ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
263 / 894
第四章

4-37

しおりを挟む
 仲間たちの驚く姿を目の当たりに、ハクサンは段上の玉座の前で満足げな高笑い、

「ハァーハッハッハッ! 気付かなかったろぉ! 地世のチカラを、天世のチカラでコーティングして隠していたからねぇえ!」

 狂気に取り憑かれた笑みを見せた。
 悲鳴を上げた重鎮たちの全身が、次々地世の靄に取り込まれて行くさ中、

『ひぃいぃぃいぃ!』

 玉座まで続く赤絨毯の中央に転がり出る一人の中年男性。
 謁見の間に同席していた事から、何かしらの要職に就いている人物の筈であるが、彼だけは「合成獣化の術」が発現せず、玉座のハクサンは見知らぬ者を見つけた眼で半笑い、
「おやおや「招かれざる客」が混じって居たようだねぇ~」
 見下ろす不敵な笑いに、
「ひぃ!」
 怯えた男性が尻餅をついたまま後退ると、ラディッシュ達がハクサンの視界から彼を守る様に、壁となって瞬時に立ち並び、

『今のうちに早く逃げて下さぁい!』

「はひぃ!」

 男は礼も言わずに慌てふためき、翻筋斗(もんどり)を打つように謁見の間から駆け出して行った。
 その背を、段の上から見下ろすハクサン。
「やれやれ相変わらずぅお優しい事だねぇ~」
 皮肉交じりに呆れ笑うと、慈悲なく合成獣化していく幼王アルブルの姿を目の当たりにしたターナップが怒りを抑えきれず、

『テメェこそ、人の命を何だと思ってやがァる! 王様とは言え、そんな小さな子供にまでぇ!!!』

 こめかみの血管がキレそうな勢いで怒りを露わにしたが、
「ん?」
 彼は「それが何か」と言わんばかりに、ヘラっと一笑いしてから、
「幼児好きのキミとしては我慢ならないかぁい?」

『んなぁ!? 誰が「幼児好き」かァ!』

「でも安心して良いよぉ。だってぇ、ぼくぁ術を施すより前に壊れちゃってたからねぇ♪」
「そう言う事を言ってんじゃねぇ!」
 即座に否定したが、共に身構える仲間たちは、
((((((…………))))))
 即答で「ターナップに同意」する事が出来なかった。
 内心での正直な話、改めて指摘されて思い返してみると、ちょっと気になる節が、チョイチョイあったから。
 仲間たちから発せられる、何とも言えない微妙な空気に、

『ちっ、違うっスよぉ!』

 ターナップは少々慌てた様子で、
「確かに「子供は好き」っスけど! そう言う意味じゃねぇっスぅ!!!」
 少々狼狽した否定ではあったが、ラディッシュ達はハクサンが向けるニヤケ顔から、

((((((!))))))

 ハッと我に返り、「うっかり?」彼の口車に乗せられ大切な仲間(ターナップ)に疑いを持ってしまったのを自省する様に、
「うっ、うん! モチロンだよぉ!」
「わっ、分かっていますですわぁ!」
「でっ、でぇすぅでぇすぅ!」
「うっ、ウチ等は分かってるさぁ!」
「しっ、信用してるって、ますわよ!」
「だぁ、ダイジョウブなぉ! わかってるぅなぉ!」
 その焦り交じりの誤魔化し笑いに、

(本当っスかぁ……)

 仲間たちの目に自分がどう映っているのか、少々不安になるターナップであった。
 そんな緊張感を欠いた「コントの様な押し問答」の間にも、手の施しようのない合成獣化は進み、

『『『『『『『『『『キィッシャャアアァァッァァァ!』』』』』』』』』』
(((((((!)))))))

 獣の奇声に緊迫の現状を思い出したラディッシュ達の眼に飛び込んだのは、見上げる程の体躯の、顔と上半身に「獅子の姿」を、下半身に「山羊の姿」を、そして大蛇の尾を持った、合成獣と呼ぶに最もふさわしい、

≪キマイラ≫

 ギラつく巨大な犬歯の間から炎を吐き、彼ら、彼女たちを見下ろす。
 圧倒的存在感を放つキマイラの群れの迫力に取り囲まれ、ラディッシュ達が思わず息を呑む中、ハクサンは段の上から闇に歪んだ満面の笑顔で、

「ハァーハッハッハッ! ぼくぅの研究の成果だよォ!! 今までの合成獣と同じと思わない事だねぇええぇ!!!」

 高笑い、
「因みに、今ので城下の「一部の兵たち」も合成獣化したからねぇ♪ さぁどぅ世界を護る、勇者諸君! ハァーハッハッハッ!」
 からかいを交えた狂気染みた笑いと共に、謁見の間から駆け出して行ってしまった。
 結果を見届ける事も無く。
 思い改めさせようと、

『まっ、待ってハクさぁあぁん!』

 懸命に名を呼ぶラディッシュ。
 しかし「その想い」は、グルリと周囲を取り囲むキマイラの群れの中で埋もれて届かず、チィックウィードを背に守るターナップが苦虫を噛み潰したよう顔して、

「あぁんのヤロォ! テメェ一人でとっとと逃げやがったァ!」

 唾棄する様に吐き捨てたが、ドロプウォートは違和感を持った。
(天世に対して蜂起しておいて、彼に逃げ場など「この世界に」ありますの? いえ、それ以前に、彼の歪んだ性格を鑑みれば……)
 そして浮かんだのは、

『地下ですわァ!』
((((((ッ!))))))

 瞬時に意味を悟り、驚愕するラディッシュ達。
 ハクサンの企みが「蜂起」などと生易しい物ではなく、開発中と言っていた兵器を使った「天世の壊滅」であるのに気付き。
 するとニプル、パストリス、カドウィード、ターナップ、チィックウィードがアイコンタクトを交わし合い、同意の表情で頷き合うと、

『ラディ! ドロプッ!』
「「?!」」
「ここはウチらに任せて二人はアイツを追うのさァ!」
「「え!?」」

 ニプル達からの申し出にギョッとする二人。
 ハクサンの自信作であるキマイラの一体一体から感じるチカラは、これまで遭遇した合成獣たちの比ではなかったから。
「「…………」」
 惑う二人。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。 十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に… 無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。 周囲は国王の命令だと我慢する日々。 だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に… 行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる… 「おぉー聖女様ぁ」 眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた… タイトル変更しました 召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

処理中です...