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第五章
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アルブル国の北方と国境を接するパラジット共和国。
この国は強国パラジットを中心に、幾つかの小国家が集まり共和国の形を成し、王都は当然の如くパラジット国に存在し、その名を「パラジクス」。
王都と呼ぶにふさわしく、町は石像や飾り彫りなどが施された豪奢な石造りの官庁舎が立ち並び、その一角に、成人男性数人分ほどの高さがある頑強な鉄柵に囲まれた、特に目を引く、歴史を感じさせる建物が。
正面の柵門を通り抜け、アプローチを飾る円形の噴水の横を通り、煌びやかに飾り立てられている訳では無い、重厚な建物の正面入り口から中に入ると、そこは巨大な広間。
ひと気は無く、見上げるほど高い吹き抜けのあるロビーの中央まで進むと、何処からともなく人の声が。
一人の人物が、何かを言っているように聞こえる。
何を言っているのかまでは、分からない。
声のする廊下の方へ歩みを進め、幾つかの扉の前を通り過ぎ、やがて突き当りの両開きの扉を開けると、そこは体育館並みに天井がやたらと高い講堂。
そこには、一人の声しか聞こえなかったのが信じられない程の数の若い男女が、等しく揃いの学生服を思わせる制服を纏い、みな一様に、正面に設けられた高さ一メートルほどの講壇に向かって、些か緊張した面持ちで整然と簡易椅子に腰掛け、膝の上には制帽が。
定規で描いた様に背筋を伸ばし、瞬きの心配をさせるほどの真剣な眼差しで、講壇に立ち何かを語る軍服姿の「イカツイ顔した年配男性」を見つめていた。
そんな部屋の正面右には同様の軍服を纏った、これまたイカツイ顔した中年男性が直立不動で「壇上の年配男性」の言葉が終わるや否や、まるで怒鳴るように、
『全員起ィ立ッ!』
一糸乱れず、制帽を手に立ち上がる若い男女たち。
すると講壇の年配男性は眼下の彼ら、彼女たちを鋭い眼光で見下ろし、
「よくぞ今日まで扱(しご)きに耐え抜いた、生徒諸君!」
少し表情を緩め、野太い声で見回すと、
「諸君らは本日より「命を受けた部署」にて、国や民の為に士官として汗を流す事になる訳であるが、本校で学んだ経験と知識を活用し、持てるチカラを遺憾無く発揮してもらいたい!」
大きく息を吸い、
『卒業おめでとう、生徒諸君!』
力強い祝辞の締めくくりに合わせ生徒たちは、
『『『『『『『『『『うおぉおっぉぉおーーーーーーーーーーーーッ!』』』』』』』』』』
歓喜の歓声と共に、手にした制帽を真上に向かって投げ上げた。
ここは王都パラジクスに作られた、伝統と格式ある士官学校である。
故に、パラジット国内の全域から集まった成績優秀者たちが、更に競争率数百倍の難関を突破して入学し、厳しい教練の日々に耐え切れず逃亡した者たちを数名出しつつも、踏み堪えた生徒達は、卒業式と言う「門出の日」を迎えたのであった。
成し遂げた感動も一入(ひとしお)の中、彼ら、彼女たちは卒業と同時に「少尉」と言う階級を与えられ、命を受けた各部署へ各々散って行く事と成る。
将来を約束されたエリートの一人として。
苦楽を共にした学友たちと、互いの新たな門出を祝い、ひと時の別れを惜しみ合い、
「首席卒業おめでとう、ミトラ中尉殿ぉ♪」
「卒業と同時に「中尉」だなんてぇ聞いた事ないぜぇ♪」
「ホント、凄いよねぇ♪」
「まぁったくだぜぇ! 今度何か奢れよぉ♪」
ひと際、大きな輪の中心に居たのは、
「たまたまだよぉ~」
照れ臭く謙遜し、
「ちょっと「出来過ぎ」だけどねぇ♪」
笑顔を見せる、一人の青年。
少年らしさを若干残した、ミトラと呼ばれた彼の笑顔からは、嫌味や卑屈の類いは感じられず、彼の持つ人柄の良さが現われ、男女問わず集まったクラスメイトの数からも、人気がほどが窺え知れ、笑顔を交わし合う中、クラスメイトの一人がおもむろに、
「「ミトラ中尉殿」ぉはぁ、何処に配属されるのでぇありますかぁ?」
からかい交じりに尋ね、
「「中尉殿」は止めてくれよぉ~今日までは、みんな一緒だろぉ~」
苦笑しながらも、
「特務機関への配属を、」
『『『『『『『『えぇーーーっ!?』』』』』』』』
彼の言葉終わりを待たずに驚愕する仲間たち。
「おぃマジかよぉ、スゲェな!」
「国の中枢も中枢の機関じゃねぇか!」
「どんだけ異例尽くしなんだよぉ!」
「出世街道まっしぐらねぇ♪」
感嘆の声を上げる中、
「でも、その分の重圧は感じてる」
当の本人は少し緊張を纏った顔を見せながらも、
「感じてはいるけど……国や国民の為に働けると思うと、同時に喜びも感じてるよ」
絵に描いた様な「品行方正な解答」に、彼らしいと思ったのかヤレヤレ笑いを浮かべるクラスメイト達。
この国は強国パラジットを中心に、幾つかの小国家が集まり共和国の形を成し、王都は当然の如くパラジット国に存在し、その名を「パラジクス」。
王都と呼ぶにふさわしく、町は石像や飾り彫りなどが施された豪奢な石造りの官庁舎が立ち並び、その一角に、成人男性数人分ほどの高さがある頑強な鉄柵に囲まれた、特に目を引く、歴史を感じさせる建物が。
正面の柵門を通り抜け、アプローチを飾る円形の噴水の横を通り、煌びやかに飾り立てられている訳では無い、重厚な建物の正面入り口から中に入ると、そこは巨大な広間。
ひと気は無く、見上げるほど高い吹き抜けのあるロビーの中央まで進むと、何処からともなく人の声が。
一人の人物が、何かを言っているように聞こえる。
何を言っているのかまでは、分からない。
声のする廊下の方へ歩みを進め、幾つかの扉の前を通り過ぎ、やがて突き当りの両開きの扉を開けると、そこは体育館並みに天井がやたらと高い講堂。
そこには、一人の声しか聞こえなかったのが信じられない程の数の若い男女が、等しく揃いの学生服を思わせる制服を纏い、みな一様に、正面に設けられた高さ一メートルほどの講壇に向かって、些か緊張した面持ちで整然と簡易椅子に腰掛け、膝の上には制帽が。
定規で描いた様に背筋を伸ばし、瞬きの心配をさせるほどの真剣な眼差しで、講壇に立ち何かを語る軍服姿の「イカツイ顔した年配男性」を見つめていた。
そんな部屋の正面右には同様の軍服を纏った、これまたイカツイ顔した中年男性が直立不動で「壇上の年配男性」の言葉が終わるや否や、まるで怒鳴るように、
『全員起ィ立ッ!』
一糸乱れず、制帽を手に立ち上がる若い男女たち。
すると講壇の年配男性は眼下の彼ら、彼女たちを鋭い眼光で見下ろし、
「よくぞ今日まで扱(しご)きに耐え抜いた、生徒諸君!」
少し表情を緩め、野太い声で見回すと、
「諸君らは本日より「命を受けた部署」にて、国や民の為に士官として汗を流す事になる訳であるが、本校で学んだ経験と知識を活用し、持てるチカラを遺憾無く発揮してもらいたい!」
大きく息を吸い、
『卒業おめでとう、生徒諸君!』
力強い祝辞の締めくくりに合わせ生徒たちは、
『『『『『『『『『『うおぉおっぉぉおーーーーーーーーーーーーッ!』』』』』』』』』』
歓喜の歓声と共に、手にした制帽を真上に向かって投げ上げた。
ここは王都パラジクスに作られた、伝統と格式ある士官学校である。
故に、パラジット国内の全域から集まった成績優秀者たちが、更に競争率数百倍の難関を突破して入学し、厳しい教練の日々に耐え切れず逃亡した者たちを数名出しつつも、踏み堪えた生徒達は、卒業式と言う「門出の日」を迎えたのであった。
成し遂げた感動も一入(ひとしお)の中、彼ら、彼女たちは卒業と同時に「少尉」と言う階級を与えられ、命を受けた各部署へ各々散って行く事と成る。
将来を約束されたエリートの一人として。
苦楽を共にした学友たちと、互いの新たな門出を祝い、ひと時の別れを惜しみ合い、
「首席卒業おめでとう、ミトラ中尉殿ぉ♪」
「卒業と同時に「中尉」だなんてぇ聞いた事ないぜぇ♪」
「ホント、凄いよねぇ♪」
「まぁったくだぜぇ! 今度何か奢れよぉ♪」
ひと際、大きな輪の中心に居たのは、
「たまたまだよぉ~」
照れ臭く謙遜し、
「ちょっと「出来過ぎ」だけどねぇ♪」
笑顔を見せる、一人の青年。
少年らしさを若干残した、ミトラと呼ばれた彼の笑顔からは、嫌味や卑屈の類いは感じられず、彼の持つ人柄の良さが現われ、男女問わず集まったクラスメイトの数からも、人気がほどが窺え知れ、笑顔を交わし合う中、クラスメイトの一人がおもむろに、
「「ミトラ中尉殿」ぉはぁ、何処に配属されるのでぇありますかぁ?」
からかい交じりに尋ね、
「「中尉殿」は止めてくれよぉ~今日までは、みんな一緒だろぉ~」
苦笑しながらも、
「特務機関への配属を、」
『『『『『『『『えぇーーーっ!?』』』』』』』』
彼の言葉終わりを待たずに驚愕する仲間たち。
「おぃマジかよぉ、スゲェな!」
「国の中枢も中枢の機関じゃねぇか!」
「どんだけ異例尽くしなんだよぉ!」
「出世街道まっしぐらねぇ♪」
感嘆の声を上げる中、
「でも、その分の重圧は感じてる」
当の本人は少し緊張を纏った顔を見せながらも、
「感じてはいるけど……国や国民の為に働けると思うと、同時に喜びも感じてるよ」
絵に描いた様な「品行方正な解答」に、彼らしいと思ったのかヤレヤレ笑いを浮かべるクラスメイト達。
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