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第五章

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 スパイダマグが勧めた店で食事をするラディッシュ達――

 食す前からなんとなく気付いていた話だが、
(((((((アジが、うっすい……)))))))
 店を自信満々紹介したスパイダマグ自身も、ラディッシュの手料理を食した事で「味覚が開発」され、一枚布で隠した口元に戸惑いを隠せずに居た。

 しかし出された料理は「店側からの感謝」が多分に含まれた、好意の品々。
 故に無料。
 幼いながらに空気を読んだチィックウィードも含め、

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 誰一人として不平を口にせず、義理堅くも汁まで綺麗に平らげ、思う所は腹の底にグッと仕舞い込み、

「「「「「「「ありがとうございました」」」」」」」

 幼子も、

「あ、ありがとぉ、なぉ♪」

 精一杯の謝意を店主に伝え、満足げな笑みを浮かべた店主が使用済みの食器を片付ける中、苦行から解放されたひと時をくつろいでいるとラディッシュがおもむろ、

「あ、あのぉスパイダマグさん」
「何でありましょう、勇者殿?」
「その……さっきの人が千本刀さんに言ってた「咎人」って、どう言う意味なんですか?」
(千本刀さんって、罪人?)

 ドロプウォート達も気にはなっていたのか耳を傾けると、スパイダマグは「密かな口直し」で飲んでいた湯呑を静かに置き、

「天世における重罪人の処遇は、大きく分けて二つあるのです。一つは、天世のチカラを剥奪した上で「地世送り」となる事実上の死刑宣告で、もう一つは、同様に天世のチカラを剥奪されるものの「魂の転移」を施す、終身刑とでも言うべきモノです」

 天世のチカラを奪った上での「地世送り」は、言葉のニュアンスから理解出来たが、

「「「「「「魂の転移?」」」」」」

 聞き慣れないフレーズに大人たちが首を傾げた一方、
「テンニなぉ♪ テンニなぉ♪」
 響きが琴線に触れたチィックウィードが楽し気に連呼。
 すると、
「お店では静かにしませんと「イケマセン」ですわぁ」
 隣に座っていたドロプウォートが優しく諫め、
「うぃ。しずかにする、なぉ♪」
「チィちゃんは、良い子ですわね」
 頭を撫で撫で。

 話の腰を途中で折られたスパイダマグはコホンと咳払いを一つして気持ちを立て直してから、
「つ、続けます。魂の転移とは肉体を奪われ、魂は別に用意された「動物の体」などに移される刑であり、その体で「永続的な単純労働」に従事する事となります。そしてその受刑者たちをプリズニアと呼ぶのですが……中には先のサーシアム殿のように、既に刑に服する者たちを、悪意を以て「咎人(とがびと)」と蔑称する者も少なからず……」
「じゃあ千本刀さんも、何か大罪を?」
 ラディッシュの疑問に、

「彼は違うのです」

 スパイダマグは静かに首を横に振ると、中々答えに辿り着かない会話にニプルウォートが苛立ちを覚え、

「じゃあアイツは何だってのさ? 人間の姿じゃないのは、誰の目から見たって明らかだろぅさ?」

 皮肉を交えたが、彼は淡々と、

「確かに彼の魂は「人ならざるモノ」の中に入っていますが……しかしそれは罪を犯して強制された物ではなく、彼が自ら望んでの事なのです」
「「「「「「自ら望んでぇ?!」」」」」」

 にわかに信じ難いと言った驚きの声を上げるラディッシュ達の一方、空腹は満たされ、こっくりこっくり舟を漕ぎ始めるチィックウィード。
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