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今まで見せた事が無いような満面の笑顔で、
「僕のはコレなんだよぉ♪」
両手で持てる程度の大きさの、厚みの無い木箱を取り出して見せた。
縦横三十センチ×四十センチほど、厚みは五センチ程度と言ったところか。
「何が入っていますでぇすのぉ?!」
興味津々身を乗り出すドロプウォート達を前に、ラディッシュは自信満々自慢げに、
「僕専用の武器一式なのさぁ!」
「「「「おぉ~~~!」」」」
かつてない「勇者らしい発言」に感嘆の声を上げるラミウム達、で、あったが、開けられた木箱の中を見るなり、
「「「「「「…………」」」」」」
二の句を失った。
中に入っていたモノ、それは、
((((((包丁……))))))
用途に合わせてか大小様々、厚みも様々取り揃えた包丁セット一式が、そこには鎮座していた。
唖然とする一同をよそに、
「これで、どんな食材も捌けるよ! ねぇ親方ぁ!」
「勿論ですじゃぁ! 肉を切ろうが、骨を切ろうが、刃こぼれなどせぬじゃてぇ!」
「「カァーカッカッ!」」
高笑いする二人を前に、
『『『『『『オカシイだろォオォ!!!』』』』』』
ラミウムたち一斉ツッコミ。
「「へ?」」
二つのきょとん顔に、
「アンタは料理人なのかぁい!」
「勇者の装備が「料理包丁一式」って何の冗談ですのぉ!」
「ボクが言うのも何ですけどヘンでぇす絶対にヘンでぇすぅ!」
「んなぁかさばるそんなモン、命の鉄火場(戦場)に、どうやって持って気なんスかぁい!」
畳み掛けるツッコミに、
「えぇ?!」
本人的には予想外の四面楚歌であったのか、慄くラディッシュは手にした木箱を、
「ホラぁこうやってぇ」
椅子車の座面の真下に取り付けて見せ、
((((((無駄に芸が細かぁい!))))))
呆れを通り越し、感心さえ覚えるラミウムたち。
すると親方が、
「カァーカッカッ! 腹が減って何とやらと言うではないですかじゃあ♪」
「「「「「「…………」」」」」」
高笑いに一同は毒気を抜かれ、
「ま、まぁ、それもラディらしいちゃあ、ラディらしいのかねぇ?」
「そ、そぅですわねぇ」
「それにぃラディさんのご飯、とっても美味しいでぇすしぃ」
「腕っ節一筋だったオレが、また「ヘンな勇者様」を兄貴に選んじまったモンでさぁ」
ヤレヤレ笑いをし合ったが、当のラディッシュは、何を、どう勘違いしたのか遠回しに称賛された思い、
「いやぁ、それ程でもぉ♪」
「「「「呆れてるん(さぁね・ですわ・でぇす・っス)!」」」」
再びの一斉ツッコミに、
「へ?」
そんな和気あいあいとした空間の中で、自然な笑顔を見せるターナップ(孫)を、微笑ましく見つめる大司祭(祖父)。
するとラミウムがおもむろに、
「ところで、ラディ」
「?」
「アンタ、金(かね)は、どうやって工面したんだぁい?」
「かね?」
「…………」
嫌な予感が胸中をよぎり一瞬黙るも、
「こんだけの物を作ってもらったんさぁね。当然、それに見合った金額ってヤツを、」
支払ったか問いただそうとすると、ラディッシュは一気に青ざめ、
「どっ、どぉ、どぅ、どうしようラミィ! 僕ぅそこまで考えてなかったぁよぉ!!!」
『『『えぇーーーっ?!』』』
新装備に沸いていたラミウム、ドロプウォート、パストリスも一気に青ざめ、
「なっ、何てこったぁい!」
「わっ、ワタクシも、言うほど所持金がありませんですわぁよ!」
「ぼっ、ボクは自給自足だったからぁ!」
突き付けられた現実(金欠)に、ラディッシュはカタカタと震えながら、
「どぉ、どぅしよぅラミぃ~!」
半泣きで袖にすがり付くと、ラミウムは苦笑しながら、
「えぇ~い、泣きつくんじゃないよぉうっとうしいぃねぇ!」
素気無く振り払い、
『ドロプぅ! パストぉ!』
「「?!」」
青ざめている女子二人に、
「アンタ達ぃ! ちょいと色気を出して村の男どもから……」
貢がせようと企て二人を見るなり、
≪ドロプウォート:豊満なれど、色気無し≫
≪パストリス:見た目が幼女で、犯罪臭≫
「はぁあぁぁああぁぁ…………」
とてもとても深いため息を吐き、
『『どう言う意味のため息(ですの・でぇすぅ)!』』
残念扱いされた二人は憤慨し、
「ならぁラディはどぅでぇすの! ラディに頼みましたらぁ!」
「でぇすでぇすでぇすぅ!」
まさかのとばっちりにギョッとするラディッシュ。
しかしラミウムは呆れ顔して首を振り、
「この恋愛経験値ゼロの「童××」にスキルを使って女に貢がせて、その後どうなるか……アンタ達は分かってモノを言ってるのさぁねぇ?」
「「…………」」
想像するに、無数の怒れる女性が入り乱れる「収拾不能な修羅場」しか見えて来ず、
『『『はぁあぁぁああぁぁ…………』』』
女子三人は、とてもとても深いため息を吐いた。
「どぅ言う意味なのさぁ!」
一応、憤慨するラディッシュ。当たらずとも遠からずと、本人も思っているだけに。
そんな喜劇の様なやり取りを、笑って見ていたターナップ。
「なぁ、村長ぉ」
事の次第を傍らで、苦笑いを浮かべて見ていた村長の肩に、やおら腕を回し、
「な、何ですかな、若司祭……」
不穏な空気を察した村長は顔色を変えたが、ターナップはあえて気にする風も無く、
「「まさか」とは思うが、天世様と四大様、それに勇者様を牢屋にブチ込んだ挙句、火刑送り寸前までの無礼をしておいて、まぁさかジジィ(大司祭)の謝罪一つで済ます訳、ねぇよなぁ~」
((((((オマエもだろ!))))))
心の中で鋭くツッコム、ラディッシュ達と職人たち。
すると村長はバツが悪そうに、
「そ、それは……」
口籠りつつ、大司祭をチラ見。
助け舟を求める視線を送ったが、大司祭は気マズそうにスッと視線を逸らし、
(!)
逸らした先で、
(す、済まぬの村長ぉ、ワシも加害者の一人なのじゃよぉ……)
(…………)
逃げ場は無いと悟る村長。
そこへターナップが止めを刺す様に、
「この事実が教会に知れたら「オレとジジィ」は、無論タダじゃ済まないが……「責任者の村長は」どぅなるのかねぇ~」
「!?」
大司祭に謝罪させたり、ほとぼりが冷めるまでラミウムの前に姿を現さないなど、随所に保身が見え隠れする彼に、この一言は極めて効果的であった。
渋っていた口調と態度は一変し、
「もっ、もももももも勿論ですございますぅ! この程度(代金支払いの肩代わり)で赦免される等とは思っておりませんが! 何卒! 何卒ぉ村(と言うより私)には、ご容赦ぉをぉぉおぉぉぉ!」
平身低頭平謝りすると、
「だとさ♪」
ターナップは闇を感じさせる笑顔でニヤッと笑って見せ、
((((悪党だぁ……))))
ヤレヤレ笑いのラディッシュ達。
しかし、村の司祭である彼が本気で恐喝まがいの脅しをする筈も無く、
「まぁ、冗談はさておきっスぅ」
保身に走る村長に対する「彼なりのお灸」であったのか、屈託ない少年の様な笑顔にコロッと戻り、
((((本当に冗談???))))
ラディッシュたちが一抹の不安を残す中、
「ラディの兄貴が、あんな技術を教えてくれたんだ、ラミ姐さんが言っていた通り、これからの村を考えれば「むしろお釣りが来る」ってモンでさぁ。なぁ親方ぁ」
すると親方も、
「勿論じゃてぇ」
笑い合う二人に、恐喝の片棒を担がずに済んだラディッシュ達がホッと胸を撫で下ろしていると、
『村長ぉーーーーーー!』
血相変えた村人が駆けて来た。
吊るし上げをくらったばかりで少々不機嫌な村長。
「何事だぁ!」
八つ当たり気味の声を上げたが、事態は急を要するのか、
「ハァハァハァ……と、とにかくぅ、村の東門にスグ来て下さい!」
息を切らせる村人は、不機嫌に気付く余裕もない様子であった。
「僕のはコレなんだよぉ♪」
両手で持てる程度の大きさの、厚みの無い木箱を取り出して見せた。
縦横三十センチ×四十センチほど、厚みは五センチ程度と言ったところか。
「何が入っていますでぇすのぉ?!」
興味津々身を乗り出すドロプウォート達を前に、ラディッシュは自信満々自慢げに、
「僕専用の武器一式なのさぁ!」
「「「「おぉ~~~!」」」」
かつてない「勇者らしい発言」に感嘆の声を上げるラミウム達、で、あったが、開けられた木箱の中を見るなり、
「「「「「「…………」」」」」」
二の句を失った。
中に入っていたモノ、それは、
((((((包丁……))))))
用途に合わせてか大小様々、厚みも様々取り揃えた包丁セット一式が、そこには鎮座していた。
唖然とする一同をよそに、
「これで、どんな食材も捌けるよ! ねぇ親方ぁ!」
「勿論ですじゃぁ! 肉を切ろうが、骨を切ろうが、刃こぼれなどせぬじゃてぇ!」
「「カァーカッカッ!」」
高笑いする二人を前に、
『『『『『『オカシイだろォオォ!!!』』』』』』
ラミウムたち一斉ツッコミ。
「「へ?」」
二つのきょとん顔に、
「アンタは料理人なのかぁい!」
「勇者の装備が「料理包丁一式」って何の冗談ですのぉ!」
「ボクが言うのも何ですけどヘンでぇす絶対にヘンでぇすぅ!」
「んなぁかさばるそんなモン、命の鉄火場(戦場)に、どうやって持って気なんスかぁい!」
畳み掛けるツッコミに、
「えぇ?!」
本人的には予想外の四面楚歌であったのか、慄くラディッシュは手にした木箱を、
「ホラぁこうやってぇ」
椅子車の座面の真下に取り付けて見せ、
((((((無駄に芸が細かぁい!))))))
呆れを通り越し、感心さえ覚えるラミウムたち。
すると親方が、
「カァーカッカッ! 腹が減って何とやらと言うではないですかじゃあ♪」
「「「「「「…………」」」」」」
高笑いに一同は毒気を抜かれ、
「ま、まぁ、それもラディらしいちゃあ、ラディらしいのかねぇ?」
「そ、そぅですわねぇ」
「それにぃラディさんのご飯、とっても美味しいでぇすしぃ」
「腕っ節一筋だったオレが、また「ヘンな勇者様」を兄貴に選んじまったモンでさぁ」
ヤレヤレ笑いをし合ったが、当のラディッシュは、何を、どう勘違いしたのか遠回しに称賛された思い、
「いやぁ、それ程でもぉ♪」
「「「「呆れてるん(さぁね・ですわ・でぇす・っス)!」」」」
再びの一斉ツッコミに、
「へ?」
そんな和気あいあいとした空間の中で、自然な笑顔を見せるターナップ(孫)を、微笑ましく見つめる大司祭(祖父)。
するとラミウムがおもむろに、
「ところで、ラディ」
「?」
「アンタ、金(かね)は、どうやって工面したんだぁい?」
「かね?」
「…………」
嫌な予感が胸中をよぎり一瞬黙るも、
「こんだけの物を作ってもらったんさぁね。当然、それに見合った金額ってヤツを、」
支払ったか問いただそうとすると、ラディッシュは一気に青ざめ、
「どっ、どぉ、どぅ、どうしようラミィ! 僕ぅそこまで考えてなかったぁよぉ!!!」
『『『えぇーーーっ?!』』』
新装備に沸いていたラミウム、ドロプウォート、パストリスも一気に青ざめ、
「なっ、何てこったぁい!」
「わっ、ワタクシも、言うほど所持金がありませんですわぁよ!」
「ぼっ、ボクは自給自足だったからぁ!」
突き付けられた現実(金欠)に、ラディッシュはカタカタと震えながら、
「どぉ、どぅしよぅラミぃ~!」
半泣きで袖にすがり付くと、ラミウムは苦笑しながら、
「えぇ~い、泣きつくんじゃないよぉうっとうしいぃねぇ!」
素気無く振り払い、
『ドロプぅ! パストぉ!』
「「?!」」
青ざめている女子二人に、
「アンタ達ぃ! ちょいと色気を出して村の男どもから……」
貢がせようと企て二人を見るなり、
≪ドロプウォート:豊満なれど、色気無し≫
≪パストリス:見た目が幼女で、犯罪臭≫
「はぁあぁぁああぁぁ…………」
とてもとても深いため息を吐き、
『『どう言う意味のため息(ですの・でぇすぅ)!』』
残念扱いされた二人は憤慨し、
「ならぁラディはどぅでぇすの! ラディに頼みましたらぁ!」
「でぇすでぇすでぇすぅ!」
まさかのとばっちりにギョッとするラディッシュ。
しかしラミウムは呆れ顔して首を振り、
「この恋愛経験値ゼロの「童××」にスキルを使って女に貢がせて、その後どうなるか……アンタ達は分かってモノを言ってるのさぁねぇ?」
「「…………」」
想像するに、無数の怒れる女性が入り乱れる「収拾不能な修羅場」しか見えて来ず、
『『『はぁあぁぁああぁぁ…………』』』
女子三人は、とてもとても深いため息を吐いた。
「どぅ言う意味なのさぁ!」
一応、憤慨するラディッシュ。当たらずとも遠からずと、本人も思っているだけに。
そんな喜劇の様なやり取りを、笑って見ていたターナップ。
「なぁ、村長ぉ」
事の次第を傍らで、苦笑いを浮かべて見ていた村長の肩に、やおら腕を回し、
「な、何ですかな、若司祭……」
不穏な空気を察した村長は顔色を変えたが、ターナップはあえて気にする風も無く、
「「まさか」とは思うが、天世様と四大様、それに勇者様を牢屋にブチ込んだ挙句、火刑送り寸前までの無礼をしておいて、まぁさかジジィ(大司祭)の謝罪一つで済ます訳、ねぇよなぁ~」
((((((オマエもだろ!))))))
心の中で鋭くツッコム、ラディッシュ達と職人たち。
すると村長はバツが悪そうに、
「そ、それは……」
口籠りつつ、大司祭をチラ見。
助け舟を求める視線を送ったが、大司祭は気マズそうにスッと視線を逸らし、
(!)
逸らした先で、
(す、済まぬの村長ぉ、ワシも加害者の一人なのじゃよぉ……)
(…………)
逃げ場は無いと悟る村長。
そこへターナップが止めを刺す様に、
「この事実が教会に知れたら「オレとジジィ」は、無論タダじゃ済まないが……「責任者の村長は」どぅなるのかねぇ~」
「!?」
大司祭に謝罪させたり、ほとぼりが冷めるまでラミウムの前に姿を現さないなど、随所に保身が見え隠れする彼に、この一言は極めて効果的であった。
渋っていた口調と態度は一変し、
「もっ、もももももも勿論ですございますぅ! この程度(代金支払いの肩代わり)で赦免される等とは思っておりませんが! 何卒! 何卒ぉ村(と言うより私)には、ご容赦ぉをぉぉおぉぉぉ!」
平身低頭平謝りすると、
「だとさ♪」
ターナップは闇を感じさせる笑顔でニヤッと笑って見せ、
((((悪党だぁ……))))
ヤレヤレ笑いのラディッシュ達。
しかし、村の司祭である彼が本気で恐喝まがいの脅しをする筈も無く、
「まぁ、冗談はさておきっスぅ」
保身に走る村長に対する「彼なりのお灸」であったのか、屈託ない少年の様な笑顔にコロッと戻り、
((((本当に冗談???))))
ラディッシュたちが一抹の不安を残す中、
「ラディの兄貴が、あんな技術を教えてくれたんだ、ラミ姐さんが言っていた通り、これからの村を考えれば「むしろお釣りが来る」ってモンでさぁ。なぁ親方ぁ」
すると親方も、
「勿論じゃてぇ」
笑い合う二人に、恐喝の片棒を担がずに済んだラディッシュ達がホッと胸を撫で下ろしていると、
『村長ぉーーーーーー!』
血相変えた村人が駆けて来た。
吊るし上げをくらったばかりで少々不機嫌な村長。
「何事だぁ!」
八つ当たり気味の声を上げたが、事態は急を要するのか、
「ハァハァハァ……と、とにかくぅ、村の東門にスグ来て下さい!」
息を切らせる村人は、不機嫌に気付く余裕もない様子であった。
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