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 するとパストリスは、からかいも、裏表も無い、純真な眼差しで以て、

「そんなに「ラディさんの背中」が良いの?」

「・・・・・・」

 ラミウム、一瞬の沈黙。
 その後、

「はぁあぁ?!!」

 驚愕の驚き声を上げると同時、ラディッシュに密かな思いを寄せるドロプウォートが、

「どぅ言う了見でぇすのぉおぉ!?」

 責める様な声を荒げ、責められたラミウムも、
「何をどぅ解釈したらぁそんな話になるのさぁねぇ!」
 困惑の苦笑いで大きく反論、

「アタシぁ単に「物に頼りたくない」と言ってるダケさぁねぇ!」

 疑惑を突っぱねようとしたが、パストリスは更に追い打ちをかける様に、
「でもソレって「物」には頼ってないでぇすけど、「者(ラディッシュ)」には頼ってでぇすよね?」
 鋭いツッコミ返しに、

「な?!」

 怯むラミウム。
 そこへ、パストリスに同調したドロプウォートも激しく何度もコクコク頷き、そんな二人に対し、
「お、おぉ馬鹿をお言いでないよぉ、パスト! あ、アタシがあんな「顔だけモヤシ」に何だってのさぁ! 適当な事言ってると、あの同人みたいにひん剥くよォ!」
 苦し紛れと取れる逆上をすると、
「ひぃう!」
 パストリスは小さい悲鳴を上げてドロプウォートの背に隠れ、

「ゴメンなさぁいゴメンなぁさぁぁあぁい! あの同人が何なのか分からないけどぉゴメンなさぁあぁい!」

 剣幕に怯えて謝罪を叫ぶと、ドロプウォートがいつになく真剣な、むしろ問い詰める様な眼差しでラミウムを見据え、

「では何故、ラディの申し出を断るのです?」
「!」
「椅子車があれば、ラディの負担も減りますわ」

 それは単に羨ましいと思う「嫉妬」から生まれた言葉なだけでなく、ラディッシュに掛かっていた「負担を見かねて」の言葉でもあった。
 しかし自身の本心に未だ辿り着けず、明確な答えを口に出来ないラミウム。
 ハッキリしない胸の奥のモヤモヤをぶつける様に、

「う、うっさいねぇ!」

 手前勝手に話を打ち切ろうとしたが、言い合いの中で「理由の断片」を見出してはいた。
 それは、
≪ラディの「背中の温もり」から離れられない≫
 それが、何に起因するモノなのかまでは未だ見つけられずに。

(いっ、言える訳がないさぁね! アタシの柄じゃない!)

 誤魔化し隠しに口調荒く、
「アタシの勝手だろぉさぁねぇ!」
「ッ!?」
 その身勝手極まりない物言いに、カチンと来るドロプウォート。そんな彼女を前にラミウムは、更に、怒りの炎を煽るかの様に、

「アタシぁ別にラディ何てぇ!」

 何とも思っていないと言い放とうとし、怒りマックスのドロプウォートも同じタイミングで叱責しようと口を開きかけた刹那、調理場から、

『僕がぁどぅかしたのぉ?』

 能天気なラディッシュの声が。
 ドロプウォートとパストリスの食事を持って戻った、空気を読まない呑気顔に、

「「「女子会に(男が)首をツッコムなぁ!」」」

 ギョッとするラディッシュ。
 空腹を気遣い、料理を急ぎ作り上げて持って来たと言うのに、前振りなしの「お咎め三重奏」とは酷な仕打ちである。
「…………」
 ショックを受け、部屋の隅で小さく背を向けて縮こまる。
 口論していた女子三人は、その場の勢い任せに、うっかり「つれない物言い」をしてしまったのだが、

「「「…………」」」

 その哀愁漂う背中には、流石に良心が痛み、
「い、いやぁ悪かったよぉ、ラディ。ちょっと込み入った話をしててな、なぁドロプ?」
「え、えぇそうですわ! ちょっと殿方には聞かせられない話でしたの、ねぇパスト?」
「そ、そそそそそそそぅなんでぇす!」
 即興の口裏合わせ。
 何とかラディッシュの御機嫌を取ろうとしたのだが、焦ったパストリスが、

「ラミィさんが「ラディさんの背中が良い」って言うからぁあぁ!」

 まさかの「晒し」の一言に、ラミウムとドロプウォートが仰天。

「「(アンタ・貴方)は何を(口走ってんだァい・言い出しますのォ)ッ!」」

 そして誰よりラディッシュが。
 ラミウムは羞恥と怒りから顔を真っ赤に、

「珍妙な事をお言いでないよォ、パストぉお!」

 火でも出そうな勢いで激昂すると怯えたパストリスが、
「ゴメンなさぁいゴメンなさぁいでぇすぅ!」
 恐怖心から謝罪を連呼した上で、

「つい「本当の事」をぉおぉ!」

 思わずダメ押し。更には、
(こっ、このままではラディがぁ「ラミィを意識して」しまいましてでぇすわぁ!)
 慌てたドロプウォートまでもが、

「お、おぉおぉぉ落ち着きなさいですわぁ、ラミィ! 「ホントの事」を晒された位でぇ何を狼狽していますのぉおぉ!」

 止めを刺すと、怒れるラミウムが今にも飛び掛からん気迫の「鬼の形相」して二人を睨み、
「ア・ン・タァ達ぃいぃ! あの同人みたいにヒン剥いてやるぅうぅぅ!」
 怒りの矛先は、照れ顔して呆ける「否モテ男子」ラディッシュにも飛び火、
「アンタも何を勘違いした「のぼせ顔」してんのさぁね! アタシぁ天世だよぉ! 「顔だけ男」のアンタなんかに誰が浮つくってのさぁねぇ!」
「!!!」
 雷を全身で浴びた様なショックを受けるラディッシュ。

 モテ期到来かと思いきや、再び地獄へ。

 部屋の隅の隅で小さく、それは小さく縮こまり、
「「「…………」」」
 もはやかける言葉を見い出せない「こじれ女子三人組」であった。

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