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第二章

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 やがて箝口令を敷き終えたリブロンが白銀の光を収めると、妖艶な中にも些か緊張した面持ちのフルールが、嬉しそうな顔するハクサンの下に歩み寄り、
「ハクや」
「ん?」
「ヌシが集めし、この面々。もしや、」
 今も本気で「中世解放」を考えているのか問おうとすると、察したハクサンは笑みを浮かべたまま、ジェスチャーで二の句を制し、
「それを口にするのは禁忌だよ♪」

 ウインクまでして見せると、未だ戸惑いの渦中のラディッシュ達の下へ駆けて行き、何やら「いつもの調子の軽口」を叩いて笑いを誘っていた。

 その姿に、
(昔と変わらぬ、夢見がちな男じゃなぁ……)
 フルールは小さく笑い、
(ラディッシュにドロプウォート、パストリスにターナップ……そこに加えてニプル……)
 彼が集めた顔ぶれを改めて見回し、

「…………」
(ホンに、それだけでありんしょうか……)

 微かな胸騒ぎも感じていた。
 すると、

『陛下?』

 異変を察したリブロンの不安げな声に、
(!)
 平静を装い、いつも通りの妖艶な笑みで、
「なんじゃ♪」
 静かに振り返るフルール。
 その笑みに、
「……い、いえ、申し訳ございません」
(私の気にし過ぎ?)
 リブロンは思い惑ったが、それ以上に彼女は改めて思い知った。
 
≪ラディッシュが「新たな百人の天世人」になりうる存在であると言う事実に≫

 そう理解すると、生真面目過ぎる彼女には、自身が今日まで彼に行って来た「所業の数々」が「天世人(※ハクサンを除く)に対する無礼行為」に思えて来て、
 
(私は教育と言いながら、実は「とんでもない不敬」を働いていたのではないでしょうか!)

 一気に青ざめると、

『ラディッシュ様ぁ!』

 突如ラディッシュの下に跪き、
「さ、様ぁ?!」
 何事かと戸惑う彼を尻目に、
「今日までの無礼の数々ぅ何とお詫びを申し上げれば良いのかぁ!」
 頭を下げると、

「かっ、かくなる上は!」

 羞恥で顔を真っ赤に染め上げ、
「い、未だ穢れを知らぬ「この身」で以てぇ……」
 上着を脱ぎ始めて操を差し出そうとし、ラディッシュはドロプウォート、パストリス、ニプルの刺すような眼差しを背で感じながら、

「ちょ、ちょちょちょちょちょっと待ってぇ、リブロンさぁん!!!」

 慌てに慌て、
「あ、アレ(スパルタ教育)は僕が不甲斐無かったからであってぇ! 僕の為にしてくれた事な訳であってぇ!」
 懸命にフォローしていると、

『あげるって言うんだから、有難く、美味しく、頂いちゃえば良いのに?』

 羨ましそうに横槍を入れるハクサン。
「ちょ、ハクさぁん!」
 ラディッシュは困惑笑いでツッコミを入れ、
「つっ、つまり! リブロンさんのお陰で僕は「初めてチカラが発現」出来た訳でぇ!」
 気遣いまで見せると、
(ラディッシュ様……)
 感動したリブロンが涙顔を上げたが、

『発現したのは、ぼくぉ「助言の後」だよねぇ』

 追い打ちをかけるハクサンの鋭い一刺しに、
「うっ!」
 再び顔を突っ伏し、
「申し訳ございませぇんでぇすぅうぅぅうぅ!!!」
「あぁもぅハクさぁんは黙っててぇ! 話がややこしくなるぅからぁあぁ!」
 苦笑のラディッシュは苦言を呈し、
「で、でも実際の話で、進歩の無かった僕に呆れもせず、リブロンさんも含めてみんなが付き合ってくれたから「今日の発現につながった」と僕は思う訳でぇ」
 笑顔を、涙ながらに平伏す彼女に投げかけ、
「だから、あまり自分を卑下しないで、リブロンさぁん♪」
(ラディッシュ様ぁ……)
 救われた思いで顔を上げた途端、

『!!!』

 ラディッシュがスキル【イケメンスマイルフラッシュ】を無自覚発動。
 心が弱っていた乙女に強烈な一撃が。
 慄くドロプウォート達。
 光を手で遮りながら、
「この様な時宜に発動でぇすってぇええぇえぇぇ!」
「これは反則なのでぇすぅうぅっぅぅ!」
「コイツぁヤバイっスよおっぉぉおおぉぉ!」
「ヤバイなんてぇモンじゃないさぁあぁぁぁああぁ!」
 あまりに都合が良過ぎるタイミングに懸念を叫んだが、四人の不安は残念ながら的中。
 
 リブロンは輝きが収まったラディッシュを熱っぽい眼差しで見つめながら、

「……好き」

 そこには、何モノにも揺るがず、信念の塊の様であった「フルール国最高参謀」の面影は無かった。
 魅入る「一人の乙女」からの突然の告白に、
「へ?」
 元否モテ男子(ラディッシュ)は、無自覚ゆえに意味が分からず、
(ど、ど言うこと?)
 キョトン顔。
 呆れ顔して頭を抱えるドロプウォート達に答えを求めた。
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