ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

6-30

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 メモを片手に工房を目指すラディッシュ達――

 すっかり様変わりした村内で「ターナップの古い記憶頼り」では心もとなく、目的地までの略図を商人に描いてもらい、それを頼りに辿り着いた一行は、

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 絶句。
 特に「以前のボロ工房」を知っているターナップ、ラディッシュ、ドロプウォート、パストリスの四人は、目の当たりにした何かを唖然と見上げた。
 目の前に建つのは隙間だらけの「掘っ建て小屋」などではなく、御貴族様の御屋敷と見紛うばかりの、三階建てはあろうかと言う大きな工房で、勇者一行は同人誌で得た知識から、

(((((((ギルドハウス……)))))))

 驚嘆をこぼしていると、中央扉が観音開きに開き、

『勇者様ぁあぁあ♪』

 笑顔満面で現れたのは、懐かしき職人の顔。
 依然と何ら変わらぬ、親方であった。
 その背後には、相も変わらずアイドル張りの容姿にスマイルを浮かべた、美少年弟子の姿も。
 初対面となるサロワート、ニプルウォートとカドウィードは彼の整った容姿に、

「まっ、まぁまぁのルックスじゃなぁい♪」
「なかなかのイケメンじゃないさぁ♪」
「都会でありんしたらぁ「取り巻き女」が大勢いそうな容姿にぃありんすなぁ♪」

 感嘆すると、彼の腹黒さを知る苦笑のドロプウォートはすかさず、

「容姿に騙されて鼻の下を伸ばしていると、」
「「「いると?」」」
「生き地獄を見る羽目になりますわよぉ」

『『『生きぃ!?』』』

 ギョッとする女子三人。
 本人を前にした「中々の悪言」に、普通であれば当人が激昂、反発、動揺、などの「強い否定の反応」を見せそうなモノであるが、 アイドル弟子は暖簾に腕押しの如く、その素敵過ぎるスマイルに微塵の揺らぎも見せず、

「酷いなぁ誓約者さまはぁ~♪」
(((!)))

 直感的に、

(((コイツ、ヤバイ……)))

 危険人物であるのを理解した。
 そんな中、彼の視線をほんの一瞬受けたサロワート。
(ッ!)
 急に表情を硬くし、弟子におもむろ歩み寄ると、

『アンタ、ちょっと顔を貸しなさい』

 その声は、怒気を少しはらんでいる様にも聞こえたが、アイドル弟子は変わらぬスマイルで、

「困ったなぁ~初対面でいきなり誘われてもぉ」
『イイから来なさぁい!』

 余談許さずサロワートは彼の二の腕をガシリと掴むと、仲間たちから少し離れた所へと連れて行き、彼女の態度の急変に不安を隠せないラディッシュ達ではあったが、視界から消えた訳でなく、見える所で平静に、会話を始めた様子に、
(だ、大丈夫……だよね?)
 仲間たちに眼で意見を伺うと、仲間たちも「一先ずは大丈夫」と判断したらしく、頷きを返し、同意を得られたラディッシュは改めて、

「お久し振りです、親方さん。それと……挨拶が遅れてごめんなさい」

 頭を下げ、和気あいあいとした会話が始まった時、ラディッシュ達から離れたサロワートはスマイルを崩さぬアイドル弟子に、遠目には平静に見える物言いで、

『アンタ、アタシのステータスを盗み見たわねぇ』
「すて?」
「誤魔化すんじゃないわよ。アタシのチ、」

 地世のチカラと言いかけ、言葉を飲み込んでから、

「チカラで隠してあるステータスを、盗み見たのは分かってるのよ」
「困ったなぁ~何の話な、」
「アタシの「隠匿のチカラ」を上回ってねぇ」
「…………」

 するとアイドル弟子は流石に誤魔化しきれないと判断したのか、アイドルスマイルはそのままに、

「地世の七草♪」
『ッ!』

 サロワートは射貫く様な眼差しで、
「アンタは、何者なの。アタシは地世の魔王軍幹部よ。そのステータスを盗み見るなんて、並みの鑑定士では不可能な事よ」
 するとアイドル弟子はスマイルのまま、

「僕、この村が結構気に入ってるですよねぇ~♪」
「はぁ? アンタは何を言って、」
「親方は路頭に迷っていた幼い僕を拾って、実の孫のように育ててくれてぇ」
「…………」
「僕は「先祖返り」なんですよぉ♪」
「?!」
「それも「英雄の生まれ変わり」であるドロプウォート様や、その血筋を秘密裏に脈々と受け継いで来た、実力を持った「百人の勇者の末裔」の若司祭様とは違う、ぽっと出の、大した実力も無い、百人の勇者の先祖返り」

「…………」

「だから生みの親や、親類縁者に特殊能力を持った人は居なくて、僕は中途半端に「このチカラだけ」を持って生まれて……散々利用されて、煙たがられて、気持ち悪がられて……そして捨てられました♪」
「アンタ……」
「だから僕は誰にも言いませんよ♪」
「え?」
「騒ぎになって、この村から追い出される羽目には遭いたくないから♪」

 作られた笑顔の下に隠された悲しみに、サロワートは「はぁ」と短いため息を吐くと、

「分かったわよぉ。アタシも、ラディ達にも言わないでおくわ。騒ぎになるのはアタシも本意じゃないし」
 小さな笑みを見せ、
「でも誰かにバラしたら承知しないわよぉ♪」
 ラディッシュ達の下に戻ろうとする背に、アイドル弟子は変わらぬスマイルのまま、

「どうして?」
「何がよ?」
「勇者様たちは貴方の正体を知っているのに、どうして僕にそこまで気を、」
「遣うのかって?」

 サロワートはニコリと笑って振り返り、

「そんなの決まってるじゃない」
「?」
「アタシも、この村が気に入ってるからよ♪」

 キラキラとした笑顔を見せた。
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