ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

6-68

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 街道を馬車で進むラディッシュ達――

 幾つもの村を抜け、町を抜け、やがて王都カルブレスに辿り着いたイリスの、カルニヴァ国に対する印象は、

≪なぁ~んの「色気」も「華も無い国」さぁねぇ~≫

 目に付くのは無骨な男ばかりな上に、野暮ったい造りの建物ばかりで、いささか華やかさに欠ける国に対するディスリであった。
 地元民から反発を招き、炎上しそうな悪言ではあったが、様々な国をラディッシュ達と共に見て歩き、見聞(けんぶん)を広めたカドウィードは、

「仕方なきぃにありんしょ♪」

 妖艶な笑みの中に苦笑を交え、
「カルニヴァ国は未だぁ、男尊女卑の色濃い国にありんすぅ。オナゴが不用意に外を出歩いてぇ良い思いはしぃせぇんのぇ」
 するとイリスは、

『ソレっ! ソレさねぇ!』
「?」

 不機嫌に、眉間に深いシワを寄せ、
「カルニヴァは機能性ばっかの無骨な街並みでぇ「男尊女卑」ぃ! フルールは優美っちゃぁ~優美な街並みだがぁ機能面を犠牲にしてぇ「女尊男卑」ぃ! なんでぇこうも両極端なのさぁねぇ! もっとこぅ「間(あいだ)でイイ」だろぅさねぇ! 間(あいだ)でぇ!」
 理解に苦しむと言わんばかりの物言いに、

((((((たしかに……))))))

 今さらの様に思うラディッシュ達。
 そんな仲間たちを、カドウィードはふっと妖艶に小さく笑ってから、

「似ている側面を持ちながらもぉその根はぁ、源はぁ、全く別にありんす」
「「「「「「「?」」」」」」」
「話は、大昔の「戦乱の世」に遡るでありんすぇ」

((((((何か始まった……))))))

「時はぁ故国の名が「カルニヴァ」になるより遥か前ぇ、小国が乱立しぃ、武力を以て天下を求む暗黒時代。国同士の争いは絶えずぅ、自国の女子供が拐(かどわ)かされるなど日常茶飯事にぃありんしたぁ」
「「「「「「「…………」」」」」」」
「始まりはぁ「家族」を、「思い人」をその様な外敵から護る、心優しき想いからだったのでぇありぃんすぅ……それがいつしか「女子を下に見る風潮」へと変質しぃ」

 彼女は呆れの交じった妖艶な笑みを浮かべると、
「げに「嘆かわしき事」にぃありんす……」
 ため息でも吐くようにこぼした後、

「一方のぉ女尊男卑のフルールはぁ「偶然が重なった結果」とぉ言えんしょう」
「「「「「「「ぐぅぜぇん?」」」」」」」

 仲間たちの驚きに、カドウィードは静かに頷き、
「フルールも、国の名が「フルール」になるより遥か昔ぃ、やはり「小国同士の諍い」が絶えず、戦争の繰り返しに民は疲弊していたにぃありんすぅ」
「「「「「「「…………」」」」」」」

「その様な折ぃ、諍いの中心国でありぃ現フルール国の素(もと)となりんした国の王家にぃ男児が生まれずぅ、悩んだ一族は戦時下における求心力低下を懸念してぇ「血の結束」を優先。皇女を王位に就けたのでぇありんす」
「「「「「「「…………」」」」」」」」

「幸か不幸か世情は安寧を取り戻しつつありんしたがぁ、周辺諸国も含め様々な問題に直面しておりぃんしたぁ。市民革命、財政難、飢饉に疫病などなど……どの国もぉ他国にちょっかいを出している場合でなしぃ」
「「「「「「「…………」」」」」」」」
「一国ではぁ解決が難しい「生き死に」に直面しんしたぁ小国群はぁ生きる為に結束。共和国を興しぃ、国名をフルールとしぃ、諍いを二度と起こさぬよぅ「平和の願い」を込めぇ、世情に安寧をもたらしたぁ女帝制を敷くようになったのでぇありんす……それがカルニヴァと同様、いつしか「男子を下に見る風潮」へと変わり……」

 妖艶なる呆れ笑いと共に、

「人と言うモノはぁ、愚かしきにぃありぃんす」
「「「「「「「…………」」」」」」」」

 黙って話に聞き入っていると、

『いやぁ~カディ、アタシぁ感心したさねぇ。そんな歴史を、よく知ってたさぁねぇ~』

 イリスが他意を感じさせない感嘆の声を上げ、

「ただの「淫女(いんじょ)」じゃなかったのさねぇ」
『いっ、いんじょ?!』

 珍しくギョッとするカドウィード。
 よほど不本意な呼称であったのか、妖艶な笑みに引きつりを交え、
「っこぉ、言葉を間違えているにぃありんすぇ、イリィ。か、カディはぁ「遊女(ゆうじょ)」でぇありんしてぇ「花魁(おいらん)」にありぃんすぅ」
 苦言を呈した上で、

「それにぃこの程度の話などぉ、政権に近しい「中央に居た者」ならばぁ一般常識にぃありぃんすぅ」
((!))

 内心ギクリとするドロプウォートとニプルウォート。
 その様な場所に居た、二人なだけに。

 表面上の顔は「その通り」と言わんばかりに「ははは」と笑って居たが、その裏で冷や汗をひた隠し、
((しっ、知らなかったぁ~))
 仲間たちに、特に「恋敵のイリス」に情弱を悟られないよう身を縮め、無知を恥じていた。

 故国の政情に嫌気がさしていた当時のドロプウォートや、自分の居場所を戦場にしか求めていなかった当時のニプルウォートを想えば、二人が国史に興味を持てず疎くあるのも、人情として「無理からぬ事」とも言えなくも無いが。

 そんな仲間たちを横目に、御者台で手綱を引くラディッシュは一人、別の事を考えていた。
(王様の采配一つで世界って、変わっちゃうんだなぁ……)
 責任の「重さ」と言うモノを今更ながら改めて痛感し、
(覚悟を持てない僕には、やっぱり「王様」なんて務まらないよ……みんなに相談しないで勝手に決めちゃうのは申し訳ないけど、こっそり正式に「お断り」をしよう)
 密かに思い至っていた矢先、

『カァーカッカッ! 王になる覚悟は出来たか勇者殿よォ!!!』

 満面の高笑いで、仲間たちにさえ隠していた「秘め事」を暴露したのは現王カルニヴァ。
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