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第六章

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一連の騒動に解決を見て後――

 村へ戻るラディッシュ達。
 すると、関所の上階に設けられた物見櫓から監視をしていた兵士の一人が「一行の姿」を視認するなり、

『勇者様方がぁ戻られたぞぉーーーーーー!』

 歓喜の交じった叫びを聞いた村人たちも、
((((((((((!))))))))))
 南門を目指して一斉に走り出し、到着したラディッシュ達が無傷であると知ると大歓声を上げ、その一団の中から、

『ラディの兄貴ぃ、姉さんがたぁ、お疲れっスぅ♪』
『怪我は無いか、なんてぇ訊くなぁ訊くだけ野暮さねぇ♪』
『お疲れ様にぃありんす、主(あるじ)さまぁ、皆さまぁ♪』

 笑顔で出て来たのはターナップ、ニプルウォート、カドウィード、村に残って、村を守ってくれていた仲間たち。
 そんな心安らぐ出迎えに、
「ただいまぁ、みんな♪」
 ラディッシュ達が笑顔を返す「感動の場面」で、

『キャハハハハハ! アンタ、その頭はどうしちゃった訳えぇ!?』

 空気を読まず、突然大笑いを上げたのはサロワート。
((((((((((誰ぇ?!))))))))))
 村人たちの「当然の驚き」をよそに、大笑いの彼女が指差していたのは、

『人の「ケジメ」をぉ指差して笑ってんじゃねぇ!』

 ヤンキー張りのイキ顔でキレる「五分刈り頭」のインディカ。
 村の幼子三人を危険に晒した彼の、彼なりの反省、彼なりの責任の取り方を体現した物であったのだが、その「彼なりの漢のケジメ」を悪し様にからかわれては黙って居られず、

『だぁいたぁいテメェが何でぇココに居やがるぅ!』

 鼻息荒く、追い払う様な仕草を見せたが、

≪またかぁ~≫

 ターナップ、ニプルウォート、カドウィードは一瞬にして理解していた。
 ラディッシュの「お人好しが発動した為」であろう事を。

 その一方で、事情が呑み込めないのは村人たち。
 目の前でインディカと、見ず知らずの少女が繰り広げる漫才騒ぎに、何が起きているのか分からずザワついていると、

『オメェみてぇのは御呼びじゃネェんだよぉ! この村に入ぇて来んじゃねぇ!』

 インディカが露骨な悪態を吐いた途端、

『酷いわぁ!』

 サロワートが急に両手で顔を覆い隠し、健気なすすり泣きを始め、
「はぁ?!」
 態度の急変に戸惑う彼を前に、
「ひどい……汚染獣の群れに襲われていたのを……命からがら勇者様がた救われたと言うのにぃ……」
 むせび泣く、愛らしい少女の姿。
 そんな姿を見せられては、

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 事情を知らない村人たちの冷たい視線は、おのずとインディカに。
 裏事情を知るラディッシュ達が苦笑する中、

『てっ、テメェ汚ねぇぞ!』

 居た堪れなくなった彼は慌てて彼女の下に駆け寄り、

『てっ、テメェは何をフカシてぇやがるぅ! だいたいテメェは!』

 地世の七草の一人であるのを暴露しようとした瞬間、泣き続ける素振りを見せていた彼女が、彼にしか聞こえない小声で、
(アタシの正体をバラしたら今スグ「秒で殺す」わよぉ!)
「ぐなっ?!」
 慄くインディカ。
 村での評価を「三文芝居で下げた女」からの脅迫に、普通であればキレてもおかしくない場面であったが、女性免疫が極度に少ない 彼の思考は、普通と少し違っていた。

 密かに脅迫された彼は瞬間的に思った。
(コレってぁ、もしか噂に聞く「二人だけの秘密」ってぇヤツなんじゃねぇのかぁ!?)
 愛らしい容姿の少女との「秘密の共有」に、思わず胸をキュンと高鳴らせたが、

(いや待てぇ待てぇ、オレっちぃ! 冷静になりやがれぇ!)

 彼なりの自制心を働かせ、
(コイツはぁ見た目こそマビィが、実際には「なん百歳」食ってるか分かんねぇ「大ババァ」なんだぞぉ! それを喜んでぇイイのかぁオレっちぁよぉ?!)
 躊躇いと惑いを覚えたが、見透かしたサロワートは潤んだ瞳ですかさず彼を見つめ、

『お・ね・が・い♪』

 すると、

『大船に乗ったつもりでぇ任せろやぁあぁぁ!!!』

 インディカは満面の笑顔で踏ん反り返った。
 彼は、やはりチョロかった。
 勇者組の面々が苦笑を浮かべる中、未だ訳が分からず戸惑う村人たちの背中を押したのは、

『『『パンツのおねぇちゃんだぁーーーーーー♪』』』

 オキザリスとトロペオラム、そしてフリージア、村の子供たちの笑顔。

『忘れなさいって、言ったでしょーーー!』

 赤面顔で憤慨するサロワートに子供たちが駆け寄る姿に、
((((((((((パンツのお姉さぁん?!))))))))))
 村人たちは首を傾げつつも警戒心は自然と緩み、村人の誰かが、

『と、とにかく勇者様たちが無事に戻られた祝いをしねぇとなぁ!』

 上げた声を皮切りに、村はお祭り状態となった。
 ラディッシュ達への祝宴は「愛らしい容姿の少女との邂逅」に、いつの間にか「サロワートの歓迎」に置き換わり、夜は大騒ぎと共に更けて行った。
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