ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第五章

5-46

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 ラディッシュは、一転した硬い面持ちで、
「なので改めてお聞きします、スパイダマグさん」
「…………」
「プエラリアとパストリスと言う名前に聞き覚えはありますか?」
 隊長である彼が「やはりその事か」と思うと同時、

((((((((((ッ!!!))))))))))

 隊員たちの食事の手は反射的に瞬時に止まり、彼らも何か知っている素振りを見せたが、ラディッシュはあえて、

「教えてもらえませんか?」

 重ねて彼に問うと、彼は意を決した様にゆっくりと、重々しい口調で、
「知っています」
「「「「「「!」」」」」」
 今度はラディッシュ達が「やはり」と思う中、隊員たちは慌てに慌て、

『それは「明かしてはならぬ」と元老院の方々に!』
『これ以上、自身の御立場を悪くされては最悪、除籍処分に!』

 自分の事のように取り乱し、信頼の深さを窺わせたが、当人は落ち着いたもので平静に、言葉は短く、
「構わぬ」
 鎮まるように促した上で、

「いつかは知れる話であろうし、想定外の何者かに、不意を装い作為的に告げられるより、今の自分から御伝えしておきたい」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 決意の固さを知った隊員たちは異を唱えず、彼の意思の尊重を態度で示し、少なくともこの場に集まった者達は、隊長としての彼を尊敬し、敬愛しているのが窺えた。

 理解を示した部下たちに、短く頭を下げるスパイダマグ。

 改めてラディッシュ達の方へ向き直ると、
「その二人は、かつての勇者だった者たちです」
「「「「「「!」」」」」」
 衝撃を受けるラディッシュ達。
 ホクホク顔で黙々と食べ続けるチィックウィードを横目に、

((((((元勇者が、魔王と側近にぃ?!))))))

 その様な想像を全くしなかった訳では無かったが、改めて断言されると驚きを隠せず、それと同時に当然の如く湧いた「新たな疑問」も。

「どうして勇者が魔王と側近に?!」

 間髪入れず矢継ぎ早に、

「もしかして実は「最初の魔王」って存在しなかったとか?!!」

 体裁を取り繕う為に「反旗を翻した者」を、便宜上「魔王」と呼称した可能性に言及すると、彼は淡々と、
「いえ、最初の魔王は確かに存在しました。そして、」
 話が核心に触れようかと言う刹那、

『これは何の騒ぎだァ!』
((((((((((!))))))))))

 怒り心頭の様子で部屋に入って来たのは、コマクサ。
「知らせを受け急ぎ来てみれば! 警備が仕事の貴様らが、貴賓室で何をしておるかァ!」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」
「本来は天宮に足を踏み入れる事さえ許されぬ「下等な身分」のキサマ等ごときが図に乗るなァア!」
 真っ赤な顔して激昂する背後で、不敵なしたり顔を見せるのは宮廷料理人ミネズ。
 彼が告げ口したのは明らかであったが、責任を感じたラディッシュは、

『まっ、待って下さい!』

 即座に、話に割って入り、

「許可したのは僕です! 親衛隊の人達を責めないで下さい! それに「この話」と「身分の話」とは何の関係も、」
『黙れぇ異世界人がぁ!』
「「「「「「「「「「!」」」」」」」」」」

 コマクサは、勇者からの「気遣いを交えた異議」を差別発言で斬って捨て、あまりの無礼に驚きを隠せない親衛隊やドロプウォート達を前にしてなお、

「他の元老院の者どもからの口添えが無ければ、誰が貴様らの様な「異端」を天世に招き入れるかァ!」

 悪言は留まらなかったが、それが彼の「ウソ偽りのない本心」。
 歪んだ本音は怒り任せに続き、

『キサマ等の様な「穢れた存在」が天世に足を踏み入れたせいで合成獣が生まれたに相違なァい!』

 天世における実質的ナンバーワンの「思慮分別を欠いた発言」に、

『なぁんですってぇえぇえぇ!!!』

 ついにキレたのは、やはりドロプウォート。
 差別と理不尽を許さぬ彼女は「エルブ国の四大貴族」と言う立場も忘れ、

(心優しきラディを悪し様に謗るなど言語道断、相手が何者であろうと断じて許しませんですわァア!)

 食って掛かろうとした刹那、
 パァン!
「「「「「「「!」」」」」」」
 驚きから、思わず固まるドロプウォート達。
 彼の頬を叩いたのは、

((((((((((チョウカイ様ぁ!))))))))))

 慄くスパイダマグと親衛隊を横目に、彼女は毅然とコマクサを見据え、

『チョウカイ! 御主ぃ何をするかァ!』

 逆上する彼に、静かなれど芯の強さを窺わせる物言いで、

『人々の規範となるべき元老院が一人が、その様な「差別的な物言い」でなんとしますか』
「何を言うかぁ! げっ、現に其奴(そやつ)らが天世に来てから、おかしな事ばかり起きているではないかぁ!」

 当て付けとしか思えない、思慮の浅い反論に、

「貴方は「勇者殿に非がある」と言いますの?」
「そっ、それは!」
「貴方が命じた「親衛隊の監視」の眼がある前で、勇者殿方が、如何様な工作を行ったと言いますの?」
「ぐっ……」
「貴方が言い放った悪言の数々は、天世を守って下さった恩人方に向けて良い物では決してありません」
「く……」

 返す言葉を完全に失う、コマクサ。
 当然である。
 判断の重きを、自らの好悪(こうお)にのみ置き、証拠と論拠を欠いた発言など、事実を踏まえ、人としての道理に沿った発言に敵う筈も無し。

 その発言が「人の上に立つ者」から発せられたのなら、尚の事。
 論破された彼は悔し気に押し黙り、

「…………」
「…………」
「「「「「「「…………」」」」」」」
「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 異様な沈黙が場を支配する中、

『タイヘンでぇす!』
((((((((((!?))))))))))

 血相を変えて駆け込んで来たのは、衛生局の制服を纏った局員。
 駆け込んで来るなり、

『今度は南地区に合成獣が出現しましたぁあぁぁ!』
『何だとぉ!』
『なんとぉ言うことで。すのぉ!』

 コマクサとチョウカイの驚きと共に空気は一転し、
「そ、そんな! どうして南地区にぃ!?」
 料理人ミネズも驚愕の声を上げる中、皮肉にも合成獣の出現はラディッシュ達の「身の潔白」を証明する結果となったが、今は「その様な安堵」を覚えている場合では無く、スパイダマグはスグさま、

『親衛隊出動ォ! 待機中の班も叩き起こすのだァア!』
「「「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」」」

 隊員たちと共に、一斉に駆け出し、
『僕達も行こう!』
 声を上げるラディッシュに、仲間たちも強く頷いた。
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