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第五章
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天宮に戻ったラディッシュ達――
自分たち用の夕食作りの為、ラディッシュは調理場に立っていたが、
「…………」
思い出されるのは穏やかに暮らしていた「天世の町の人々」の、獣に変わり果てた姿と、悲しみに泣き崩れる遺族の姿。
様々な感情が入り混じった仄暗い思いに囚われ、
(僕は天世にまで来て、いったい何をやってるんだ……)
暗い顔して何度もため息を吐いたが、その一方で体は別人格であるかのように、人参に似た根菜類を手際よく「縦半分」に切った物を「真横」に細かく切る「半月切り」の、更に極薄バージョンでスライス。
その後ろを、木鉢を抱えて慌ただしく往復するのは助手のチィックウィード。
ため息交じりのパパ(ラディッシュ)が人参に似た野菜を切り終えるや否や、それを木鉢に回収して「次はコレを切ろ」と言わんばかり、ピーマンに似た果菜類を数個手元に置き、置かれた彼は、
「はぁ~」
ため息を吐きながらも、今度はそれを手早く縦1/4カットした後に細切りにスライス。
傍らで「スライス人参入りの木鉢」を持って待機していたチィックウィードは、それが切り終わるや同じ木鉢に回収し、次はキャベツの様な葉茎菜類(ようけいさいるい)の葉を彼の手元に数枚置いた上で、左手側の台の上に「追加の包丁」を置くと、ため息の絶えないパパは包丁を双刀で握り、意識が別に向いたままとは思えない高速で、連打連打連打連打の荒し。
細かく切り刻み「みじん切り」にし終わると即座に回収され、次に置かれたのは獣肉。
しかしコチラも体だけ別人格のように、両刀で素早く連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打で、瞬く間にミンチを完成させ、
(((((熟練の料理人かぁ!)))))
心の中でツッコミを入れる仲間たち。
その間にもチィックウィードはフライパンに多めの水を張って強火にかけ、落ち込み顔で呆けたラディッシュの手元に、大きくむしったキャベツの葉を「人数分×2」で置き、自分は木鉢にまとめた材料たちに醤油数滴などの調味料を入れて、
「なぁぉ♪ なぁぉ♪ なぁぉ♪」
ご機嫌な鼻歌交じりで、粘りが出るまでひたすら手捏ね。
やがてフライパンの水が沸き始めると、
「はぁ~」
ため息パパは、手元に置かれたキャベツの葉の一枚を手に取り、無意識下でヤケドに注意しつつ熱湯にくぐらせて柔らかくして皿の上に置き、残りの葉も全て同様に柔らかくして、皿の上に重ね置いた。
頃合いを見計らいパパの前に、
「なぉん♪」
捏ね終えた「タネ入りの木鉢」を置くチィックウィード。
心ここに在らずのパパが「やわらかくなった葉」に「適量のタネ」を取り分け、問題無く包み始めたのを確認すると、手を洗って汚れを落とし、
「なぉ♪ なぉ♪」
自分の身の丈と変わらぬ大きさの寸胴を持って来て、踏み台を使ってコンロの上に、
「なぉー♪」
置くと、その底に「ラディッシュが作った葉包み」を敷き詰め、あらかじめ別で調理していた大量の「湯剥きしたトマトのような野菜」をドサドサと投入すると、蓋をして中火にかけ、しばしの放置。
食材に火が通るまでの間、米代わりの穀物を土鍋で炊き、更に同時進行で「呆けたパパの介助」や「調理場の後片付け」、「皿の準備」などなど手早くこなした。
幼子が見せる八面六臂の活躍に、
(((((出番が無い……)))))
困惑笑いのドロプウォート達と、
「はぁ……」
未だ「無力な自身への落胆」から、立ち直れないラディッシュ。
やがて寸胴から、トマト系の甘い香りが周囲に漂い始めると、
「なぉ♪」
チィックウィードは寸胴の蓋を取ってキノコと砂糖、中世から持って来た数種の調味料を追加投入して、火力を弱くした。
弱火でじっくり煮込み、余分な水分を飛ばし、甘酸っぱい香りが強さを増すと、
ぐぅううぅ~~~ぅう!
ラディッシュの腹の虫が鳴き、
『!?』
意識を取り戻すラディッシュ。
調理をしていた事さえ気付かないほど、考え込んでいたのか、
「あれ?」
今更ながらに周囲を見回し、
「え? 何コレぇ?!」
自身が置かれた現状を把握できずにオロオロ。
(((((マジでぇすかぁ?!)))))
仲間たちが呆れる中、
「パパ♪」
チィックウィードが裾を掴んで愛らしい笑顔を見せながら、
「ゴハンにするなぉ♪」
(!)
ラディッシュは、
(そうだ……僕ごときが一人で悶々と悩んだって、何かが解決する訳じゃないよなぁ)
その無垢な笑顔に救われた気がした。
思い至った考えは、極めてシンプル。
しかし心にかかっていた霧は晴れ、
「そうだね。ゴハンにしよぅね♪」
数時間振りとなる笑顔を見せると仲間たちも笑顔を見せ、チィックウィードは自慢げに、
「チィもおてつだい、したなぉ♪」
(((((いえ、ほとんど作ったはのチィちゃんですけどぉ?)))))
仲間たちは心の中でツッコミを入れたが、無意識に近い状態で作業をしていたラディッシュは、それと気付かず、
「本当ぉ?! そっかぁエライねぇ~♪」
頭を優しく撫でながら寸胴の中を覗き込み、
(この料理は、チィちゃんの「苦手野菜克服の為」に作った料理だ……あの日から、大好物になったんだっけ♪)
克服前の「野菜を見たしかめっ面」を思い出して小さく笑い、各々の皿にこぶし程の大きさの「葉包み」を二個ずつスープごと盛った。
それは地球で言うところの「ロールキャベツ」。
無論、ラディッシュにその名の記憶は無いが。
自分たち用の夕食作りの為、ラディッシュは調理場に立っていたが、
「…………」
思い出されるのは穏やかに暮らしていた「天世の町の人々」の、獣に変わり果てた姿と、悲しみに泣き崩れる遺族の姿。
様々な感情が入り混じった仄暗い思いに囚われ、
(僕は天世にまで来て、いったい何をやってるんだ……)
暗い顔して何度もため息を吐いたが、その一方で体は別人格であるかのように、人参に似た根菜類を手際よく「縦半分」に切った物を「真横」に細かく切る「半月切り」の、更に極薄バージョンでスライス。
その後ろを、木鉢を抱えて慌ただしく往復するのは助手のチィックウィード。
ため息交じりのパパ(ラディッシュ)が人参に似た野菜を切り終えるや否や、それを木鉢に回収して「次はコレを切ろ」と言わんばかり、ピーマンに似た果菜類を数個手元に置き、置かれた彼は、
「はぁ~」
ため息を吐きながらも、今度はそれを手早く縦1/4カットした後に細切りにスライス。
傍らで「スライス人参入りの木鉢」を持って待機していたチィックウィードは、それが切り終わるや同じ木鉢に回収し、次はキャベツの様な葉茎菜類(ようけいさいるい)の葉を彼の手元に数枚置いた上で、左手側の台の上に「追加の包丁」を置くと、ため息の絶えないパパは包丁を双刀で握り、意識が別に向いたままとは思えない高速で、連打連打連打連打の荒し。
細かく切り刻み「みじん切り」にし終わると即座に回収され、次に置かれたのは獣肉。
しかしコチラも体だけ別人格のように、両刀で素早く連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打連打で、瞬く間にミンチを完成させ、
(((((熟練の料理人かぁ!)))))
心の中でツッコミを入れる仲間たち。
その間にもチィックウィードはフライパンに多めの水を張って強火にかけ、落ち込み顔で呆けたラディッシュの手元に、大きくむしったキャベツの葉を「人数分×2」で置き、自分は木鉢にまとめた材料たちに醤油数滴などの調味料を入れて、
「なぁぉ♪ なぁぉ♪ なぁぉ♪」
ご機嫌な鼻歌交じりで、粘りが出るまでひたすら手捏ね。
やがてフライパンの水が沸き始めると、
「はぁ~」
ため息パパは、手元に置かれたキャベツの葉の一枚を手に取り、無意識下でヤケドに注意しつつ熱湯にくぐらせて柔らかくして皿の上に置き、残りの葉も全て同様に柔らかくして、皿の上に重ね置いた。
頃合いを見計らいパパの前に、
「なぉん♪」
捏ね終えた「タネ入りの木鉢」を置くチィックウィード。
心ここに在らずのパパが「やわらかくなった葉」に「適量のタネ」を取り分け、問題無く包み始めたのを確認すると、手を洗って汚れを落とし、
「なぉ♪ なぉ♪」
自分の身の丈と変わらぬ大きさの寸胴を持って来て、踏み台を使ってコンロの上に、
「なぉー♪」
置くと、その底に「ラディッシュが作った葉包み」を敷き詰め、あらかじめ別で調理していた大量の「湯剥きしたトマトのような野菜」をドサドサと投入すると、蓋をして中火にかけ、しばしの放置。
食材に火が通るまでの間、米代わりの穀物を土鍋で炊き、更に同時進行で「呆けたパパの介助」や「調理場の後片付け」、「皿の準備」などなど手早くこなした。
幼子が見せる八面六臂の活躍に、
(((((出番が無い……)))))
困惑笑いのドロプウォート達と、
「はぁ……」
未だ「無力な自身への落胆」から、立ち直れないラディッシュ。
やがて寸胴から、トマト系の甘い香りが周囲に漂い始めると、
「なぉ♪」
チィックウィードは寸胴の蓋を取ってキノコと砂糖、中世から持って来た数種の調味料を追加投入して、火力を弱くした。
弱火でじっくり煮込み、余分な水分を飛ばし、甘酸っぱい香りが強さを増すと、
ぐぅううぅ~~~ぅう!
ラディッシュの腹の虫が鳴き、
『!?』
意識を取り戻すラディッシュ。
調理をしていた事さえ気付かないほど、考え込んでいたのか、
「あれ?」
今更ながらに周囲を見回し、
「え? 何コレぇ?!」
自身が置かれた現状を把握できずにオロオロ。
(((((マジでぇすかぁ?!)))))
仲間たちが呆れる中、
「パパ♪」
チィックウィードが裾を掴んで愛らしい笑顔を見せながら、
「ゴハンにするなぉ♪」
(!)
ラディッシュは、
(そうだ……僕ごときが一人で悶々と悩んだって、何かが解決する訳じゃないよなぁ)
その無垢な笑顔に救われた気がした。
思い至った考えは、極めてシンプル。
しかし心にかかっていた霧は晴れ、
「そうだね。ゴハンにしよぅね♪」
数時間振りとなる笑顔を見せると仲間たちも笑顔を見せ、チィックウィードは自慢げに、
「チィもおてつだい、したなぉ♪」
(((((いえ、ほとんど作ったはのチィちゃんですけどぉ?)))))
仲間たちは心の中でツッコミを入れたが、無意識に近い状態で作業をしていたラディッシュは、それと気付かず、
「本当ぉ?! そっかぁエライねぇ~♪」
頭を優しく撫でながら寸胴の中を覗き込み、
(この料理は、チィちゃんの「苦手野菜克服の為」に作った料理だ……あの日から、大好物になったんだっけ♪)
克服前の「野菜を見たしかめっ面」を思い出して小さく笑い、各々の皿にこぶし程の大きさの「葉包み」を二個ずつスープごと盛った。
それは地球で言うところの「ロールキャベツ」。
無論、ラディッシュにその名の記憶は無いが。
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