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第四章

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 サジタリアは頭上にポッカリ開いた大穴から覗く青空を、唖然と見上げ、

「終わった……のか?」

 共に苦戦を強いられていたグラン・ディフロイスも、あまりにあっけない幕切れに、
「ホント……こんなにも、あっさり……」
 静かになった戦場で、共に怪我の痛みも忘れ、気の抜けた表情で青空を見上げていると唐突に、

『あぁあぁっ!!!』

 ラディッシュの驚愕絶叫が地下空間にこだまし、
「「ッ!」」
 古参の二人が緊迫感を以て「何事か」と振り返ると、苦笑するドロプウォートが見つめる前で彼は、

「貰った大事な剣がぁあぁぁ!」

 柄の部分だけになってしまった天流護聖剣を、悲し気に握りしめていた。
 仮であったとは言え、誓約をした彼のチカラに刀身が耐え切れなかったのである。
「なんの騒ぎかと思えばぁ」
「ホント、人騒がせぇ」
 小さく安堵の息を吐く二人。

 消失してしまったのが名刀であったとは言え「世界の安寧」と秤に掛ければ、どちらが大事であるかなど語るまでも無い話であり、「刀一振り」の犠牲で平和を取り戻せたなら、痛手は極小であったと言える。
 それでも市販の剣や、拾った剣ばかり使って来たラディッシュは、

『せっかく「良い剣」を貰ったのにぃ~』

 半ベソかいて嘆き、世界を救った一撃を放った者とは思えぬ、いつもと変わらぬ軟弱な言動に、
「まったくですわぁラディはぁ……」
 ドロプウォートがホッとした呆れ笑いを浮かべると、鬼瓦に小さな苦笑を浮かべる疲労困憊のサジタリアが歩み寄り、
「未熟者めが。必要以上にチカラを込め過ぎるからだ」
 そして満身創痍のグラン・ディフロイスも、
「ホントぉ、生き埋めにならなくて良かったよねぇ♪」
 愛らしくも皮肉った笑みを浮かべて歩み寄り、
「……返す言葉もありましぇん」
 申し訳なさげに頭を下げるラディッシュ。

 非常事態は、終息目前の空気を醸し出していた。
 王都アルブレスの城内、城下、で未だ暴れているであろう「残存勢力の掃討」と言う課題を残してはいたが。
 しかし、

『いやぁ~ぼくぉ流石に危ない危なかったなぁ~♪』
((((ッ!!!))))

 聞き覚えのある不穏な声が。
 安穏としつつあった空気を一瞬にして打ち崩され、驚愕を以て振り向く四人。

 その視線の先で、
「あのまま直で受けていたら次元の狭間に飲み込まれてぇ、塵になってかも知れないねぇ~♪」
 生死にかかわる話をおどけ笑いながら、
「あぁ~あ、一張羅が埃まみれだよぉ~」
 服に付いた埃を払うのは、

((((ハクサァンッ!))))

 四人の驚嘆に、彼はたった今、気付いた素振りを見せ、
「ナニナニ?! 死んじゃったと思ったぁ?」
 皮肉を交えてケラケラ笑い、
「残~念、ぼくぁ死ぬ訳にはいかないんだよねぇ~目的達成の為にもさ♪ まぁどの道、倒せても、存在まで消せる訳じゃないしねぇ♪」
 嘲笑いに、

((え?! どう言う意味?!))

 ラディッシュとドロプウォートは疑問を抱き、
「「…………」」
 サジタリアとグラン・ディフロイスが、意味を知っていると思われる不快感を滲ませる中、
「なのぉで、ぼくぉここからは本気で行かせてもらうよぉん♪」
 彼は「からかい」と「陰り」の笑みと共に、

≪我がチカラァ、天世のチカラを以て我は行使す!≫

 その身を「天世の白き輝き」で包むと、髪と目の色が、偽装の茶色から天世人の証である薄紫色に変わって行き、更に、

≪顕現ッ!≫

 唱えた途端、

「「「「ッ!」」」」

 驚く四人の眼前で、彼は自身の姿を「白き輝きを放つ獣」へと、みるみるみるみる変えて行った。
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