ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

6-38

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 南門での騒動の後――

 イリスの「身元引受人」となったラディッシュ達。
 彼女の相手をするのに疲れた兵士たちと、彼女から感じる「ラミウムの存在」を拭いきれないラディッシュ達との利害が一致した落し所であったが、ラディッシュが未だに忘れられない女性とよく似た容姿を持つ彼女に、

「「「「…………」」」」

 女性陣が不安感のような物を抱く中、ターナップがおもむろ、
「立ち話もなんスからぁ、オレんとこぉ行きやしょうかぁ?」
「そうだね」
 ラディッシュは頷き、
「イリィもそれで良いかな?」
「あぁ、好きにしとくれぇ。今のアタシぁ、アンタ達に逆らったらぁ即で牢獄行きだからさねぇ~」
 この気怠い皮肉交じりの同意には、
「「「「…………」」」」
 少々ムッとする女性陣。
 
 すると空気の悪さを感じたラディッシュは、お茶を濁すように「ハハハ」と笑って、
「じゃぁ、みんなでタープさんの御言葉に甘えようかなぁ♪」
 仲間たちのトゲトゲしさを遠回しに宥めすかしながら、教会へ向かった。

 建設ラッシュに沸く村内を歩いていると、イリスが興味深げに周囲を見回しながら、
「はへぇ~エルブの南の端の村だってぇのに、この村は活気があるさぁねぇ~」
 こぼした感嘆にニプルウォートが「ふっふっふっ」と不敵笑い。
「?」
 なぜ笑ったのか訝しむ彼女を前に、
「ソイツはぁ、ラディのお陰なのさァ♪」
「…………」
 自分の成果の様な笑顔を見せると、彼女は疎まし気に、
「アンタは何を自慢げに語ってんのさぁねぇ、キモチ悪いねぇ」
「んあっ?!」
「別に、アンタが何かした訳じゃないさぁねぇ」

『んだとぉ!』
『おぅ? ヤンのかぁい?!』

 取っ組み合いでも始めそうな空気に、
「はぁ~」
((!))
 インディカがヤレヤレ笑い。

「オンナが往来のど真ん中で「ガンつけ合い」なんてぇ、世も末っスねぇ~ターナップの兄貴ぃ~」
「オレに同意を求めんじゃねぇよ!」

 飛び火を嫌ったターナップが苦言を返すが先か、

『『もっぺん言ってみろやぁイガ頭ぁ!!!』』

 二人はイキった顔してブッチ切れ、

『栗みてぇな「残り毛」むしってぇ!』
『丸坊主にしてヤンよぉインディカぁあっぁぁあ!』

 息ピッタリ。
「!」
 すると口を滑らせたインディカは、鬼の形相で見下ろす女子二人に、
「す、すっ」
 両手で「毬栗のような残り毛」を隠して徐々に後退り、

『す、すっ、スゥンませぇんしたぁ姉さん方ぁあ! それだけは勘弁をぉぉおぉぉおぉ!』

 脱兎の如く逃げ去った。
 憤怒の二人をその場に残し。
「「フぬゥーーーーーーッ!」」
 未だ怒りが収まらない様子に、ドロプウォートは呆れ、
「チィちゃんの前で、いつまでも大人げ無いですわよぉ」
 平静に釘を刺すと、

『『あぁ?!』』

 矛先は当然の如く彼女の下へ。
 しかし平然と、

『何ですのぉ? 今度は「私に御逆ギレ」ですの?!』

 売りを買おうとするドロプウォート。
 留まる事を知らない一触即発の空気に、パストリス、ターナップ、カドウィード、チィックウィードまでもがため息を吐くと、開戦開始の合図とばかり口を開いた女子三人の口の中に、

『えぃ!』

 ラディッシュが何かを放り込んだ。

『『『!?』』』

 一瞬、ギョッとした顔を見せる女子三人であったが、鼻腔に溢れる甘い香りに、
(((んん???)))
 誘われる様に咀嚼してみるなり、

『『『のほぉ~~~♪』』』

 とろけた笑顔で両頬を手で押さえ、クッキーの様な焼き菓子を手にしたラディッシュは、ねだるチィックウィードにも食べさせてあげながら、
「お腹が空いてるから、イライラするんだよぉ♪」
 ニコリと笑い、

『『『そっ、それはぁ!』』』

 笑われた女子三人は即座に反論しようとが、

 ぐぅうぅうううぅぅうううぅぅ~~~~~~ぅっ!
 きゅうぅうううぅぅううぅうぅ~~~~~~ぅっ!
 ぐぅきゅうううぅぅううぅうぅ~~~~~~ぅっ!

 ラディッシュ手製の焼き菓子で刺激された胃袋たちは否応無し、三つ巴の音色を奏で、
『『『//////』』』
 乙女三人は怒っていたのも忘れる程の「羞恥の赤い顔」して黙して腹を押さえ、教会に着いた後のイリスは、

≪ぅウマぁああぁぁぁぁ!!!≫

 驚きと感動の雄叫びを上げた。
 ラディッシュに振る舞われた夕食を食べての「彼女の第一声」であったが、この一口目で彼女は全てを悟った。
 噂の料理人が、彼であるのを。
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