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第三章

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 時は現在に戻り――

 つねられた手の甲を、からかい交じりの笑みを浮かべながら、

 『酷いなぁ~ウィードちゃん』

 痛そうに擦るハクサン。
 すると彼女は、

「アタシは、もぅ「売約済み」なの!」

 指で突いて彼を押し退け、
「だから気安く触るんじゃないわよ!」
 ラディッシュに背中でしな垂れかかり、

『ねぇ、ラディ♪』

 ハクサンの「特訓の成果」と言えば聞こえは良いが、
「あは、あはははは……」
 笑うしかないラディッシュ。
 プルプレア時代からの、あまりの変わり様と、

(((…………)))

 女子三人からの、背中に刺さる冷たいジト目に。
 その様子にハクサンは、

『不公平だ不公平だぁ!』

 ムスッとしながら、
「両手に花どころか、抱えられないくらいの独り占めなんてぇ!」
 地団駄踏み踏みプンスカしたが、当の本人ラディッシュは他意無く、まるで彼を諭すように、
「ハクさぁん、そんな事を言ったら、みんなに失礼だよぉ」
 苦言を呈し、

「みんな、ヘタレ勇者の僕を支える為に、仲間として寄り添ってくれているんだからぁ」

 未だ「モテ男」の自覚無しに、
「コレだもぉん」
 ハクサン、呆れ顔。

 仲間と言われた女子組も、横一列の、同一ラインに立てている現状に胸中で安堵こそしたが、誰一人「特別な存在」と見られていない事実に、
((((…………))))
 抱いた感情は複雑であった。
 そんな中、
「タープくぅんもぉ、不公平だと思うだしょ?!」
 同意を求めるハクサンに、

「タープくんって、呼ぶんじゃねぇ」

 ターナップは釘を刺した上で、彼の不平を、不満を、鼻先でフッと小さく笑い飛ばし、
「俺は別にぃ」
 パストリスをチラ見。
 見られたパストリスも照れ臭そうに「あはは」と笑い返すと、

『かぁ~やってらんなぁいよぉ!』
「ったりめぇだ! オメェなんぞと「兄貴と俺」を一緒にすんなぁ! この「種蒔き男」ぉ!」
「何おう! この「一途男」ぉ!」

 角を突き合わせる二人を、半笑いのラディッシュは「まぁまぁ」と宥めながら、
「そろそろ行こうよぉ♪」
 未だ見ぬ東の町を視界に収め、

「最終目的地のアルブル国に!」

 再び歩き始めた。
 新たな仲間を加えた七人の旅路は、騒乱の地「アルブル国」へと移る。
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