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第二章
2-38
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リブロンによる「ラディッシュへの教育(しごき)」が開始されて数日――
ドロプウォート、ターナップ、ニプル、それぞれが課題を持って「フルールの最先端の天法取得」に向けて修行に励む中、パストリスだけが何もせず、彼ら、彼女たちの頑張りを応援するが如くベンチに座って見守っていた。
彼女の「妖人としての姿」は、ラミウムが残した「天法の楔」により封じられているが、それが天法修行で、まかり緩んで晒してしまった時、彼女が妖人であると知られた時、どの様な扱いを受けるかは想像に易いから。
故にターナップの村の時と同様に、リブロンを含めた周囲の人々には「宗教上の理由」として天法修行には参加せず、体術や剣術と言った「天法を用いない稽古」の時だけ参加するのが常になっていた。
しかし彼女は「ただ見ていただけ」では無かった。
武道の稽古の中には「見稽古」と言って「他者が行っている稽古を見て学ぶ」と言うものがあり、パストリスは今まさに、その「見稽古」を実践中で、ラディッシュ達の天法修行を見ながら、自らの修行をイメージの中で行っていたのであった。
いつも通りにベンチに座り「見守っている体」で、密かに「見稽古」していると、
(ッ!)
背後に立つ人の気配が。
とは言え、攻撃的な意識や悪意は感じられず、
(大丈夫そぅでぇす……)
あえて気付いていないフリをしていると、
『ヒマそうにしておるのぉ?』
その声は、
(フルール陛下ぁ?!)
驚き振り返った。
自分如き妖人が「一国の女王から声を賜る」などと思ってもおらず、
「あ、あっ、ぁあのぉ、そのぉ!」
言葉が出て来ない。
(どぅしてぇボクはこんな時ぃ、気の利いた言葉の一つも言えないでぇすぅ!)
自身にもどかしさを感じていると、フルールはそんな「彼女の卑屈」を包み込む様な笑みで「ふっふっふっ」と小気味よく微笑み、
「剣術の時間までヒマであろぅ? 妾に少し付き合わぬかぇ?」
「え!?」
まさかのお誘いに驚きつつ、
(で、でも天法の見稽古が……)
それは言えない。
「宗教上の理由から天法が使えない」と言いつつ、他人の稽古を見て学ぶ「見稽古をしていた」など知られては、話に矛盾が生じてしまうから。
やむを得ず、緊張気味の笑顔で、
「ぼっ、ボクなんかでぇ、お役に立てるのでぇしたらぁ♪」
するとフルールは妖艶な中にもたおやかな笑みを交え、
「ならば、行こうかぇ?」
彼女を連れ立ち城へ向かった。
(ボクとぉ何処へ行くんだろぅ……)
不安を残すパストリスが連れられた場所、そこは、
(え……)
フルールの私室の奥の「作業部屋(同人誌作成)」であった。
おもむろに扉を閉めるフルール。
狭い部屋に二人きり。
「…………」
妖人としてではなく、違った意味で「身(貞操)の危機」を感じるパストリス。
そう感じるのは「ラミウムによるトラウマ」か、はたまた「同人誌の読み過ぎ」か。
「あっ、あのぉ! ボクぅ!」
焦り口調で部屋から出ようとすると、
「え?!」
そこには「赤いジャージ姿」で「■眼鏡」を掛けた、女騎士たちの頂点に君臨する「カリスマ女王」の欠片も無いフルールの姿が。
「え、えぇと……」
何からツッコめば良いか分からないパストリス。
一先ず、
「あ、あの……その(ダサい)服は……」
見た事の無い服にツッコミを入れると、フルールはせわしなく頭を掻きながら、
「コレは「じゃーじ」と言うて、異世界の体操服で、小生の「勝負服」でゴザルぅ」
「しょ、ショウセイ?!」
ツッコミどころは増える一方で、
「ござるぅ?!!」
混乱は増すばかりの中、変貌したフルールは、
『そんな事よりィイィ!』
惑う彼女の両肩をガシリと掴み、ハッと我に返るパストリス。
(ボクぅひん剥かれちゃうでぇすぅ!)
同人誌で見た衝撃の一場面を瞬間的に思い出し、
「あっ! あのぉ! ボクぅ! そぅ言う行為はぁ!」
怯え顔で訴えると、
『「作画」を手伝ってぇ欲しいでゴザルよォオォ!』
「へ?」
呆気にとられるパストリス。
そんな彼女にオトコエシ先生バージョンのフルールは泣きながら、
「このままじゃ「冬の同人誌即売会」に間に合わないでゴザルぅうぅ!」
必死に訴えた。
まさかの「助っ人要請オチ」に、
(え……えぇ…………)
嬉しいような、ほっとしたような、それでいて少し残念なような、複雑な笑みを浮かべる。
それから彼女は、BL系作家「オトコエシ先生」と化したフルールと共に、机に向かって漫画原稿を描き、任されたのは「ベタ塗り」と「トーン貼り」。
オトコエシ(フルール)は作業の手を止める事なくしみじみと、
「いやぁ~本当に助かったでゴザルよぉ~リブロンは「周囲に知れたらカリスマ性が下がる」とか言って、アシスタントを雇わせてくれぬでゴザルしぃ」
ボヤきに、苦笑しながら作業を続けるパストリスであったが、
「あ、あのぉ……フルール陛下……」
「ん? なぁんでゴザルか♪ 因みに今は「オトコエシ先生」と呼んでくれるとモチベーションが、」
「下がらない」と言いかけると、彼女は羞恥で真っ赤におずおずと、
「こ、これ……」
手掛けていた漫画原稿をフルールに見せながら、
「(男性の局部が)出ちゃってるでぇすけどぉ……あーる指定(18禁)じゃ、ないでぇすよね……」
それ以前の問題である気はするが、オトコエシはチラ見もせず、作業の手を止める事も無くあっけらかんと、
「そうでゴザルよぉ。だからパストリス殿には、その部分(局部)も■で程良く隠して欲しいでゴザル♪」
「消すなら(精密に)描かなきゃいいじゃないでぇすかぁ!」
堪え切れない羞恥から思わず叫ぶと、フルールは■眼鏡でニッと笑って見せてから、
「後々隠すにしても、描いておいた方が絵全体の臨場感が増すでゴザルよ♪」
雇い主にそう言われてしまっては返す言葉も無く、
「うぅ……」
恥ずかしそうに、赤い顔してうつむくパストリス。
黙々と、悶々と、リアルに描かれた男性の局部を■で塗り潰していると、
『スマヌでゴザルなぁ、パストリス殿ぉ』
「?」
「小生、新作を心待ちにしている信者たちを「楽しませたい」のでゴザルよぉ」
「!」
(だから締め切りに間に合わせようと……)
そしてパストリスはとある事に気付く。
姿や形、立ち位置は変われど「民を思う気持ち」が彼女の根底には変わらずあるだと。
(やっぱりこの人は、この国の女王様なんでぇすぅ♪)
そう思うと、聡明な彼女が「ハクサンの様な軽薄な男」の毒牙に、何故かかってしまったのか余計に不思議に思え、作業の手は止めずに、
「あ、あのぉ……聞いてもイイでぇすか?」
オトコエシも作業の手は止めず、
「なんでゴザルぅ、改まって」
「どぅしてぇ先生みたいな女性が、そのぉ……ハクさんみたいな……」
「「薄い男」と関係を持ったのか、とぅ?」
平然な問い返しに、
(かっ、「関係」って……なぁんか「大人な表現」なのでぇす……)
パストリスは顔の赤みを増しつつ、
「は……ハイでぇすぅ……」
頷くと、フルールは何ごとか思い出したようにフッと小さく笑い、
「憧れたのでゴザルよ」
「憧れた?」
「途方も無い夢物語を小生に語って聞かせる、アヤツ(ハクサン)の煌めく瞳に」
「き、煌めく瞳ぃ?」
(ハクさんの??)
思わず作業の手が止まると、
『手が止まってゴザルよ♪』
「あっ、ゴメンナサイでぇすぅ!」
パストリスは慌てて作業を再開。
そんな彼女の様子から「理解されていない」のを感じ取ったフルールは、
「当時の小生は、フルール国の王族と言う立場、伝統、歴史の全てに縛られ、腐っておったのでゴザル」
その独白の理由はパストリスには分からなかったが、作業の手は止めず、
(…………)
黙って聞き入っていると、
「アヤツは、その様な折りに小生の前に突如として現れた。今にして思えば、それ(弱っている女性に付け入る)が、アヤツの常套手段だったのかも知れぬが」
自嘲気味の笑みを浮かべるフルールも作業の手は止めず、
「日課のように現れるようになったアヤツの口から語られる「異世界の話」は全てが煌びやかで、全部を諦め、凪の様に停滞していた小生の心を波立たせ……」
淡い思い出を語る口調で、
「まぁ、全ては昔の話でゴザルよぅ」
苦笑した。
「…………」
(あんな人でぇも「誰かの支え」になる事があるでぇすね……それとも昔はマトモだったでぇすぅ?)
パストリスが「人に歴史あり」なのだと、しみじみ思っていると、
『時に、パストリス殿ぉ』
フルールの一声で現実に戻され、
「は、ハイでぇす」
(何だろぅ、改まって?)
首を傾げると、オトコエシが初めて作業の手を止め、パストリスを真っ直ぐ見据え、
「パストリス殿は「妖人」でゴザルな」
『ッ!!!』
反射的に椅子から跳ね退くパストリス。
これから自身に降り掛かるであろう最悪の事変を想像し、後退り身構え、緊張と恐怖から表情を強張らせた。
ドロプウォート、ターナップ、ニプル、それぞれが課題を持って「フルールの最先端の天法取得」に向けて修行に励む中、パストリスだけが何もせず、彼ら、彼女たちの頑張りを応援するが如くベンチに座って見守っていた。
彼女の「妖人としての姿」は、ラミウムが残した「天法の楔」により封じられているが、それが天法修行で、まかり緩んで晒してしまった時、彼女が妖人であると知られた時、どの様な扱いを受けるかは想像に易いから。
故にターナップの村の時と同様に、リブロンを含めた周囲の人々には「宗教上の理由」として天法修行には参加せず、体術や剣術と言った「天法を用いない稽古」の時だけ参加するのが常になっていた。
しかし彼女は「ただ見ていただけ」では無かった。
武道の稽古の中には「見稽古」と言って「他者が行っている稽古を見て学ぶ」と言うものがあり、パストリスは今まさに、その「見稽古」を実践中で、ラディッシュ達の天法修行を見ながら、自らの修行をイメージの中で行っていたのであった。
いつも通りにベンチに座り「見守っている体」で、密かに「見稽古」していると、
(ッ!)
背後に立つ人の気配が。
とは言え、攻撃的な意識や悪意は感じられず、
(大丈夫そぅでぇす……)
あえて気付いていないフリをしていると、
『ヒマそうにしておるのぉ?』
その声は、
(フルール陛下ぁ?!)
驚き振り返った。
自分如き妖人が「一国の女王から声を賜る」などと思ってもおらず、
「あ、あっ、ぁあのぉ、そのぉ!」
言葉が出て来ない。
(どぅしてぇボクはこんな時ぃ、気の利いた言葉の一つも言えないでぇすぅ!)
自身にもどかしさを感じていると、フルールはそんな「彼女の卑屈」を包み込む様な笑みで「ふっふっふっ」と小気味よく微笑み、
「剣術の時間までヒマであろぅ? 妾に少し付き合わぬかぇ?」
「え!?」
まさかのお誘いに驚きつつ、
(で、でも天法の見稽古が……)
それは言えない。
「宗教上の理由から天法が使えない」と言いつつ、他人の稽古を見て学ぶ「見稽古をしていた」など知られては、話に矛盾が生じてしまうから。
やむを得ず、緊張気味の笑顔で、
「ぼっ、ボクなんかでぇ、お役に立てるのでぇしたらぁ♪」
するとフルールは妖艶な中にもたおやかな笑みを交え、
「ならば、行こうかぇ?」
彼女を連れ立ち城へ向かった。
(ボクとぉ何処へ行くんだろぅ……)
不安を残すパストリスが連れられた場所、そこは、
(え……)
フルールの私室の奥の「作業部屋(同人誌作成)」であった。
おもむろに扉を閉めるフルール。
狭い部屋に二人きり。
「…………」
妖人としてではなく、違った意味で「身(貞操)の危機」を感じるパストリス。
そう感じるのは「ラミウムによるトラウマ」か、はたまた「同人誌の読み過ぎ」か。
「あっ、あのぉ! ボクぅ!」
焦り口調で部屋から出ようとすると、
「え?!」
そこには「赤いジャージ姿」で「■眼鏡」を掛けた、女騎士たちの頂点に君臨する「カリスマ女王」の欠片も無いフルールの姿が。
「え、えぇと……」
何からツッコめば良いか分からないパストリス。
一先ず、
「あ、あの……その(ダサい)服は……」
見た事の無い服にツッコミを入れると、フルールはせわしなく頭を掻きながら、
「コレは「じゃーじ」と言うて、異世界の体操服で、小生の「勝負服」でゴザルぅ」
「しょ、ショウセイ?!」
ツッコミどころは増える一方で、
「ござるぅ?!!」
混乱は増すばかりの中、変貌したフルールは、
『そんな事よりィイィ!』
惑う彼女の両肩をガシリと掴み、ハッと我に返るパストリス。
(ボクぅひん剥かれちゃうでぇすぅ!)
同人誌で見た衝撃の一場面を瞬間的に思い出し、
「あっ! あのぉ! ボクぅ! そぅ言う行為はぁ!」
怯え顔で訴えると、
『「作画」を手伝ってぇ欲しいでゴザルよォオォ!』
「へ?」
呆気にとられるパストリス。
そんな彼女にオトコエシ先生バージョンのフルールは泣きながら、
「このままじゃ「冬の同人誌即売会」に間に合わないでゴザルぅうぅ!」
必死に訴えた。
まさかの「助っ人要請オチ」に、
(え……えぇ…………)
嬉しいような、ほっとしたような、それでいて少し残念なような、複雑な笑みを浮かべる。
それから彼女は、BL系作家「オトコエシ先生」と化したフルールと共に、机に向かって漫画原稿を描き、任されたのは「ベタ塗り」と「トーン貼り」。
オトコエシ(フルール)は作業の手を止める事なくしみじみと、
「いやぁ~本当に助かったでゴザルよぉ~リブロンは「周囲に知れたらカリスマ性が下がる」とか言って、アシスタントを雇わせてくれぬでゴザルしぃ」
ボヤきに、苦笑しながら作業を続けるパストリスであったが、
「あ、あのぉ……フルール陛下……」
「ん? なぁんでゴザルか♪ 因みに今は「オトコエシ先生」と呼んでくれるとモチベーションが、」
「下がらない」と言いかけると、彼女は羞恥で真っ赤におずおずと、
「こ、これ……」
手掛けていた漫画原稿をフルールに見せながら、
「(男性の局部が)出ちゃってるでぇすけどぉ……あーる指定(18禁)じゃ、ないでぇすよね……」
それ以前の問題である気はするが、オトコエシはチラ見もせず、作業の手を止める事も無くあっけらかんと、
「そうでゴザルよぉ。だからパストリス殿には、その部分(局部)も■で程良く隠して欲しいでゴザル♪」
「消すなら(精密に)描かなきゃいいじゃないでぇすかぁ!」
堪え切れない羞恥から思わず叫ぶと、フルールは■眼鏡でニッと笑って見せてから、
「後々隠すにしても、描いておいた方が絵全体の臨場感が増すでゴザルよ♪」
雇い主にそう言われてしまっては返す言葉も無く、
「うぅ……」
恥ずかしそうに、赤い顔してうつむくパストリス。
黙々と、悶々と、リアルに描かれた男性の局部を■で塗り潰していると、
『スマヌでゴザルなぁ、パストリス殿ぉ』
「?」
「小生、新作を心待ちにしている信者たちを「楽しませたい」のでゴザルよぉ」
「!」
(だから締め切りに間に合わせようと……)
そしてパストリスはとある事に気付く。
姿や形、立ち位置は変われど「民を思う気持ち」が彼女の根底には変わらずあるだと。
(やっぱりこの人は、この国の女王様なんでぇすぅ♪)
そう思うと、聡明な彼女が「ハクサンの様な軽薄な男」の毒牙に、何故かかってしまったのか余計に不思議に思え、作業の手は止めずに、
「あ、あのぉ……聞いてもイイでぇすか?」
オトコエシも作業の手は止めず、
「なんでゴザルぅ、改まって」
「どぅしてぇ先生みたいな女性が、そのぉ……ハクさんみたいな……」
「「薄い男」と関係を持ったのか、とぅ?」
平然な問い返しに、
(かっ、「関係」って……なぁんか「大人な表現」なのでぇす……)
パストリスは顔の赤みを増しつつ、
「は……ハイでぇすぅ……」
頷くと、フルールは何ごとか思い出したようにフッと小さく笑い、
「憧れたのでゴザルよ」
「憧れた?」
「途方も無い夢物語を小生に語って聞かせる、アヤツ(ハクサン)の煌めく瞳に」
「き、煌めく瞳ぃ?」
(ハクさんの??)
思わず作業の手が止まると、
『手が止まってゴザルよ♪』
「あっ、ゴメンナサイでぇすぅ!」
パストリスは慌てて作業を再開。
そんな彼女の様子から「理解されていない」のを感じ取ったフルールは、
「当時の小生は、フルール国の王族と言う立場、伝統、歴史の全てに縛られ、腐っておったのでゴザル」
その独白の理由はパストリスには分からなかったが、作業の手は止めず、
(…………)
黙って聞き入っていると、
「アヤツは、その様な折りに小生の前に突如として現れた。今にして思えば、それ(弱っている女性に付け入る)が、アヤツの常套手段だったのかも知れぬが」
自嘲気味の笑みを浮かべるフルールも作業の手は止めず、
「日課のように現れるようになったアヤツの口から語られる「異世界の話」は全てが煌びやかで、全部を諦め、凪の様に停滞していた小生の心を波立たせ……」
淡い思い出を語る口調で、
「まぁ、全ては昔の話でゴザルよぅ」
苦笑した。
「…………」
(あんな人でぇも「誰かの支え」になる事があるでぇすね……それとも昔はマトモだったでぇすぅ?)
パストリスが「人に歴史あり」なのだと、しみじみ思っていると、
『時に、パストリス殿ぉ』
フルールの一声で現実に戻され、
「は、ハイでぇす」
(何だろぅ、改まって?)
首を傾げると、オトコエシが初めて作業の手を止め、パストリスを真っ直ぐ見据え、
「パストリス殿は「妖人」でゴザルな」
『ッ!!!』
反射的に椅子から跳ね退くパストリス。
これから自身に降り掛かるであろう最悪の事変を想像し、後退り身構え、緊張と恐怖から表情を強張らせた。
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