上 下
133 / 706
第二章

2-16

しおりを挟む
 男が足を止めたのは――

 背表紙がやたらと薄い本が並ぶ一角。
 男はその中の一冊を引き抜き、
(……初心者には、コレ位の(刺激の強さ)で十分……)
 とあるページを開いて見せ、
 
『『『絵ぇーーーーーーーーーッ!!!?』』』

 激しい衝撃を受ける女子三人。
 そこには男女の「〇〇〇〇ない姿」が。

 ドロプウォートは咄嗟にパストリスの両目を手で覆い、

『無垢な貴方が「この様なモノ」を見てはいけませんでぇすわぁあぁ!』

「ぼっ、ボクも見たいでぇすぅうぅ!」

 不服声でもがく「むっつりパスト」を必死に押さえながら、羞恥で顔を真っ赤に、
「店主ぅ! 貴方はぁ「何と言うモノ」をぉ扱っていますのぉ!」
 しかし男は凪いだ海の如くに平静に、
(……お静かに……)
「?」
(本が傷みます)

「言ってる場合ですのぉおぉ!」

 ツッコミのドロプウォート。
 男の「的がズレた反論」に赤面顔で苦笑しながら、
「ニプルぅ! 貴方からも何か、」
 苦言を呈してもらおうと振り向いたが、そこには、
 
『貴方まで何を魅了されていますのよ!』

 自ら新たに手にした「薄い本」に、食い入る様に見入る彼女の姿が。
 
「これではぁ「ミイラ取りがミイラ」ですわぁ!」

 嘆く彼女であったが、それはあくまで建前。四大として、庶民に手本に示す「騎士としての立場」から故。
 そもそも恋愛脳である彼女が「本の内容(男女の秘め事)」に興味がない訳がなく、数々の客と接して来た「プロの書店員」である男は、彼女の嗜好を見透かしたように、
(……騎士様には……)
 別の棚から一冊手に取り、
(……此方がお好みと、御見受けしますが……?)
 とあるページを開いて見せ、
 
『こっ、これはっ!!!』

 かつてない衝撃を受けるドロプウォート。
 吸い込まれる様に、本に手を伸ばし、
「クッ!」
 抗う様に止め、「続きを読みたい気持ち」と「騎士としての矜持」が心の中でせめぎ合い、激しく葛藤する中、男が、
(……騎士様……)
(!?)
 惑う背中をポンと押すように、
(……これは『芸術』なのですよ……)
 不敵にニヤリと笑い、
(((芸術ぅ!)))
 体のいい「言い訳」を得た女子三人は、
 
『『『確かに!』』』

 大きく頷き、新たな世界の扉を開き、店を後にしたそれぞれ手には、薄い本が。

 この日より「女子だけの(同人誌)読書会」が女子部屋持ち回りで、定期的に催すようになった。
 何が行われているか知らず、「女子三人の融和」と思える光景に目を細める男子二人(ラディッシュとターナップ)を尻目に。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の従魔は恐ろしく強いようです。

緋沙下
ファンタジー
僕は生まれつき体が弱かった。物心ついた頃から僕の世界は病院の中の一室だった。 僕は治ることなく亡くなってしまった。 心配だったのは、いつも明るく無理をして笑うお母さん達の事だった。 そんな僕に、弟と妹を授ける代わりに別の世界に行って見ないか?という提案がもたらされた。 そこで勇者になるわけでもなく、強いステータスも持たない僕が出会った従魔の女の子 処女作なのでご迷惑かける場面が多数存在するかもしれません。気になる点はご報告いただければ幸いです。 --------------------------------------------------------------------------------------- プロローグと小説の内容を一部変更いたしました。

気がついたら異世界に転生していた。

みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。 気がついたら異世界に転生していた。 普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・ 冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。 戦闘もありますが少しだけです。

転生したらチートでした

ユナネコ
ファンタジー
通り魔に刺されそうになっていた親友を助けたら死んじゃってまさかの転生!?物語だけの話だと思ってたけど、まさかほんとにあるなんて!よし、第二の人生楽しむぞー!!

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

罪人として生まれた私が女侯爵となる日

迷い人
ファンタジー
守護の民と呼ばれる一族に私は生まれた。 母は、浄化の聖女と呼ばれ、魔物と戦う屈強な戦士達を癒していた。 魔物からとれる魔石は莫大な富を生む、それでも守護の民は人々のために戦い旅をする。 私達の心は、王族よりも気高い。 そう生まれ育った私は罪人の子だった。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

処理中です...