ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

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 入村して早々の騒ぎの後――

 イリスからの、
≪情報を集めるなら酒場だろう≫
 ベタ過ぎる提案に、

「「「「「「「…………」」」」」」」

 躊躇を覚えるラディッシュ達ではあったが、村内を闇雲に歩き回っても非効率な上、新たなトラブルを誘発するとの考えに思い至り、一先ず彼女の提案に乗っかる形で、目に付いた酒場に足を踏み入れる事にした。
 異色すぎる一団の入店に、
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
 異物を見る眼を向ける、イカツイ客たち。

 しかし小さい村ゆえに、先の騒ぎが既に広まっているらしく、ちょっかいを出す「強者(愚者)」は皆無であった。
 一様に迷惑顔ではありながらも。

 年配の店主も不要のトラブルを警戒してか「露骨な迷惑顔」でこそあったが、接客業と言う事もあり、
「何か飲むのか?」
 仏頂面した、ぶっきらぼう。
 来店客に対する、飲食店経営としてあるまじき塩対応に、
(飲むのか、って……)
 思わず苦笑するラディッシュ。

 指摘したい気持ちはあったが、その様な勇気はハナから無く、また「歳下からの指摘」にヘソを曲げられ情報が聞き出せなくなる可能性もあり、加えてラディッシュ達はこの世界においても未成年。
 当然、飲酒は禁止されていて、

「ご、ゴメンなさい。僕たち未成年なんです。だからお酒は、」
『だったらとっとと帰りな』

 店主は素気無く追っ払う仕草を見せ、
「ここは「大人が飲む店」だ」
「で、でも僕たち情報が、」
 少ない勇気を振り絞って食い下がろうとすると、チィックウィードがラディッシュのズボンの端を引っ張り、

「パパぁ」
「?」
「オナカすいたなぉ……」

 その弱り切った悲しげな顔に、
「!」
 ハッとするラディッシュ。
 何ごとか気付きを見せた彼はすかさず店主に、

「それなら何か食べ物を!」

 注文して飲酒代わりの情報料にしようと思い立ったが、

『ここは「大人が飲む店」と言った』

 店主は聞く耳持たずに切って捨て、
「…………」
 ラディッシュは下を向いた。

(やっぱり僕って、無力だ……)

 落ち込みを見せると、店主の対応に苛立ちを覚えていた仲間たちのうち、我慢と言う物を知らぬイリスが皮肉な笑みを浮かべながら、
「よしとけぇよしとくさぁねぇ、ラディ」
「?」
「こんな場末の酒場の飯なんぞ食ってぇぼったくられた挙句、チィが腹でも下したらどうするさねぇ♪」
「!」
 店主が眉間に不快な深いシワを寄せ、

「「「「「「!?」」」」」」

 焦りを覚える仲間たち。
 情報が聞き出せなくなる可能性にラディッシュは慌てに慌て、
「ちょ、イリィ! しっ、失礼だよぉ!」
 しかしイリスは常連客たちがせせら笑う中、何食わぬ顔で、

「アタシの言った事が「気に入らない」ってんならぁ、ウチのラディと料理対決をしてみぃなやぁね、なぁ店主ぅ?」
「何だと?」
「えぇ?!」

 苛立ちから怒りに顔色を変える店主と、寝耳に水でギョッとするラディッシュ。
 そんな二人を尻目に、
「勝ったらアンタの持ってる情報を話してもらさぁねぇ」
 彼女は騒ぎを更に煽り立てるように、

「まぁっもっともぉ、こんな「場末の酒場の安酒」で満足してる程度の客を相手にしてるアンタじゃ、「ウチのラディ」に勝てる筈がナイさぁねぇ~♪」

 これには他人事と嘲笑いを決め込んでいた常連客たちもカチンと来て、

「言うじゃねぇかネエチャンよ!」
「誰が「この程度」だ!」
「オヤジ! ガツンと見せたれぇ!」
「若造どもの鼻っ柱を叩き折ったれぇ!」

 騒ぎを聞きつけ集まった野次馬連中と共に、買い言葉の大合唱。
 対決の空気は否応無し高まり、
(キッシッシッ♪)
 腹の中で、してやったりのイリス。
(どうせぇ金を払ったって本当の情報を言うか分からない連中さねぇ。だったら「商売人としての誇り」とやらを叩き折って、ベコベコに弱らせた上で、知ってる真実ってヤツを吐かせた方が確実なのさぁねぇ♪)
 底意地の悪い企てを以て、

『さぁあてぇ、どうするよ店主さぁんよぉ? 逃げるかぁい?? どうするさねぇ???』

 答を迫る彼女に、
(((((絶対に楽しんでる……)))))
 見透かした苦笑を浮かべるニプルウォート達。

 すると店主は、飲食店店主としてのプライドからか、客の熱に当てられてか、引くに引けない所に追い詰められた故か、
「仕方ねぇ」
 重く腰を上げ、

「その勝負、受けて立とうじゃないか。ただし、」
「あん?」
「判定は公平を期す為、客を含めた全員の判定にするが、それでも良いのか?」

 その数、数十名。
 しかし「逃げ」を嫌うイリスは二言返事で、

『あぁ構いやしないさねぇ♪』

 斜に構えた笑みに、
(((((!!!)))))
 ドロプウォート達が慌てて取り囲んで、語気強めの責めるような小声で、

(ちょ、イリィ! 貴方は状況が分かってますの!)
(アンタが煽ったせいで今は完全敵地さ!)
(数でぇ圧倒的不利にありんすぇ!)
(客どもが意趣返しにわざと「マズイ」っつったら、どぅスンだぁ!)
(なのでぇす! なのでぇす!)

 しかし彼女は何処から来る自信なのか、

『ハァン。それでも「ラディの飯」が負ける筈がナイのさぁねぇ♪』
(((((!?)))))

 仲間たちの不安を一蹴し、
「それに負けたところで情報が得られないだけで、コッチの腹は別に、」
 痛みはしないと言おうとすると、店主がすかさず、

「因みにそっちが負けた場合、かかった費用は利子付きで、全額払ってもらうからな」
((((((ナンジュウニンブン×2ぃ!?))))))

 ギョッとした眼差しをイリスに一斉に向けると、彼女にとっても想定外の意趣返しであったのか内心ギクリとしたが、それでも「ラディッシュの飯の勝利」を信じ、それを心のよりどころに表面上は平気を装い、
「大丈夫、大丈夫さぁねぇ♪ ウチのラディが「唯一取り柄の料理」で負ける筈がナイさぁねぇ~♪」
 さりげにディスる余裕まで見せたが、

『元宮廷料理の意地を見せてやれぇ、オヤジィ!』
((((((キュウテイリョウリニン?!!!))))))

 客の中から店主に飛んだ声援に、背筋が凍る勇者一行と、
(そんな話は聞いないさねぇーーー!)
 心の中で頭を抱えるイリス。
 挑発して対決に持ち込んだ自分に今更ながら後悔を覚え。

 破産の二文字が頭をよぎる「懐事情が寒い勇者一行」は、必死の願いを込め、

『『『『『『『ガンバってぇ!!!』』』』』』』

 チカラ強くラディッシュに声援を贈った一方、贈られた当人は、不幸中の幸いと言うべきか「店主が元宮廷料理」であった件(くだり)は耳に届いていなかった様子で振り返ったが、

『んがっ、ガぁンバリまふゅぅ』

 過度の緊張で引きつった顔した、噛み気味の決意表明に、
(((((((…………)))))))
 不安しかない、仲間たちであった。

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