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第二章

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 数日後――

「お二人とも、推し神(作家)は出来ましたの?」
 おもむろに、本から目を上げるドロプウォート。
 この日は彼女の自室で読書会が催され、
「おぅさぁ」
「ハイでぇす!」
 ニプルとパストリスが笑顔で答えると、
 
「でしたら「せえの」で、推し神の名を言ってみませんこと?!」
「イイねぇ!」
「面白うそうでぇすぅ!」

 三人は声を揃えて、
「「「せぇの!」」」

 ドロプウォート「オミナエシ先生!」
 ニプル「オトコエシ先生!」
 パストリス「マツムシソウ先生!」

 想定外の不一致。
 
『『『…………』』』

 漂う不穏な空気。
 
 先陣切ったのはドロプウォート。
「パストの「マツムシソウ先生は」順当ですわねぇ」
 暗にニプルの選んだ作家を批判すると、ニプルも負けじと、
「確かに、パス(※パストリスの意)の選んだ「マツムシソウ先生は」当然だよなぁ~」
 遠回しに、ドロプウォートの選んだ作家を批判。
 
「「………」」

 険悪になりつつある二人の空気を察したパストリスは、緊張感を和らげようと、
「ぼ、ボクには「マツムシソウ先生」の作品でも、少し背伸びな感じでぇすぅ♪」
 少々引きつり気味ではあったが笑顔を見せ、
「かも知れませんですわよねぇ♪」
「まぁ「入り口」としては順当だよなぁ♪」
 二人とも笑顔で応じたが、その笑顔の裏側で、
 
((…………))

 ほとばしる火花。

 そして、先手ドロプウォート。
「ですがぁ「オトコエシ先生」とは、どうなのでしょぉぅう~? 男同士と言うのは、如何なモノなのでしょうねぇ~」
 要するに、オトコエシ先生とは人気の「BL系作家」。

 後手ニプルウォート。
「この「芸術性」が理解出来ないとはねぇ~って言うか「オミナエシ先生」の女同士って方が、ちょっとねぇ~」
 オミナエシ先生とは、人気の「GL系作家」であり、
「何を言っていますのぉ、ニプルぅ?」
 すぐさま応じるドロプウォート。
「芸術と言うならば、むしろ「女神の如き少女たち」の可憐な、」
「願望でも投影してるのかねぇ~パスぅ?」
 いきなり話を振られ、
 
「えぇ?!」

 慄くパストリスに、
「夜な夜な気を付けるんだよぉ~先祖返りに「ひん剥かれないように」ねぇ♪」
 ニプルが放った「からかい」と「ドロプウォートに対する挑発」なのは分かっていたが、パストリスは苦笑でお茶を濁した。
 思い当たる前例が、無い訳でもなかった故に。
 当たらずとも遠からずの「前科持ちのドロプウォート」は、
 
『んなぁ! 何ですってぇ!』

 過剰に憤慨。
 ガッと椅子から立ち上がり、薄い経本(愛読書)を手に、
 
「これは女子同士の「友情物語」なのでぇすわぁ!」

 ニプルも負けじと愛読書を手に立ち上がり、
 
「それを言うならコッチだって「男同士の熱い友情物語」だ!」

 困惑笑いのパストリスを間に挟んで睨み合い。
 火花を散らし合った二人は、
 
『『フゥン!』』

 小児の様にムクレ合い、背を向け合い、二人の(幼い)意地の張り合いに、
「あは、あはははは……」
 もはや笑うしかないパストリスであった。
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