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第四章
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全てを覆い隠す様な夜闇の雨が降りしきる中――
町角で行く手を塞ぐ「見張り役の兵」達をソレと知らず、
『邪魔だぁカス共ォどきぃやがれぇぇええぇぇ!!!』
先陣切って殴り飛ばしたのは、血相を変えたターナップ。
勢いそのまま駆け抜け、続けてラディッシュ達も残りの兵たちを、有無も言わせず蹴倒し、
「雨のせいで到着が大分遅れちゃったよぉ!」
「二人とも無事で居てぇですわァ!」
町の更なる奥へと雪崩込んだ。
彼ら、彼女たちはアルブル国における「ハクサンの謎の知名度」をフル活用し、馬車を、早馬の乗り継ぎを、次々と繰り返し、キーメとスプライツより先行して王都アルブレスに入り、二人を待ち受けるつもりであった。
しかし雨によるぬかるみに足を取られ、想定以上に到着が遅れてしまい、
『カデュフィーユ邸はドコですのォ!』
加えて肝心の「屋敷の場所の情報」が、今更ながらボンヤリ。
ドロプウォートは焦りから金切り声を上げた。
普通に考えれば、いかに雨と泥に阻まれ到着が遅れようが、幼子の足と馬車の足の速さは比べるも無く「先行して到着した」と考えるが妥当であるが、ラディッシュ達は一瞬にして姿を消した二人の背に、確信めいた不安を抱いていたのであった。
陽先ず先例のハクサンの発言に従い、町の中心を目指して疾走していると、ラディッシュが目に掛かる雨を疎ましそうに払いながら、
「蹴倒したさっきの兵隊さん達に聞けば良かったんじゃ……」
しかし後の祭り。
「「「「「「…………」」」」」」
通り過ぎた遥か後ろには、意識を失い地面に転がる複数名の兵士の姿が。
急くあまり、行く手を塞いだ兵士たちを、有無を言わせず殴り、蹴り倒しまかり通ったが、今になって思えば「相手が誰」で「何をしていたか」も知らず、伸してしまった軽率さを誤魔化す様に、
『ふっ、二人は何処ですのぉ!』
ドロプウォートが苛立った声を再び上げるとハクサンが、
「屋敷なら、あの先を左に曲がった少し先にあるよぉん♪」
危機感も、緊張感も無く指示を出し、
「「「「「「…………」」」」」」
何故彼が「そこまで屋敷の位置を正確に把握している」のか、何故彼が二つの幼い命の危機を前に「そこまで平静で居られる」のか、ラディッシュ達は疑問、不快感を抱いたが、今はそれを問い詰めている場合ではなかった。
二人の姿が屋敷に無ければ「次に探すべきか手掛かり」は皆無であり、屋敷に居たとしても命にかかわる危険が迫っていたから。
『とにかく急ぎますわよぉ!』
ドロプウォート達は強まる雨の中を速度を上げて駆け抜け、指示された角を曲がり、その先で彼ら、彼女たちが目にしたのは、
「「「「「「ッ!!!」」」」」」
雨と血が入り混じった泥水の中で、指先だけが触れ合った状態で息絶えた、血まみれのキーメとスプライツの変わり果てた姿であった。
倒壊寸前の屋敷の前で、降り止まぬ雨に容赦なく打たれながら。
『『『『『『キーメぇ! スプライツッ!!!』』』』』』
半狂乱で駆け寄るドロプウォートとラディッシュ達。
「幼子相手に何て事をしやがんだァアァ!」
ターナップは降りしきる雨の中、急ぎ二人に手をかざし、
≪天世より授かりし恩恵を以て我は問う!≫
その身を白銀の輝きに包み、
≪天診(てんしん)!≫
横たえる二人をも包み込むと、幼い二つの体を同時検診し、
『息がまだあるっスッ!』
「「「「「「!」」」」」」
「二人とも、これだけの手傷を追いながら全て致命傷を避けてるっス!」
小さな安堵を見せるラディッシュ達ではあったが、その安堵さえ一瞬にして覆す、
「ただ出血量がハンパなくヤベェス!」
緊迫を纏った声に、危機は去った訳では無いのを知り、
『早く治癒を、ですわァ!』
「応急はしてるとこっス、ドロプの姉さァん! でもぉここじゃ治癒は無理っス! 雨除けが、」
すかさずラディッシュは焼けて半壊した「カデュフィーユ邸」を指差し、
「屋敷の中は!」
するとハクサンが、誰の立ち位置で言っているのか不満を露わ、
「えぇ~あんな、いつ崩れるか分からない所に入る、」
『二人にとってココに居るよりマシだろうさァ!』
ニプルがダルそうな物言いを斬って捨て、
「でぇすでぇすぅ! 途中で崩れて来ても、ボク達が守れば良いのでぇす!」
パストリスが力説し、
「その通りだよ! もとい、そぅでぇす!」
カドウィードも大きく頷き、
「自分、もとい、アタシ達のチカラを以てすれば可能で、私達のチカラは「守るべき者を護る」為にあるモノだ! です!」
未だ定まらぬ言葉遣いの提言に、
「えぇ~?!」
ハクサンは、なお不満を露わにしたが、堪り兼ねたドロプウォートが、
『時間の無駄ですわァ!』
利己的勝手と話を打ち切り、
「ラディとパストは比較的安全と思われる場所の確保を!」
頷く二人。
「ニプルは私と一緒に二人を運ぶ「担架代わり」を探しに!」
ニプルも頷き、
「ウィードは傷を負った二人に、少しでも雨が当たらないようにしていて下さいですわァ!」
カドウィードも頷くと、ラディッシュ達は瀕死の二人と治療中のターナップ、そして雨除け役のカドウィードをその場に残し、一斉に散った。
ターナップが二人の治療に神経を集中するさ中、
『ウィクシュ!』
平然としたクシャミをするハクサン。
「こんな雨の中にいつまでも居たら、繊細なぼくぁ風を引いちゃいそうだよぉ~」
愚痴をこぼす言動に、
「!」
更なる怒りを覚えるカドウィード。
今にも消えそうな二つの命を守る為、寝床用に持ち歩いている一枚布を、身を挺して広げる彼女は雨に打たれながら、
『だからと言って死にはしないでしょ!』
涙ながらに激昂し、
「理不尽に斬られぇ、生死を彷徨う幼き二つの命を前にぃ貴方はよくそんな物言いが出来るわねぇ! 二人は、明日の朝陽を見る事さえ叶わないかも知れないと言うのにィ!」
それでもハクサンは、
「なぁ~んか、ぼくぁ悪者みたいになってるんでぇすけどぉ」
むしろ気分を害した様子に、相手が「百人の天世人」と言う事も忘れ、
『あっ、貴方と言う人はァアアァ!』
怒り心頭のカドウィード。
怒髪天を衝くが如くに怒鳴り散らそうかと言う刹那、
((うっ、う……))
幼き二つの微かな呻き声に、
「ッ!」
今は静かにしなければと思い改め、
「クッ……」
悔し気に奥歯を噛んだ。
町角で行く手を塞ぐ「見張り役の兵」達をソレと知らず、
『邪魔だぁカス共ォどきぃやがれぇぇええぇぇ!!!』
先陣切って殴り飛ばしたのは、血相を変えたターナップ。
勢いそのまま駆け抜け、続けてラディッシュ達も残りの兵たちを、有無も言わせず蹴倒し、
「雨のせいで到着が大分遅れちゃったよぉ!」
「二人とも無事で居てぇですわァ!」
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彼ら、彼女たちはアルブル国における「ハクサンの謎の知名度」をフル活用し、馬車を、早馬の乗り継ぎを、次々と繰り返し、キーメとスプライツより先行して王都アルブレスに入り、二人を待ち受けるつもりであった。
しかし雨によるぬかるみに足を取られ、想定以上に到着が遅れてしまい、
『カデュフィーユ邸はドコですのォ!』
加えて肝心の「屋敷の場所の情報」が、今更ながらボンヤリ。
ドロプウォートは焦りから金切り声を上げた。
普通に考えれば、いかに雨と泥に阻まれ到着が遅れようが、幼子の足と馬車の足の速さは比べるも無く「先行して到着した」と考えるが妥当であるが、ラディッシュ達は一瞬にして姿を消した二人の背に、確信めいた不安を抱いていたのであった。
陽先ず先例のハクサンの発言に従い、町の中心を目指して疾走していると、ラディッシュが目に掛かる雨を疎ましそうに払いながら、
「蹴倒したさっきの兵隊さん達に聞けば良かったんじゃ……」
しかし後の祭り。
「「「「「「…………」」」」」」
通り過ぎた遥か後ろには、意識を失い地面に転がる複数名の兵士の姿が。
急くあまり、行く手を塞いだ兵士たちを、有無を言わせず殴り、蹴り倒しまかり通ったが、今になって思えば「相手が誰」で「何をしていたか」も知らず、伸してしまった軽率さを誤魔化す様に、
『ふっ、二人は何処ですのぉ!』
ドロプウォートが苛立った声を再び上げるとハクサンが、
「屋敷なら、あの先を左に曲がった少し先にあるよぉん♪」
危機感も、緊張感も無く指示を出し、
「「「「「「…………」」」」」」
何故彼が「そこまで屋敷の位置を正確に把握している」のか、何故彼が二つの幼い命の危機を前に「そこまで平静で居られる」のか、ラディッシュ達は疑問、不快感を抱いたが、今はそれを問い詰めている場合ではなかった。
二人の姿が屋敷に無ければ「次に探すべきか手掛かり」は皆無であり、屋敷に居たとしても命にかかわる危険が迫っていたから。
『とにかく急ぎますわよぉ!』
ドロプウォート達は強まる雨の中を速度を上げて駆け抜け、指示された角を曲がり、その先で彼ら、彼女たちが目にしたのは、
「「「「「「ッ!!!」」」」」」
雨と血が入り混じった泥水の中で、指先だけが触れ合った状態で息絶えた、血まみれのキーメとスプライツの変わり果てた姿であった。
倒壊寸前の屋敷の前で、降り止まぬ雨に容赦なく打たれながら。
『『『『『『キーメぇ! スプライツッ!!!』』』』』』
半狂乱で駆け寄るドロプウォートとラディッシュ達。
「幼子相手に何て事をしやがんだァアァ!」
ターナップは降りしきる雨の中、急ぎ二人に手をかざし、
≪天世より授かりし恩恵を以て我は問う!≫
その身を白銀の輝きに包み、
≪天診(てんしん)!≫
横たえる二人をも包み込むと、幼い二つの体を同時検診し、
『息がまだあるっスッ!』
「「「「「「!」」」」」」
「二人とも、これだけの手傷を追いながら全て致命傷を避けてるっス!」
小さな安堵を見せるラディッシュ達ではあったが、その安堵さえ一瞬にして覆す、
「ただ出血量がハンパなくヤベェス!」
緊迫を纏った声に、危機は去った訳では無いのを知り、
『早く治癒を、ですわァ!』
「応急はしてるとこっス、ドロプの姉さァん! でもぉここじゃ治癒は無理っス! 雨除けが、」
すかさずラディッシュは焼けて半壊した「カデュフィーユ邸」を指差し、
「屋敷の中は!」
するとハクサンが、誰の立ち位置で言っているのか不満を露わ、
「えぇ~あんな、いつ崩れるか分からない所に入る、」
『二人にとってココに居るよりマシだろうさァ!』
ニプルがダルそうな物言いを斬って捨て、
「でぇすでぇすぅ! 途中で崩れて来ても、ボク達が守れば良いのでぇす!」
パストリスが力説し、
「その通りだよ! もとい、そぅでぇす!」
カドウィードも大きく頷き、
「自分、もとい、アタシ達のチカラを以てすれば可能で、私達のチカラは「守るべき者を護る」為にあるモノだ! です!」
未だ定まらぬ言葉遣いの提言に、
「えぇ~?!」
ハクサンは、なお不満を露わにしたが、堪り兼ねたドロプウォートが、
『時間の無駄ですわァ!』
利己的勝手と話を打ち切り、
「ラディとパストは比較的安全と思われる場所の確保を!」
頷く二人。
「ニプルは私と一緒に二人を運ぶ「担架代わり」を探しに!」
ニプルも頷き、
「ウィードは傷を負った二人に、少しでも雨が当たらないようにしていて下さいですわァ!」
カドウィードも頷くと、ラディッシュ達は瀕死の二人と治療中のターナップ、そして雨除け役のカドウィードをその場に残し、一斉に散った。
ターナップが二人の治療に神経を集中するさ中、
『ウィクシュ!』
平然としたクシャミをするハクサン。
「こんな雨の中にいつまでも居たら、繊細なぼくぁ風を引いちゃいそうだよぉ~」
愚痴をこぼす言動に、
「!」
更なる怒りを覚えるカドウィード。
今にも消えそうな二つの命を守る為、寝床用に持ち歩いている一枚布を、身を挺して広げる彼女は雨に打たれながら、
『だからと言って死にはしないでしょ!』
涙ながらに激昂し、
「理不尽に斬られぇ、生死を彷徨う幼き二つの命を前にぃ貴方はよくそんな物言いが出来るわねぇ! 二人は、明日の朝陽を見る事さえ叶わないかも知れないと言うのにィ!」
それでもハクサンは、
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むしろ気分を害した様子に、相手が「百人の天世人」と言う事も忘れ、
『あっ、貴方と言う人はァアアァ!』
怒り心頭のカドウィード。
怒髪天を衝くが如くに怒鳴り散らそうかと言う刹那、
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