ そん時にでも書かせればイイのさぁ♪」
ニプルウォート達も満更でもない笑顔を見せ合い、勇者組の六人は「色紙にサイン」と言う初体験にドギマギしながら、各々たどたどしく名前を書いた。
六人の名前が書かれた色紙を胸に抱き、
「ありがとうございます、勇者様方♪」
店主が品の良い笑顔と共に感謝の会釈をして店の奥へ戻って行くと、憧れの眼差しで一部始終を見守っていた貴婦人たちも、
「チーム勇者組の次回作に期待しておりますわ♪」
「応援しておりますわ♪」
「次回作も頑張って下さいですわ♪」
賛辞を残して去って行き、
『『『『『『ん?!』』』』』』
違和感を抱くラディッシュ達勇者組。
次第に遠ざかる貴婦人女性たち背から聞こえて来たのは、
「チーム勇者組が参加された本は、従来より作画が一段も二段も上がってますわよねぇ♪」
「それに「話の筋」が深くなったと言いますか♪」
「神回(かみかい)も増えたと言いますかぁ♪」
「ソレ分かりますわぁ♪」
笑顔で頷き合う横顔に、
((((((へ?!))))))
意味が分からず小首を傾げていると、
『どうか致しまして、ですわの?』
背後から説教タイムを終えたと思われるドロプウォートが登場。
「あ、ドロプ! じ、実はね、」
ラディッシュは仲間たちと事の次第を伝えたが、彼女は気にし過ぎと言わんばかり、
「言葉のあやの類(たぐい)、ではありませんですわのぉ?」
軽やかに笑って受け流し、
「そ、そうなの、かなぁ……」
「「「「「…………」」」」」
納得いかない様子の仲間たちを横目に、
「あっ、コレですわね。私達が手伝いました本は♪」
棚から一冊抜き出して開いて見るなり、
『んなぁ!』
素っ頓狂な驚き声を上げた。
ワナワナと打ち震えながら中を見つめる彼女の姿に、
「「「「「「?」」」」」」
ラディッシュ達も覗いて見て、覗いて見るなり、
『『『『『『うぇえぇ?!』』』』』』
驚きの声を上げた。
そこには女王フルールのペンネームと並び「スペシャルサンクス」と称して、ラディッシュ達の名前が「チーム勇者組」として全員分書かれていたのであった。
そして彼ら、彼女たちは気付く。
客たちが評していたのは「勇者として」ではなく、「アシスタントとして」であった事に。
「僕たちの「命懸けの戦い」って……」
「「「「「…………」」」」」
ラディッシュ達が些か、腑に落ちない思いを抱いていると、過去において「不本意な評価」を、幾度となく受けた経験を持つニプルウォートが「シッシッシ」と笑い出し、
「まぁ世間てのはぁそう言うモンさぁ♪ 戦いが「いかに過酷か」なんて、戦っている場面を見てなきゃ理解できないだろうし、ようは「呑気は平和な証拠」って事さ♪」
気にするだけ無駄とでも言わんばかりに笑い飛ばしたが、世間とのズレを改めて体感したラディッシュ達は、
「「「「「「…………」」」」」」
釈然としない思いを残した。
「ごきげんよう」
両手でスカートの裾を軽く持ち上げ、社交界で女性達が行う挨拶のカーテシーを行いながら、
「わたくしは当店店主の「カンパニュール」と申します」
恭しく頭を下げた。
気品と言う名のドレスでも纏っているかの様な店主の登場に、そのオーラに、
『あっ、いえぇ、そのぉ、こ、こちらこそ、どうもぉ!』
しどろもどろの笑顔で頭を下げ応える「コミュ障の集まり勇者組」であったが、この世界での暮らしも長くなったラディッシュは、
(ん?)
とある違和感が気に掛かり、顔を上げるなり、
「店主さんの名前って……なんか「エルブ国の人」っぽくないですね? なんて言うか「フルール国」の人?」
すると彼女はたおやかな笑みを浮かべ、
「御明察の通りですわ、勇者様。わたくしはフルール国より、文化を通して両国の懸け橋となるべく参ったのでございますわ」
「へ、へぇ~、そうなんですねぇ~♪」
笑顔で敬意を示しつつ、
(懸け橋として扱ってる本は「アレ」だけど……)
釈然としない思いを残す中、店主はそれと気付いているのかいないのか、変わらぬたおやかな笑みで以て、
「宜しければ御来店の縁に「皆様のサイン」などいただけませんでしょうか? 当店の箔となりましてですわ♪」
色紙を差し出され、
(!)
有名人扱いに戸惑いを覚えつつ、気恥ずかしくも思いつつ、嬉しくも思うラディッシュ。
ここが「マニアな人々が集う専門店」であるのも忘れ、照れ笑いを浮かべながら、
「どぉ、ドロプが居ないけどぉ僕たちだけ勝手に書いてイイのかなぁ♪」
満更でもない笑顔で振り返る彼に、
「あ、アイツも後で来るだろうからさぁ♪ そん時にでも書かせればイイのさぁ♪」
ニプルウォート達も満更でもない笑顔を見せ合い、勇者組の六人は「色紙にサイン」と言う初体験にドギマギしながら、各々たどたどしく名前を書いた。
六人の名前が書かれた色紙を胸に抱き、
「ありがとうございます、勇者様方♪」
店主が品の良い笑顔と共に感謝の会釈をして店の奥へ戻って行くと、憧れの眼差しで一部始終を見守っていた貴婦人たちも、
「チーム勇者組の次回作に期待しておりますわ♪」
「応援しておりますわ♪」
「次回作も頑張って下さいですわ♪」
賛辞を残して去って行き、
『『『『『『ん?!』』』』』』
違和感を抱くラディッシュ達勇者組。
次第に遠ざかる貴婦人女性たち背から聞こえて来たのは、
「チーム勇者組が参加された本は、従来より作画が一段も二段も上がってますわよねぇ♪」
「それに「話の筋」が深くなったと言いますか♪」
「神回(かみかい)も増えたと言いますかぁ♪」
「ソレ分かりますわぁ♪」
笑顔で頷き合う横顔に、
((((((へ?!))))))
意味が分からず小首を傾げていると、
『どうか致しまして、ですわの?』
背後から説教タイムを終えたと思われるドロプウォートが登場。
「あ、ドロプ! じ、実はね、」
ラディッシュは仲間たちと事の次第を伝えたが、彼女は気にし過ぎと言わんばかり、
「言葉のあやの類(たぐい)、ではありませんですわのぉ?」
軽やかに笑って受け流し、
「そ、そうなの、かなぁ……」
「「「「「…………」」」」」
納得いかない様子の仲間たちを横目に、
「あっ、コレですわね。私達が手伝いました本は♪」
棚から一冊抜き出して開いて見るなり、
『んなぁ!』
素っ頓狂な驚き声を上げた。
ワナワナと打ち震えながら中を見つめる彼女の姿に、
「「「「「「?」」」」」」
ラディッシュ達も覗いて見て、覗いて見るなり、
『『『『『『うぇえぇ?!』』』』』』
驚きの声を上げた。
そこには女王フルールのペンネームと並び「スペシャルサンクス」と称して、ラディッシュ達の名前が「チーム勇者組」として全員分書かれていたのであった。
そして彼ら、彼女たちは気付く。
客たちが評していたのは「勇者として」ではなく、「アシスタントとして」であった事に。
「僕たちの「命懸けの戦い」って……」
「「「「「…………」」」」」
ラディッシュ達が些か、腑に落ちない思いを抱いていると、過去において「不本意な評価」を、幾度となく受けた経験を持つニプルウォートが「シッシッシ」と笑い出し、
「まぁ世間てのはぁそう言うモンさぁ♪ 戦いが「いかに過酷か」なんて、戦っている場面を見てなきゃ理解できないだろうし、ようは「呑気は平和な証拠」って事さ♪」
気にするだけ無駄とでも言わんばかりに笑い飛ばしたが、世間とのズレを改めて体感したラディッシュ達は、
「「「「「「…………」」」」」」
釈然としない思いを残した。
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