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第二章

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 男が足を止めたのは――

 背表紙がやたらと薄い本が並ぶ一角。
 男はその中の一冊を引き抜き、
(……初心者には、コレ位の(刺激の強さ)で十分……)
 とあるページを開いて見せ、
 
『『『絵ぇーーーーーーーーーッ!!!?』』』

 激しい衝撃を受ける女子三人。
 そこには男女の「〇〇〇〇ない姿」が。

 ドロプウォートは咄嗟にパストリスの両目を手で覆い、

『無垢な貴方が「この様なモノ」を見てはいけませんでぇすわぁあぁ!』

「ぼっ、ボクも見たいでぇすぅうぅ!」

 不服声でもがく「むっつりパスト」を必死に押さえながら、羞恥で顔を真っ赤に、
「店主ぅ! 貴方はぁ「何と言うモノ」をぉ扱っていますのぉ!」
 しかし男は凪いだ海の如くに平静に、
(……お静かに……)
「?」
(本が傷みます)

「言ってる場合ですのぉおぉ!」

 ツッコミのドロプウォート。
 男の「的がズレた反論」に赤面顔で苦笑しながら、
「ニプルぅ! 貴方からも何か、」
 苦言を呈してもらおうと振り向いたが、そこには、
 
『貴方まで何を魅了されていますのよ!』

 自ら新たに手にした「薄い本」に、食い入る様に見入る彼女の姿が。
 
「これではぁ「ミイラ取りがミイラ」ですわぁ!」

 嘆く彼女であったが、それはあくまで建前。四大として、庶民に手本に示す「騎士としての立場」から故。
 そもそも恋愛脳である彼女が「本の内容(男女の秘め事)」に興味がない訳がなく、数々の客と接して来た「プロの書店員」である男は、彼女の嗜好を見透かしたように、
(……騎士様には……)
 別の棚から一冊手に取り、
(……此方がお好みと、御見受けしますが……?)
 とあるページを開いて見せ、
 
『こっ、これはっ!!!』

 かつてない衝撃を受けるドロプウォート。
 吸い込まれる様に、本に手を伸ばし、
「クッ!」
 抗う様に止め、「続きを読みたい気持ち」と「騎士としての矜持」が心の中でせめぎ合い、激しく葛藤する中、男が、
(……騎士様……)
(!?)
 惑う背中をポンと押すように、
(……これは『芸術』なのですよ……)
 不敵にニヤリと笑い、
(((芸術ぅ!)))
 体のいい「言い訳」を得た女子三人は、
 
『『『確かに!』』』

 大きく頷き、新たな世界の扉を開き、店を後にしたそれぞれ手には、薄い本が。

 この日より「女子だけの(同人誌)読書会」が女子部屋持ち回りで、定期的に催すようになった。
 何が行われているか知らず、「女子三人の融和」と思える光景に目を細める男子二人(ラディッシュとターナップ)を尻目に。
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