ステ振り間違えた落第番号勇者と一騎当千箱入りブリュンヒルデの物語

青木 森

文字の大きさ
73 / 894

1-73

しおりを挟む
 ドロプウォートとパストリスの融和? から数日後――
 
 進めど進めど、うっそうと茂る森の景色に変化は無く、城に近づいていている気配も微塵に感じられなかったが、他に頼る術を持たないラディッシュ、ラミウム、パストリスの三人は、今日も先陣切って歩くドロプウォートの知識を頼りに移動を続けていた。
 もはや定位置と化したラディッシュの背で揺られ、

「ははぁ~今日も空が、青いさぁ~~ねぇ~~~」

 呑気に、木々の間にのぞく青空を見上げるラミウム。
 先日のドロプウォートの大失態により、結局ほんの僅かしか回復出来なかったラミウムは、足の黒ずみも戻り、未だ一人で歩く事さえ出来ずに居たのである。

 穏やかな木漏れ日が降り注ぐ空を見上げたまま、
「アタシ等ぁ~飛ばされてからぁ~いったい何日経つのかねぇ~」
 暗に、城に中々着かない事を愚痴って見せたのだが、それはラディッシュとパストリスも同じであり、三人の「不安な視線」は、おのずと数メートル前を導き歩く「器用貧乏ドロプウォート」の背に向けられた。
 すると何かを察した如くにドロプウォートが前を向いて歩いたまま、

「私の計算では城に着く前に、まず「村」に着く筈ですわ」 

 憂いや陰りを感じさせない笑顔で勢いよく振り返り、
「ですから「城が見えず」に、未だ「村にも着いていない」と言う事は、方角が合っていると言う証なのですわ!」
 自信満々のドヤ顔で言ってのけた。
 しかし、

(((それって「逆方向」でも村に着かないんじゃ……)))

 心の中でツッコミを入れるラミウムたち。
 機嫌を損ねると後が面倒と思い、顔で笑って、心で不安を募らせると、人の「マイナス感情に関してダケ」は察しの良いドロプウォートが、三人の腑に落ちない笑顔にムッとして、

「私の知識に何かご不満でもぉ!」
「「「!?」」」

 よもや見透かされるとは思っていなかったラミウム達は、慌てて宥めすかす様に、取り繕う様に、
「わぁ~てるよぉ、わぁ~てるさぁねぇ、信じてるよぉ、なぁ♪」
「う、うん! 僕たち疲れ気味のせいか、つい不安になっちゃってぇ、ねぇ♪」
「はっ、はいでぇす! 信じてまぁすでぇすぅ! よろしくお願いしますでぇす♪」
 苦し紛れの笑顔。
「…………」
 しばし、疑いの眼差しを向けるドロプウォート。やがて鼻息荒く「フン」と背を向け、

『分かれば良いですのわぁ! 分かればぁ!』

 些か不機嫌そうに言い放ち、
「先を急ぎますわよぉ!」
 再び先陣切って歩き始めた。
 黙ってついて来いと言わんばかりの背に、苦笑を見合わせる三人。
 
 しかし「人の顔色を窺う事」に長けたラディッシュだけは、気付いていた。
 一見すると横柄に見える彼女の「強気な態度」が、実は「不安の裏返し」であるのに。
(かなり無理をしてるみたいだなぁ)
 その気遣いは正解で、道案内を買って出た責任の重さから、

(うぅ……何やら胃が痛いですわぁ……)

 人並みに重圧を感じ、三人分の懐疑の眼差しを背で感じつつ、
(だからと言って先導役の私までもが「不安を露わ」になど、する訳には参りませんですわ!)
 決意を新たにしたが、豊富な知識と実力を全く生かしきれていない大失態の数々から、本音の部分では焦りが募り、
(あぁ~は言い切りましたけど……実は「方角を間違っていた」なんて事はありませんわよねぇ?!)
 自問し、
(まっ、まさかぁこのまま城に着けず、永遠の放浪の旅をぉ?!)
 最悪を自答すると、おのずと悲観が首をもたげ、

(お願いですから「村さん」早く出て来て下さいませぇ~~~)

 祈る思いで歩みを進めたが、願いの強さと相反する様に、更に日々を重ねても状況に変化はなく、村の「む」の字も現れる気配はなかった。
 それでも、自信たっぷり先頭を歩いて見せるドロプウォート。
 彼女に今出来るのは、皆を少しでも不安にさせない「ソレだけ」であったから。
(はぁ……)
 心の内で大きなため息を吐き、

(やはりワタクシ……またぁまたぁやってしまいましたのねぇ……)

 浴びせ掛けられるであろう罵詈雑言の数々を妄想し、謝罪のタイミングを探しながら先頭を歩いていると、唐突に背後から、

『おい、ドロプゥ!』

 何の前触れもなくラミウムの呼び声が。
「はひぃ!」
(謝罪の機会を得る前に呼ばれてしまいましてですわぁ!)
 素っ頓狂な声を上げて背筋を伸ばすと、
「アンタぁ、どっから声を出してんのさぁねぇ?!」
 半笑いのラミウムが、定位置の「ラディッシュの背から」の上から目線のしたり顔で、
「やりゃぁ出来るじゃないさぁねぇ」
「へ?」
「「へ?」じゃないよ……アンタ気付いてないのかぁい? 「浄化領域」に入ったのさぁね」
「・・・・・・」
 頭の処理が追い付かない、キョトン顔のドロプウォート。
 一方、聞き慣れない言葉を耳にしたラディッシュは、背のラミウムに肩越し振り返り、

「ねぇ、ラミィ。「じょうかりょういき」って……何?」
「あん? あぁ~そうかい。まぁアンタが知らないのは当然さぁね」
「そうなの?」
「この世界は教会を中心に、天世のチカラで「浄化領域」ってのを作っていてねぇ、町や村、城なんかもその上に建ってんのさぁね。だから「汚染獣」や「地世のチカラ」は、簡単には町ん中にまで及ばないのさぁね」
「つまりはでぇすよ、ラディさん。ボク達が「浄化領域に入った」と言う事は、村や町が近いと言う証なんでぇす!」

 パストリスの笑顔に、
「じゃ、じゃあ僕たち、ついに戻って来れたんだねぇ!」
 ラディッシュも笑顔満面で振り返り、人知れず心労を重ねていたドロプウォートに、
「凄いよ、ドロプさぁん! 地図も無しに、僕たち生きて城に帰れるんだよぉ!」
 賛辞を贈ると、石の様に固まっていたドロプウォートが、

「よ…………」
「「「よ?」」」

「よがぁっだぁでず(良かったです)ばぁあぁあぁぁぁああぁ!」

 綺麗な顔をクシャクシャにして、大声を上げて泣き始めてしまった。
 そんな彼女を、

「あははは。僕たちが思ってたよりずっと、不安だったみたい」
「そうみたいでぇすねぇ」
「そりゃぁそぅさね。連日アレだけやらかしてりゃぁ、余程の神経無しでもない限り、不安にもなるだろぅさねぇ」

 生温かい眼差しで見守る三人であった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

【完結】能力が無くても聖女ですか?

天冨 七緒
恋愛
孤児院で育ったケイトリーン。 十二歳になった時特殊な能力が開花し、体調を崩していた王妃を治療する事に… 無事に王妃を完治させ、聖女と呼ばれるようになっていたが王妃の治癒と引き換えに能力を使い果たしてしまった。能力を失ったにも関わらず国王はケイトリーンを王子の婚約者に決定した。 周囲は国王の命令だと我慢する日々。 だが国王が崩御したことで、王子は周囲の「能力の無くなった聖女との婚約を今すぐにでも解消すべき」と押され婚約を解消に… 行く宛もないが婚約解消されたのでケイトリーンは王宮を去る事に…門を抜け歩いて城を後にすると突然足元に魔方陣が現れ光に包まれる… 「おぉー聖女様ぁ」 眩い光が落ち着くと歓声と共に周囲に沢山の人に迎えられていた。ケイトリーンは見知らぬ国の聖女として召喚されてしまっていた… タイトル変更しました 召喚されましたが聖女様ではありません…私は聖女様の世話係です

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~

けろ
ファンタジー
【完結済み】 仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!? 過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。 救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。 しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。 記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。 偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。 彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。 「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」 強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。 「菌?感染症?何の話だ?」 滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級! しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。 規格外の弟子と、人外の師匠。 二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。 これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、 【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。 互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、 戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。 そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。 暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、 不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。 凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。

処理中です...