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すると付き合いも長くなり、ドロプウォートと言う人となりを「それなり理解」するラディッシュが、向けられたままの背中から、
(本当は謝りたいんだろぅなぁ~)
心中を察して苦笑い、どちらに言うでもなく、
「大丈夫だよ♪」
笑顔を見せ、「自分に言われた」と思った二人が振り向いたのをきっかけに、
「獲った得物はドロプさんがその場で「切り身」にしてくれて、この木箱に入れてくれてるから量が少なく見えるんだよ」
「えぇ!? ドロプウォートさんが、解体処理までしてるんでぇすかぁ?!」
呆れと言うか、驚きの声を上げるパストリス。
女子に「そんな事までさせているのか」といった口振りに、
(男子としてはマズイ?!)
瞬間的に危機を悟り、
「う、うん! つっ、捕まえてスグに血抜きして解体処理した方が、肉に臭みが出にくくなるからぁ! だっ、だぁからお願いしてるんだよぉ!」
その物言いは多少言い訳がましく聞こえ、歯切れの悪さも若干気になるパストリスではあったが、新たな知識の習得に、
「へ、へぇ~そうなんですねぇ~」
感嘆の眼差しを以て木箱を見つめた。
男子ポジションの危機を乗り越えた事に、ホッと小さく安堵の息を吐くラディッシュ。
しかし、
『ソレだけでは、ありませんわよね♪』
「!」
背後から無自覚嫉妬を交えた、ドロプウォートの意地悪な声が。
「うぅ……」
カワイイ女子には明かしたくない「本当の理由」があるラディッシュは、バツが悪そうな顔をしたが、パストリスは更なる知識獲得の予感に、
「何かあるんでぇすか?!」
キラキラとした無垢な眼差しを真っ直ぐに向け、向けられたラディッシュは、
「え、えぇと……」
追い詰められ、体よく誤魔化そうかとも思ったが、
(こんな純粋な眼をした子に嘘は吐けないよぉ)
観念し、
「……が……なんだ……」
「・・・え?」
何を言われたのか、全く聞き取れなかったパストリス。
困惑気味の笑顔で、
「あ、あのぉ……今、何て……」
いよいよ追い詰められたラディッシュは引きつり顔で、
「その……動物が……その……」
「動物が?」
「……怖くて解体出来ない……」
「へ?」
「…………」
一瞬黙したラディッシュは堪らず堰を切った様に、
「だ、だってぇ! 血が出たら何か痛そうに見えるし可愛そうだからぁあぁ」
恥ずかしそうな赤面顔で絶叫すると、
「…………」
絶句していたパストリスが、
「プッ、クスッ……………アハハハハハハハ!」
人目もはばからず、初めて声を上げて笑い出し、
「わぁ、笑わないでよ、パストさぁん! これでも一応、結構悩んでるんだからぁ!」
ムクレ顔に、パストリスは笑い過ぎの涙目を拭いながら、
「ごぉ、ごめんなさいでぇす、ラディさん♪ で、でぇも……だってぇ世界を護る勇者の一人なのにぃ…………クスッ」
ツボに入った笑いを必死に堪える姿に、ラディッシュは困惑した笑みを浮かべたが、
(でも……笑顔が戻って良かったぁ)
恥は晒す事になりはしたものの、結果オーライ。
その自然な笑顔にラディッシュも救われた思いで、おもむろに木箱を手に取り、
「実はね、この木箱には、ちょっとした仕掛けもしてあるんだ」
「仕掛け?」
「ドロプさんが天法で作った氷が入れてあって、それで冷やせる様になってるんだ」
「お肉を氷でぇ?!!」
木箱の中で、氷の上に乗っかる肉塊を思い浮かべるパストリス。
時間と共に解けた出た水で、肉が水浸しになる光景を想像し、
「それだと、お肉が水浸しになるんじゃ……」
「氷は肉に直接触れないよ」
「え?」
「肉は冷気で冷やしてるんだ」
「冷気で?」
「うん。箱の中に仕切りが作ってあってね、氷と肉は別々の部屋で、溶け出た水は管を通って箱の外に落ちる仕掛けになってるから大丈夫なんだよ」
「へぇ~凄い仕掛けなんでぇすねぇ~」
「お肉を加工する時に、見せてあげるね♪」
「はいでぇす♪」
木箱を手元に笑顔を交わす二人であったが、呆然と見つめて固まるドロプウォートに気付き、
「ど、どうかしたの、ドロプさん?」
ラディッシュが声を掛けると、
「!」
すっかり蚊帳の外と化していたドロプウォートがハッと我に返り、
(なっ、何なんですのぉ、この急激な「仲睦まじい」さまはぁ!)
無自覚嫉妬に端を発する、かなり偏った思い込みから、
(よもや「お付き合い」しているなどと言う事は……流石に……)
二人の「今の関係」を知ろうと、平静を装い言葉を探り探り、
「なっ、何やら、さっ、先ほどから「ラディ」っと(親し気に)呼び合って……」
おずおず尋ねると、ラディッシュが何の後ろ暗さも感じられない笑顔で、
「あぁ~(愛称呼びは)さっきね♪」
「はい♪」
主語部の抜けたパストリスとの軽やかなデュオに、
(既にぃ二人は「お付き合い」をぉおっぉぉぉ!)
圧倒的、一方的勘違い。
(本当は謝りたいんだろぅなぁ~)
心中を察して苦笑い、どちらに言うでもなく、
「大丈夫だよ♪」
笑顔を見せ、「自分に言われた」と思った二人が振り向いたのをきっかけに、
「獲った得物はドロプさんがその場で「切り身」にしてくれて、この木箱に入れてくれてるから量が少なく見えるんだよ」
「えぇ!? ドロプウォートさんが、解体処理までしてるんでぇすかぁ?!」
呆れと言うか、驚きの声を上げるパストリス。
女子に「そんな事までさせているのか」といった口振りに、
(男子としてはマズイ?!)
瞬間的に危機を悟り、
「う、うん! つっ、捕まえてスグに血抜きして解体処理した方が、肉に臭みが出にくくなるからぁ! だっ、だぁからお願いしてるんだよぉ!」
その物言いは多少言い訳がましく聞こえ、歯切れの悪さも若干気になるパストリスではあったが、新たな知識の習得に、
「へ、へぇ~そうなんですねぇ~」
感嘆の眼差しを以て木箱を見つめた。
男子ポジションの危機を乗り越えた事に、ホッと小さく安堵の息を吐くラディッシュ。
しかし、
『ソレだけでは、ありませんわよね♪』
「!」
背後から無自覚嫉妬を交えた、ドロプウォートの意地悪な声が。
「うぅ……」
カワイイ女子には明かしたくない「本当の理由」があるラディッシュは、バツが悪そうな顔をしたが、パストリスは更なる知識獲得の予感に、
「何かあるんでぇすか?!」
キラキラとした無垢な眼差しを真っ直ぐに向け、向けられたラディッシュは、
「え、えぇと……」
追い詰められ、体よく誤魔化そうかとも思ったが、
(こんな純粋な眼をした子に嘘は吐けないよぉ)
観念し、
「……が……なんだ……」
「・・・え?」
何を言われたのか、全く聞き取れなかったパストリス。
困惑気味の笑顔で、
「あ、あのぉ……今、何て……」
いよいよ追い詰められたラディッシュは引きつり顔で、
「その……動物が……その……」
「動物が?」
「……怖くて解体出来ない……」
「へ?」
「…………」
一瞬黙したラディッシュは堪らず堰を切った様に、
「だ、だってぇ! 血が出たら何か痛そうに見えるし可愛そうだからぁあぁ」
恥ずかしそうな赤面顔で絶叫すると、
「…………」
絶句していたパストリスが、
「プッ、クスッ……………アハハハハハハハ!」
人目もはばからず、初めて声を上げて笑い出し、
「わぁ、笑わないでよ、パストさぁん! これでも一応、結構悩んでるんだからぁ!」
ムクレ顔に、パストリスは笑い過ぎの涙目を拭いながら、
「ごぉ、ごめんなさいでぇす、ラディさん♪ で、でぇも……だってぇ世界を護る勇者の一人なのにぃ…………クスッ」
ツボに入った笑いを必死に堪える姿に、ラディッシュは困惑した笑みを浮かべたが、
(でも……笑顔が戻って良かったぁ)
恥は晒す事になりはしたものの、結果オーライ。
その自然な笑顔にラディッシュも救われた思いで、おもむろに木箱を手に取り、
「実はね、この木箱には、ちょっとした仕掛けもしてあるんだ」
「仕掛け?」
「ドロプさんが天法で作った氷が入れてあって、それで冷やせる様になってるんだ」
「お肉を氷でぇ?!!」
木箱の中で、氷の上に乗っかる肉塊を思い浮かべるパストリス。
時間と共に解けた出た水で、肉が水浸しになる光景を想像し、
「それだと、お肉が水浸しになるんじゃ……」
「氷は肉に直接触れないよ」
「え?」
「肉は冷気で冷やしてるんだ」
「冷気で?」
「うん。箱の中に仕切りが作ってあってね、氷と肉は別々の部屋で、溶け出た水は管を通って箱の外に落ちる仕掛けになってるから大丈夫なんだよ」
「へぇ~凄い仕掛けなんでぇすねぇ~」
「お肉を加工する時に、見せてあげるね♪」
「はいでぇす♪」
木箱を手元に笑顔を交わす二人であったが、呆然と見つめて固まるドロプウォートに気付き、
「ど、どうかしたの、ドロプさん?」
ラディッシュが声を掛けると、
「!」
すっかり蚊帳の外と化していたドロプウォートがハッと我に返り、
(なっ、何なんですのぉ、この急激な「仲睦まじい」さまはぁ!)
無自覚嫉妬に端を発する、かなり偏った思い込みから、
(よもや「お付き合い」しているなどと言う事は……流石に……)
二人の「今の関係」を知ろうと、平静を装い言葉を探り探り、
「なっ、何やら、さっ、先ほどから「ラディ」っと(親し気に)呼び合って……」
おずおず尋ねると、ラディッシュが何の後ろ暗さも感じられない笑顔で、
「あぁ~(愛称呼びは)さっきね♪」
「はい♪」
主語部の抜けたパストリスとの軽やかなデュオに、
(既にぃ二人は「お付き合い」をぉおっぉぉぉ!)
圧倒的、一方的勘違い。
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