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第五章

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 有り体に言えば「マズイ料理」であったが、厚意として出された料理であり、満足げに食べ進める元老院の御歴歴三人の姿に、

((((((どっ、どうしよう……))))))

 嫌がらせで出された料理であったならば、文句の一つも言えようが。
 相手が天世の、しかも実質的支配者と言う事もあり、
「「「「「「…………」」」」」」
 仲間同士で目配せしながら、大人の対応を探しあぐねていると、

『パパのゴハンのほうがオイシイなぉ♪』

 他意無く声を上げる、幼きチィックウィード。

((((((言っちゃったぁあぁぁぁ~~~!))))))

 冷や汗をかく大人たちであったが、元老院の御歴歴の三人は意外にも微笑ましく笑い合い、

((((((え?))))))

 顔色を窺うラディッシュ達を前に、

「ぬっほっほっ。そうであるかぁそうであるかぁ♪」
「ホッホッホッ。やはり父様(ちちさま)の手料理の方が良いのかぁ♪」
「ですなぁですなぁ♪」

 子供の戯言と、聞き流してくれたようであった。
 大ごとにならず、

((((((良かったぁあぁぁあぁぁ))))))

 内心でホッとするラディッシュ達。
 しかし、

『聞き捨てなりませんなぁ!』

 子供相手に目くじら立てたのは総料理長ミネズ。
 仁王立ちで話を蒸し返し、

((((((面倒臭そうなのが来たぁあぁぁ!))))))

 ラディッシュ達が心の中で頭を抱える中、

『何処が気に入らないのか言ってもらいましょうか!』

 不服を露わにしたが、御歴歴の三人が笑い交じりに宥めるように、

「ぬっほっほっ。総料理長殿ぉ、幼子の物言いにそれほどムキにならずともぉ」
「ホッホッホッ。そうですわ。幼子にとっては、見ず知らずの者が作った、得体の知れぬ料理。父と慕う者の手料理の方が、口に馴染むのでしょう」
「ですなぁですなぁ」

 謝意を伝える為に催した晩餐を、無意義にする訳にはいかなかったから。
 気遣いを見せる重鎮三人を前にして、

『そうは参りませぇん!』

 ミネズは尚も頑として譲らず、その意固地なまでの頑なな姿に、

((((((想像以上に面倒臭い!))))))

 ラディッシュ達が心の中でウンザリしていると、
「お嬢ちゃん! アタクシの「大傑作」の何処が気に入らないと言うの!」
 ズバッと斬り掛かり、彼の自画自賛に、

((((((これが大傑作ぅ?!))))))

 ゲンナリすると、チィックウィードが他意を感じさせない天使の笑顔で以て、

『だって「おいしくない」なぉ♪』

 容赦なく斬り返し、

『ぐはぁ』

 料理人として積み上げて来たプライドを、一瞬にして斬り伏せられるミネズ。
 よろめきながら地に片膝をつき、

「……しなさい……」
「「「「「「「「「「ん?」」」」」」」」」」

 何ごとかと聞き耳を立てるラディッシュ達や、元老院の御歴歴を前に、彼はガッと立ち上がり、

『アタクシと対決なさァい!!!』

 ラディッシュを指差し、

「料理対決よ!」
「「「「「「「「「…………はぁ?!!!」」」」」」」」」

 目が点になる、ラディッシュ達や、元老院の御歴歴。
 するとスパイダマグが、

『ならば、こう言うのはどうでしょう!』

 ここぞとばかり、話に割って入り、
「勇者様が勝たれた暁には、町へ下るのを許可されては!」

「「「!」」」

 ギョッとする御歴歴の三人。
 百人の天世人との接触を禁じたほど、影響を懸念していたにもかかわらず、一般の天世人との接触など、とうてい看過出来るものでは無かったから。
 何の脈略も持たない褒賞でもあり当然の如く却下しようとしたが、自信家ミネズは即断の独断で間髪入れず、

『構いませんわよ!』
(((!)))

 絶対的な自信をのぞかせる一方で、驚愕の御歴歴三人。
 思いもしなかった展開に、

(ヘンな事になっちゃったなぁ~)

 困惑するラディッシュと仲間たちであったが、チィックウィードだけは意味が分かっているのかいないのか、言葉のリズムが琴線に触れたらしく、

「タイケツなぉ♪ タイケツなぉ♪」

 満面の上機嫌で連呼する中、晩餐は中止となった。
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