ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

6-26

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 トンネルから出る先頭のパストリス――

 後続の仲間たちを待ち、最後尾の「少し赤い顔したラディッシュ」が出て来ると、チィックウィードとサロワートに、

「あっちに家が、あるのでぇす♪」

 背丈ほどの茂みがある方を指差して見せ、
「…………」
 素朴な疑問を抱くサロワート。

「アンタの家だけ、何で村からこんなに離れてるわけ? 同じ種族(妖人)で集まって、同じ事をしてたんじゃないの?」

 盗賊を生業にしていた裏事情を知っている素振りに、
「それは……」
 パストリスは返答に困った。
 両親が村の人々と共に悪事を働いていたのは、一時(いっとき)とは言え事実であるが、止めさせようと試みて命を落としたのもまた、事実。
 亡き両親の名誉の為にも、無用な「思い込み」や「誤解」を生まずに納得してもらう「適切な言葉」を探しあぐねていると、大人な 会話に待ちくたびれたチィックウィードが一人、茂みの中に頭を突っ込み、パストリスの生家の様子を窺うなり、

『ダレかいる、なぉ?』
「「「「ッ!」」」」

 反射的に身を屈めるラディッシュ達。
 しかしチィックウィードは藪に頭を突っ込んだまま。

『!』

 慌てたドロプウォートはチィックウィードを藪から即座に引っこ抜き、抱き締める様に守り、
「「「「「…………」」」」」
 何者かに気付かれた気配は無く、五人は顔を見合わせ頷き合うと、改めて静かに、慎重に、

「「「「「…………」」」」」

 藪の中に頭を突っ込んだ。
 その先に見えたのは「巨木のウロ」を利用して作られた、懐かしき「パストリスの家」であったが、

(((((!)))))

 チィックウィードが言った通り、そこには人が居た。
 頭から「ケモ耳」が生えた、妖人の一家と思われる三人が。
 両親と思われる男女と、娘と思われる幼い少女が一人。

 家の中から運んで来たシーツを談笑しながら物干しに掛けるなど、仲睦まじい「親子の光景」ではあったが、他人の家を無断で、不法に使用しているのは明らかで、家族をただジッと見つめるパストリスにサロワートは業を煮やし、

(アンタ、何も言わなくてぇイイわけぇ?! 家族との思い出が詰まった家を、あんな風に、勝手に使われてるのよぉ!)

 小声で怒り、彼女なりの配慮も見せたが、パストリスは笑顔で振り向き、
「イイのでぇす♪」
「え?!」
「妖人がこの世界で生きていくのは、本当にタイヘンなのでぇすぅ。それが、あんな風に、笑って過ごせてもらえるなら……ボクの両親も喜んでいると思うのでぇす♪」

 愁いの無い笑顔に、ラディッシュとドロプウォート、そしてチィックウィードまでもが笑みを見せ、そんな四人にサロワートは呆れたように、
「アンタ達ってぇホントお人好しよねぇ」
 苦笑すると、パストリスがおもむろに、

「ラディさん」
「?」
「お願いがあるのでぇす」
「お願い?」

 ラディッシュが「思いも寄らぬ頼まれ事」に眼を丸くした時、自分たちが密かに見られていたなど知る由も無い「幼子と父親」は笑顔を見せ合いながら、白いシーツを二人掛かりで干していると、家の中に戻っていた母親が優しい笑みと共に、

「そろそろ一息つきましょう♪」

 コップが三つ乗ったトレーを持って来て、
「そうだね♪」
「はぁ~い♪」
 二人が笑顔で答えた刹那、

『『ッ!?』』

 両親は異変を瞬時に感じ取り、顔色を急変。
 娘も、幼いながらに異変を感じ取りはしたが、それが「何に端を発するか」までは分からず、
「パパ……ママ……イマの、なぁに?!」
 不安げな顔を見せると、父親は娘を異変から守るように抱き締め周囲を窺い、

「今のは天法?!」

 息を呑み、
「えぇ……それも、とても強いわ……」
 母親も息を呑んだ。
 地世のチカラが色濃く、中世の人々に忌み嫌われている妖人にとって、それは驚異。
 魔女狩り的な、命の危機が迫っている可能性もあり、何が起きたのか現状把握に向かわない訳にはいかなかった。

 しかし、頼れる者が居ない妖人の家族にとって、夫だけが確認に向かうのは、残される妻子にリスクが高く、全てを鑑みた彼が導き出した答えは、

「みんなで見に行こう」

 何があっても最期まで「家族と共にあろう」と言う覚悟であった。
 想いは口にせずとも伝わり、硬い表情で頷く妻と子。
 夫は二人を両脇に抱くように、周囲を注意深く警戒しながら、天法の強いチカラを感じた場所へと向かい、
(この方向にあるのは……)
 とある事に気が付いた。
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