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第三章

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 森が夜闇に包まれ――
 
『夜はまだ冷えるから、今日は根菜類の煮物にしてみたよ♪』

 ラディッシュはパストリスと共に料理を鍋からオタマで取り分け、割り振られた仕事を終え集まって来た仲間たちに手渡すと、受け取ったプルプレアが、からかいを交えた笑みで以て、

「へぇ~一丁前に、ニオイは、美味そうじゃないか♪」

 その笑みに、
(((((余裕で居られるのは今のウチだけぇ)))))
 密かに悪い顔するドロプウォート、パストリス、ターナップ、ニプル、ハクサン。
 しかし無自覚実行犯のラディッシュだけは他意無く、
「口に合えば良いんだけどぉ」
 謙遜気味に、笑って見せた。
 料理に関しては好評を得ている手応えを感じていたが、それでも「自分に関する事柄」には、自信を持つ事が出来なかったから。

 及び腰な物言いに対し、未だ余裕の笑みを浮かべるプルプレアは、受け取ったお椀の中の匂いを嗅ぎ、
(まぁ、そこそこはウマイかも知れないけどねぇ)
「さぁてぇ」
(味はぁどんなモンかぁ?)
 ドロプウォート達の「悪い笑顔の上目遣い」に気付く事無く、一口パクリ。
 食べた途端、

『ッ!!!』

 激しい衝撃を受けるプルプレア。
 後に知人に、こう語る。

≪自分は、あの食事を口にしたせいで「王の下を離れても良い」と、思ってしまった≫

 黙したまま、お椀を持ったまま、完全に固まるプルプレア。
 息を呑むラディッシュは、顔色を窺う様に、
「ど、どぅかなぁ……?」
 恐る恐る尋ねると、
「…………」
 無表情のプルプレアは、お椀を丁寧に傍らに置いたうえで、おもむろにラディッシュの手を両手で握り、
「あ、あのぉ……プルプレア、さぁん?」
 ラディッシュが困惑の笑みを見せると表情を一変、
 
『一生自分の為に飯を作ってくれぇえぇ!』

 取り憑かれた様な満面の笑顔で迫ったが、その様な暴挙をドロプウォート達が許す筈も無く、

『『『『『みんなのラディ(ですわ・でぇす・だ・さぁ・だよ)!』』』』』

 ハリセンで一斉ツッコミ。
 嬉しくも、苦笑うしかないラディッシュと共に夜は更けて行った。




 一夜明け街道を進むラディッシュ達――

 黙々と先導するプルプレアの背に違和感を覚えたラディッシュが、
「あ、あのぉ……プルプレアさん……」
 おずおずと、
「もしかしてだけど……何か気になる事でも……あるの?」
 問い掛けに、やはり何かしらの懸念があるのか、

「…………」

 歩みは止めず、小さく下を向いた。
 しかし「語るべき」と思い至ったらしく、おもむろ顔を上げ、
「この国は「チカラが全て」なのは話したと思うが、
((((((はい。分かっていますケドぉ?))))))
「その反面、打ち解ければ家族同等の付き合いをしてくれる良い風土があるんだが……よそ者を極度に嫌う、排他的な面もあってだな……その……」
((((((?))))))
「いきなり村に押しかけて、宿を取らせてくれるかどうか……正直不安があるんだ」
((((((え?!))))))
 ギョッとするラディッシュ達。
 また野宿なのかと思う半面、
「そんなので「観光業」とか、成り立つのぉ?」
 ラディッシュの苦笑を交えた素朴な疑問に、笑顔のプルプレアは、
「そこは、ホラぁ」
 握り拳を見せ、

≪拳で分かり合う≫

((((((そんな観光地は嫌だ))))))

 心の底からツッコムと、街道から外れた森の奥から、

『助けてくれぇーーーーーー!』

 唐突に男性の悲鳴が。

「「「「「「ッ!」」」」」」

 反射的に駆け出すラディッシュ達と、声には即応したものの、
「男かぁ~」
 ため息交じり、仲間たちが全員向かったから、渋々重々しく走り出すハクサン。
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