187 / 706
第三章
3-14
しおりを挟む
森が夜闇に包まれ――
『夜はまだ冷えるから、今日は根菜類の煮物にしてみたよ♪』
ラディッシュはパストリスと共に料理を鍋からオタマで取り分け、割り振られた仕事を終え集まって来た仲間たちに手渡すと、受け取ったプルプレアが、からかいを交えた笑みで以て、
「へぇ~一丁前に、ニオイは、美味そうじゃないか♪」
その笑みに、
(((((余裕で居られるのは今のウチだけぇ)))))
密かに悪い顔するドロプウォート、パストリス、ターナップ、ニプル、ハクサン。
しかし無自覚実行犯のラディッシュだけは他意無く、
「口に合えば良いんだけどぉ」
謙遜気味に、笑って見せた。
料理に関しては好評を得ている手応えを感じていたが、それでも「自分に関する事柄」には、自信を持つ事が出来なかったから。
及び腰な物言いに対し、未だ余裕の笑みを浮かべるプルプレアは、受け取ったお椀の中の匂いを嗅ぎ、
(まぁ、そこそこはウマイかも知れないけどねぇ)
「さぁてぇ」
(味はぁどんなモンかぁ?)
ドロプウォート達の「悪い笑顔の上目遣い」に気付く事無く、一口パクリ。
食べた途端、
『ッ!!!』
激しい衝撃を受けるプルプレア。
後に知人に、こう語る。
≪自分は、あの食事を口にしたせいで「王の下を離れても良い」と、思ってしまった≫
黙したまま、お椀を持ったまま、完全に固まるプルプレア。
息を呑むラディッシュは、顔色を窺う様に、
「ど、どぅかなぁ……?」
恐る恐る尋ねると、
「…………」
無表情のプルプレアは、お椀を丁寧に傍らに置いたうえで、おもむろにラディッシュの手を両手で握り、
「あ、あのぉ……プルプレア、さぁん?」
ラディッシュが困惑の笑みを見せると表情を一変、
『一生自分の為に飯を作ってくれぇえぇ!』
取り憑かれた様な満面の笑顔で迫ったが、その様な暴挙をドロプウォート達が許す筈も無く、
『『『『『みんなのラディ(ですわ・でぇす・だ・さぁ・だよ)!』』』』』
ハリセンで一斉ツッコミ。
嬉しくも、苦笑うしかないラディッシュと共に夜は更けて行った。
一夜明け街道を進むラディッシュ達――
黙々と先導するプルプレアの背に違和感を覚えたラディッシュが、
「あ、あのぉ……プルプレアさん……」
おずおずと、
「もしかしてだけど……何か気になる事でも……あるの?」
問い掛けに、やはり何かしらの懸念があるのか、
「…………」
歩みは止めず、小さく下を向いた。
しかし「語るべき」と思い至ったらしく、おもむろ顔を上げ、
「この国は「チカラが全て」なのは話したと思うが、
((((((はい。分かっていますケドぉ?))))))
「その反面、打ち解ければ家族同等の付き合いをしてくれる良い風土があるんだが……よそ者を極度に嫌う、排他的な面もあってだな……その……」
((((((?))))))
「いきなり村に押しかけて、宿を取らせてくれるかどうか……正直不安があるんだ」
((((((え?!))))))
ギョッとするラディッシュ達。
また野宿なのかと思う半面、
「そんなので「観光業」とか、成り立つのぉ?」
ラディッシュの苦笑を交えた素朴な疑問に、笑顔のプルプレアは、
「そこは、ホラぁ」
握り拳を見せ、
≪拳で分かり合う≫
((((((そんな観光地は嫌だ))))))
心の底からツッコムと、街道から外れた森の奥から、
『助けてくれぇーーーーーー!』
唐突に男性の悲鳴が。
「「「「「「ッ!」」」」」」
反射的に駆け出すラディッシュ達と、声には即応したものの、
「男かぁ~」
ため息交じり、仲間たちが全員向かったから、渋々重々しく走り出すハクサン。
『夜はまだ冷えるから、今日は根菜類の煮物にしてみたよ♪』
ラディッシュはパストリスと共に料理を鍋からオタマで取り分け、割り振られた仕事を終え集まって来た仲間たちに手渡すと、受け取ったプルプレアが、からかいを交えた笑みで以て、
「へぇ~一丁前に、ニオイは、美味そうじゃないか♪」
その笑みに、
(((((余裕で居られるのは今のウチだけぇ)))))
密かに悪い顔するドロプウォート、パストリス、ターナップ、ニプル、ハクサン。
しかし無自覚実行犯のラディッシュだけは他意無く、
「口に合えば良いんだけどぉ」
謙遜気味に、笑って見せた。
料理に関しては好評を得ている手応えを感じていたが、それでも「自分に関する事柄」には、自信を持つ事が出来なかったから。
及び腰な物言いに対し、未だ余裕の笑みを浮かべるプルプレアは、受け取ったお椀の中の匂いを嗅ぎ、
(まぁ、そこそこはウマイかも知れないけどねぇ)
「さぁてぇ」
(味はぁどんなモンかぁ?)
ドロプウォート達の「悪い笑顔の上目遣い」に気付く事無く、一口パクリ。
食べた途端、
『ッ!!!』
激しい衝撃を受けるプルプレア。
後に知人に、こう語る。
≪自分は、あの食事を口にしたせいで「王の下を離れても良い」と、思ってしまった≫
黙したまま、お椀を持ったまま、完全に固まるプルプレア。
息を呑むラディッシュは、顔色を窺う様に、
「ど、どぅかなぁ……?」
恐る恐る尋ねると、
「…………」
無表情のプルプレアは、お椀を丁寧に傍らに置いたうえで、おもむろにラディッシュの手を両手で握り、
「あ、あのぉ……プルプレア、さぁん?」
ラディッシュが困惑の笑みを見せると表情を一変、
『一生自分の為に飯を作ってくれぇえぇ!』
取り憑かれた様な満面の笑顔で迫ったが、その様な暴挙をドロプウォート達が許す筈も無く、
『『『『『みんなのラディ(ですわ・でぇす・だ・さぁ・だよ)!』』』』』
ハリセンで一斉ツッコミ。
嬉しくも、苦笑うしかないラディッシュと共に夜は更けて行った。
一夜明け街道を進むラディッシュ達――
黙々と先導するプルプレアの背に違和感を覚えたラディッシュが、
「あ、あのぉ……プルプレアさん……」
おずおずと、
「もしかしてだけど……何か気になる事でも……あるの?」
問い掛けに、やはり何かしらの懸念があるのか、
「…………」
歩みは止めず、小さく下を向いた。
しかし「語るべき」と思い至ったらしく、おもむろ顔を上げ、
「この国は「チカラが全て」なのは話したと思うが、
((((((はい。分かっていますケドぉ?))))))
「その反面、打ち解ければ家族同等の付き合いをしてくれる良い風土があるんだが……よそ者を極度に嫌う、排他的な面もあってだな……その……」
((((((?))))))
「いきなり村に押しかけて、宿を取らせてくれるかどうか……正直不安があるんだ」
((((((え?!))))))
ギョッとするラディッシュ達。
また野宿なのかと思う半面、
「そんなので「観光業」とか、成り立つのぉ?」
ラディッシュの苦笑を交えた素朴な疑問に、笑顔のプルプレアは、
「そこは、ホラぁ」
握り拳を見せ、
≪拳で分かり合う≫
((((((そんな観光地は嫌だ))))))
心の底からツッコムと、街道から外れた森の奥から、
『助けてくれぇーーーーーー!』
唐突に男性の悲鳴が。
「「「「「「ッ!」」」」」」
反射的に駆け出すラディッシュ達と、声には即応したものの、
「男かぁ~」
ため息交じり、仲間たちが全員向かったから、渋々重々しく走り出すハクサン。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
僕の従魔は恐ろしく強いようです。
緋沙下
ファンタジー
僕は生まれつき体が弱かった。物心ついた頃から僕の世界は病院の中の一室だった。
僕は治ることなく亡くなってしまった。
心配だったのは、いつも明るく無理をして笑うお母さん達の事だった。
そんな僕に、弟と妹を授ける代わりに別の世界に行って見ないか?という提案がもたらされた。
そこで勇者になるわけでもなく、強いステータスも持たない僕が出会った従魔の女の子
処女作なのでご迷惑かける場面が多数存在するかもしれません。気になる点はご報告いただければ幸いです。
---------------------------------------------------------------------------------------
プロローグと小説の内容を一部変更いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる