ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第六章

6-2

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 ドロプウォートの導きでオエナンサ家の屋敷に入るラディッシュ達――

 屋敷に入るなり、

『『当家へようこそぉ~~~♪』』

 両親がロビー中央で歌劇団ばりの笑顔とポーズで歓迎を示し、

『ちょ! なぁん何ですのぉコレはぁあぁあぁぁ!?』

 激しく狼狽する彼女を尻目に「ハの字」に並び立つメイド服姿の使用人たちも一斉に、

『『『『『『『『お帰りなさいませぇ御主人様、お嬢様がたぁ♪』』』』』』』』

 満面の笑顔で頭を下げ、大歓迎を示した。
 何故にこの様な「過剰な歓迎」に至ったのか、理由は単純明快。

 ボッチで名を馳せた愛娘に、敬愛を以てお仕えするお嬢様に、複数の友人が出来たから。

 彼女の生い立ちを鑑みれば、両親や使用人たちの喜びようにも理解は示せるが、学友を初めて家に招待した時の様な「両親の過度な歓待」は子供にとって「羞恥の極み」であり、地獄絵図。
 穴があったら入りたいほどの恥ずかしさから彼女は顔を真っ赤に、

『この様な出迎えなどぉいつもはしませぇんですのにぃいぃぃいぃ!!!』

 身振り手振りで止めさせようと試みたが、喜び溢れる両親や使用人たちは喜びのあまりにハンカチで目頭をそっと抑え、

「私の娘に、こんなに沢山の友達が出来たとはぁ~」
「本当ですわねぇ~」
「「「「「「「「嬉しゅうございますぅ~」」」」」」」」

 もはや公開処刑以外の何物でもなく、

『ひぃやぁああぁっぁぁあぁ! 止めてですわぁあぁっぁああぁ!』
(いっそ事ぉひと思いに殺してですわぁあぁぁあぁっぁぁ!)

 耐え兼ねたドロプウォートは頭を抱えて屋敷の奥へ逃げて行き、
「「「「「「「「御待ち下さいぃお嬢様ぁあぁあぁ!」」」」」」」」
 使用人たちは喜びの涙と共に彼女の後を一斉に追って行った。
 仲間の家族のノリの波に乗り切れず、

「「「「「「…………」」」」」」

 ポツンと、置き去り感を漂わせるラディッシュ達。
 戸惑いを覚え、
(え、えぇと……僕たちは、どうしたら……)
 すると、ドロプウォートの両親がニコやかに歩み寄って来て、

「ラディッシュ君、久しぶりですねぇ。パストリスさんも」
((!))

 ハッとした様子の二人と握手を交わし、初対面となるターナップ達にも、
「いつも娘と居てくれて、本当にありがとう」
 妻と共々、恭しく頭を下げたが、
「「?」」
 ラディッシュの足に、隠れる様にしがみつくチィックウィードに目を留め、

「この子は?」
「どちらの子、ですの?」

 するとチィックウィードはおずおずと顔を覗かせ、初めて目にした二人を前に、気恥ずかしそうにラディッシュを見上げながら、
「ねぇねぇパパぁ」

『『パパぁあぁ!?』』

 衝撃を受ける両親。
 愛娘が思いを寄せる人物を「パパ」と呼ぶ幼い少女を目の当たりに、

(我が娘は「敗北」を期したのかぁ~!)
(あの子が負けてしまうなんてぇ~!)

 愕然を隠せずに居ると、誤解を生んだ事を瞬時に悟ったラディッシュは、
「あっ、あの、コレは、そのぉ!」
 弁明を口にしようとしたが、

(そ、そぅ言えばチィちゃんのママは「ドロプ」だったぁ!?)

 下手な釈明は「余計に混乱を招く」と気付き、気付いてしまうと明快な言葉が浮かんで来ず、
(何てぇ説明すれば良いんだぁ?!)
 言葉に詰まると、その間隙を縫い、幼きチィックウィードはラディッシュの足の陰から落胆する男女(ドロプウォートの両親)を不思議そうに見上げ、

「「じぃじ」と「ばぁば」なぉ?」
(ッ!)

 この一言は「マズイ!」と瞬間的に思うラディッシュであったが、時すでに遅し。
 ドロプウォートの両親は全てを、誤解した形で一瞬にして悟り、表情が地獄から天国へ一転。
 花が咲いた様な笑顔を見せながら、

『私達の「初孫」でぇすよよぉおぉ!』
『でぇすわねぇえぇぇ旦那様ぁあぁ!』

 チィックウィードを満面の笑顔で抱き上げ愛おし気に頬擦りすると、

『ちょ、ちょっと待ちぃなぁ御二人ともぉおぉ!』

 すかさず話に割って入ったのはニプルウォート。
 ラディッシュとドロプウォートの仲を、エルブ国四大貴族の公認とされては堪らないとばかりに、
「そんな訳が無いだろうさぁ! その子の見た目年齢から、」
 逆算してみろと立場も忘れて言い放とうとしたが、

「「…………」」

 有頂天の「じぃじ」と「ばぁば」は外野の雑音など全く耳に入らない様子で、小躍りしそうな勢いで歓喜していて、

『コラァー! ウチの話を聞けぇー!』
(あの娘(ドロプウォート)にして、この親かぁ!)

 我が道を突き進む天然系の「血の繋がり」に仲間たちと苦笑しながら、パストリスとカドウィードそしてターナップと共に、両親の誤解を一つ一つ丁寧に解いていった。
 やがて、その努力の甲斐あってか、

「わたくし達の「早とちり」だったようですわねぇ、旦那様ぁ♪」
「その様だねぇ♪」

 納得の笑顔を見せる二人。
 しかし、

「「「「…………」」」」

 何処か、浮かない顔の仲間たち。
 それもその筈、肩を寄せて並び座るドロプウォートの両親は、互いの膝上をまたぐ形でチィックウィードを座らせ、宝物でも愛でる眼差しで、愛おし気に頭を撫で撫でしていたから。
((((本当に理解してくれたのか……))))
 一抹の不安を残し。
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