ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

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第三章

3-32

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 奮戦するラディッシュ達――

 力量の劣るプルプレアはラディッシュ達の足を引っ張らない様、住人たちの避難誘導に死力を尽くしていたが、彼の言っていた通り、村と言っても規模は町に等しく、人口もそれに比例して多く、いかに六人が有能であっても全てを守り切れるものではなく、また安全な場所への誘導も容易ではなかった。
 その様な「混乱の渦」と化した村の惨状を、

『ケェーケッケッ!』

 高台から下卑た高笑いで見下ろすのは、スキンヘッドが特徴的なカリステジア。
「(本物の)アルブリソの使者を始末してなりすましてぇ、軽ぅ~く(ビフィーダを)煽っただけでぇこの惨劇だぁ!」
 愉快そうに手を叩きながら、
「アレ(スパイダマグ)の指示ってのがぁ、ちぃ~とばか気には入らねぇがぁ、これだから「人の心」を操るのは止められねぇ♪」
 心を闇に染めた、歪んだ満面の笑顔を見せていた、その同時刻、

『ここまでするなどぉワシ等は聞いておらぬぞぉおぉ!』

 頭の天辺から火の出そうな勢いで激昂するのは白いローブを羽織った、天世の元老院の御歴歴の一人。
「まったくだ! 我らとアヤツ(カリステジア)の繋がりがまかり知られれば、中世人の天世に対する信仰が揺らぎかねぬのだぞぉ!」
「この始末を、どうつけるつもりなのじゃ!」
 次々と、矢継ぎ早に、代わる代わる怒りをぶつけた先には、ただ黙って跪く元老院親衛隊隊長スパイダマグの姿が。
 彼は、元老院の御歴歴の苦言がひとしきり降り注いだ間隙を縫い、

「何を、その様に心配しておられるのか?」
『『『『『『『『『『んなっ!?』』』』』』』』』』

 反省の様子も見せない姿に驚き、慄くと、彼はさも当然と言った口振りで、
「いつぞや述べました通り、全ては七草の一人のカリステジアが勝手にした事ぉ。何の問題がありましょう? おありでしたら、早速に詰め腹を切らせ、処分すれば良いだけの話なのでは?」
 すっと立ち上がり、
「御用件がソレ(程度)でしたら、自分はこれで」
「何だとぉ!」
「話はまだぁ!」
 怒りを以て止めようとする一同を前に、スパイダマグは顔を隠した一枚布の下に何食わぬ表情を浮かべ、

「これでも隊長の身ゆえ、多忙なのですよ」

 小さく笑って軽く頭を下げ、部屋から出て行った。
 去った背に、
「おっ、おのれぇ脳筋がァ!」
「過分な知恵を付けおってぇ!」
「今に見ておれぇ!」
 まるで負け犬の遠吠えの如き「捨て台詞」であったが、彼はまだ部屋の前に居た。
 中から聞こえた御歴歴の癇癪に、
(クックックッ。何と心地良き、さえずりかな。ハクサンと七草(カリステジア)が、人の心を操り楽しむ気持ちが、分かる気がする)
 小馬鹿にした笑みを口元に浮かべて歩き始めると、

『飼い犬が飼い主に噛みつくとはぁ正にこの事だねぇ♪』

(!?)

 そこは柱に寄りかかる、白ローブ姿のハクサンが。
「これはこれは「序列一位」様。御機嫌麗しゅう」
 恭しくも、半笑いで頭を小さく下げ、
「それに、貴方様には言われたくありませんねぇ」
 スパイダマグは皮肉を交えた笑みを返し、
「おぉおぉ「イエスマン」が言う様になったねぇ」
 ヤレヤレ笑いを浮かべる彼を一枚布越しにチラリと見て、
「自分には「手ごろな手本」が、近くにいましたのでぇ」
 ハクサンを真似ただけであるのを、持って回った嫌味で言うと、笑い顔のまま黙って見つめるハクサンをフッと小さく笑い、
「それでは自分はこれにて」
 軽く会釈をし、その場から去って行った。
 次第に遠ざかる「余裕を見せつける背」を、
「…………」
 彼は異様に変わらぬ笑顔で見送りながら、
(キミ達(カリステジアとスパイダマグ)のやり方はさ……)
 浮かべていた笑みを、
 
(ぼくぅと違ってぇ美しくないんだよぉ♪)

 深い闇を感じさせる笑みへと変えて行った。
 
 
 
 天世の中枢が歪みを見せていた頃――

 阿鼻驚嘆に包まれる村を、カリステジアが見下ろしていた高台から見下ろす、黒ローブの何者か。
 フード部分で素顔を隠し、地世の導師を思い出させる姿の何者かは、人を近づけさせぬ風貌とは相反し、頭の天辺や両肩に野生の小鳥たちがとまり、穏やかなさえずりを奏でていた。

 野生動物たちに、身の危険を感じさせない存在感。

 異質を感じさせるその人物は、ラディッシュ達の奮闘が虚しく見える地獄絵図に、短いため息を吐き、
「新王が気に掛ける「こっちの世界」に久々来てみればぁ」
 発せられた声は、女性的であり、男性的でもあり、小鳥たちに負けず劣らずの美声であったが、
「相も変わらず……」
 言葉尻をすぼめると、

((((((!))))))

 何かを察し、一斉に逃げ出す小鳥たち。
「いやホントぉ……」
 美しかった声色は、

『度し難く、何の矜持も感じられない「反吐が出る世界」だァア』

 闇を抱えた物へと豹変していき、右手には剣先から鮮血の滴る長剣が、そして足元には、自らの血の海に横たわる「絶命したカリステジア」の亡骸が。

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