52 / 649
1-52
しおりを挟む
一方、絶賛「二十秒稼ぎ」真っ最中のドロプウォート。
屋根に這い上がって来る汚染獣と化した村人たちを次々殴り落とし、蹴り落とし、その様はさながら「モグラ叩き」ゲーム。
終わりの見えない攻防に、
(もう四十も過ぎましたわよねぇ?)
肩越しチラリと振り返り、
「まだですのォ!」
待ちきれずに声を上げたが、
「ッ!」
何かの気配を感じ取ると、一瞬の如き速さで二人の下に駆け戻り、
「セヤァアァ!!!」
二人を背にして気合一閃、剣を大上段から振り下ろした。
大きく飛び退く何かの影。
「「!」」
術の発動準備の為、身動きできない二人の前に姿を現したのは、地世の導師であった。
いつの間に距離を詰めていたのか。
あからさまなからかい口調で、
「あぶない、あぶない、危ないですよねぇ~♪ 危うく大ケガしちゃうところでしたよねぇ~♪」
おどけて見せ、
「思った以上にやりますよねぇ~♪ 「主席と四大」の肩書は、伊達ではない様ですよねぇ~♪」
嫌味なほどおだてたが、守るべき者が居るドロプウォートは安い挑発に乗る事も、過剰に気負う事も無く、
「オエナンサの家名に懸けて、二人に指一本触れさせませんわァ!」
剣を構え直して駆け迫り、
「しつこい肉食系女子は、好みではないのですよねぇ~♪」
変わらずの半笑いを口元に浮かべて距離を取る地世の導師を追撃しながら、
「変態を好む嗜好など、私にはありませんわぁ!」
再び大上段から斬り掛かろうとした刹那、地世の導師が懐から「掌サイズの黒い球」を取り出しドロプウォートに向かって投げ、
≪爆ッ!≫
叫んだ瞬間、黒い球が炸裂、内部に圧縮されていた黒いモヤが一気に解放され、
「こっ、これは地世の穢れ!」
咄嗟に両腕で鼻と口を覆うドロプウォート。
穢れを吸い込む事と、次の一手を警戒し、
≪天世より授かりし恩恵を以て我が眼前の敵を打ち滅ぼさん! 護りィ!≫
即座に、その身を白き輝きで覆い穢れを浄化、臨戦態勢に入ったが、
「な?!」
地世の導師は再び真横をスルー。
「同じ手に掛かるとはぁ、猪突猛進、脳筋の相手は楽ですよねぇ~♪」
「しっ、しまいましたわァ!」
慌て戻るドロプウォート。
そんな彼女を嘲るように、地世の導師は二人の目前にまで駆け迫り、
「余計なマネは、させませんですよねぇ~♪」
「まっ、間に合いませんですわぁ!」
最悪のシナリオを想像してしまうドロプウォート。しかしラミウムは「待ってました」と言わんばかりの満面の笑顔で、
『残念だったなぁボケがぁ! コチとらぁ、とうに仕上がってたんだよォオォォオォ!』
叫び上げると、白き輝きに包まれていたラディッシュの全身から目も眩む程の白光が全方位にほとばしり、
汚染獣と化した村人たちを、
「「「「「「「「「「ゴアぁ?!」」」」」」」」」」
夜闇に染まっていた村を、森を、白で塗り潰していき、光の直撃を全身に浴びた地世の導師は、体の中から絞り出されるが如くに口元から黒煙を昇らせ、
「グゥクッ!」
呻きとも、悲鳴ともとれる声を漏らして負け犬の三文セリフよろしく、
「きょ、今日の所はココまでの様ですよねぇ~♪」
消える様に全身を黒い塵と化し始めたが、
「逃がしませんですわァ!」
ドロプウォートが背後から一閃。
確かな手ごたえと共に、
「クッ!」
短い悲鳴を上げ左腕を押さえたが、全身の霧散は止まらず、
「お待ちなさァい!」
追撃で放った一刀に、もはや手ごたえは無く、
「覚えておきますよ、四大の娘ぇ~♪」
消えかけの地世の導師は皮肉交じりの虚勢を残し、
「またお会いしましょうですよねぇ~♪」
その姿を完全に消失させようかという刹那、
『待ちなぁパトリニアァ! アイツが生きてんのかァい!』
ラミウムの悲痛にも似た呼び声に、
「!」
一瞬驚いた様な動きを見せたが、笑みだけ残して無言のうちに消えて行った。
返らなかった答えに、
「…………」
ただ、立ち尽くすラミウム。
ラディッシュは体から放たれる「白き輝き」が次第に収まり見せる中、初めて見る、その悩める彼女の横顔に、
(パトリニアって「ローブの人の名前」なのかなぁ……それに「アイツ」って……誰の事だろ……)
何故か胸は小さく痛み、ドロプウォートは、
(何ゆえラミィは、地世の導師の名前を知っていましたの……それに「パトリニア」……何処かで聞いた事がある気が致しますわ……)
言い知れぬ「不安と疑念」が首をもたげ、悲愴感漂うラミウムをそれぞれの思いで見つめていたが、分からない事を勝手な想像で悶々と考えていても無用の軋轢を生むだけ。
気持ちを切り替える様に小さく息を吐き、
「それに致しましても……」
屋根の上から白み始めた村を改めて見下ろし、
(恐ろしきは、選ばれし百人の天世人の「本気」ですわ……)
首席誓約者候補であり、四大貴族令嬢でもあり、並外れた能力を有する先祖返りでもあるドロプウォートは、何かを目にして思わず息を呑んだ。
屋根に這い上がって来る汚染獣と化した村人たちを次々殴り落とし、蹴り落とし、その様はさながら「モグラ叩き」ゲーム。
終わりの見えない攻防に、
(もう四十も過ぎましたわよねぇ?)
肩越しチラリと振り返り、
「まだですのォ!」
待ちきれずに声を上げたが、
「ッ!」
何かの気配を感じ取ると、一瞬の如き速さで二人の下に駆け戻り、
「セヤァアァ!!!」
二人を背にして気合一閃、剣を大上段から振り下ろした。
大きく飛び退く何かの影。
「「!」」
術の発動準備の為、身動きできない二人の前に姿を現したのは、地世の導師であった。
いつの間に距離を詰めていたのか。
あからさまなからかい口調で、
「あぶない、あぶない、危ないですよねぇ~♪ 危うく大ケガしちゃうところでしたよねぇ~♪」
おどけて見せ、
「思った以上にやりますよねぇ~♪ 「主席と四大」の肩書は、伊達ではない様ですよねぇ~♪」
嫌味なほどおだてたが、守るべき者が居るドロプウォートは安い挑発に乗る事も、過剰に気負う事も無く、
「オエナンサの家名に懸けて、二人に指一本触れさせませんわァ!」
剣を構え直して駆け迫り、
「しつこい肉食系女子は、好みではないのですよねぇ~♪」
変わらずの半笑いを口元に浮かべて距離を取る地世の導師を追撃しながら、
「変態を好む嗜好など、私にはありませんわぁ!」
再び大上段から斬り掛かろうとした刹那、地世の導師が懐から「掌サイズの黒い球」を取り出しドロプウォートに向かって投げ、
≪爆ッ!≫
叫んだ瞬間、黒い球が炸裂、内部に圧縮されていた黒いモヤが一気に解放され、
「こっ、これは地世の穢れ!」
咄嗟に両腕で鼻と口を覆うドロプウォート。
穢れを吸い込む事と、次の一手を警戒し、
≪天世より授かりし恩恵を以て我が眼前の敵を打ち滅ぼさん! 護りィ!≫
即座に、その身を白き輝きで覆い穢れを浄化、臨戦態勢に入ったが、
「な?!」
地世の導師は再び真横をスルー。
「同じ手に掛かるとはぁ、猪突猛進、脳筋の相手は楽ですよねぇ~♪」
「しっ、しまいましたわァ!」
慌て戻るドロプウォート。
そんな彼女を嘲るように、地世の導師は二人の目前にまで駆け迫り、
「余計なマネは、させませんですよねぇ~♪」
「まっ、間に合いませんですわぁ!」
最悪のシナリオを想像してしまうドロプウォート。しかしラミウムは「待ってました」と言わんばかりの満面の笑顔で、
『残念だったなぁボケがぁ! コチとらぁ、とうに仕上がってたんだよォオォォオォ!』
叫び上げると、白き輝きに包まれていたラディッシュの全身から目も眩む程の白光が全方位にほとばしり、
汚染獣と化した村人たちを、
「「「「「「「「「「ゴアぁ?!」」」」」」」」」」
夜闇に染まっていた村を、森を、白で塗り潰していき、光の直撃を全身に浴びた地世の導師は、体の中から絞り出されるが如くに口元から黒煙を昇らせ、
「グゥクッ!」
呻きとも、悲鳴ともとれる声を漏らして負け犬の三文セリフよろしく、
「きょ、今日の所はココまでの様ですよねぇ~♪」
消える様に全身を黒い塵と化し始めたが、
「逃がしませんですわァ!」
ドロプウォートが背後から一閃。
確かな手ごたえと共に、
「クッ!」
短い悲鳴を上げ左腕を押さえたが、全身の霧散は止まらず、
「お待ちなさァい!」
追撃で放った一刀に、もはや手ごたえは無く、
「覚えておきますよ、四大の娘ぇ~♪」
消えかけの地世の導師は皮肉交じりの虚勢を残し、
「またお会いしましょうですよねぇ~♪」
その姿を完全に消失させようかという刹那、
『待ちなぁパトリニアァ! アイツが生きてんのかァい!』
ラミウムの悲痛にも似た呼び声に、
「!」
一瞬驚いた様な動きを見せたが、笑みだけ残して無言のうちに消えて行った。
返らなかった答えに、
「…………」
ただ、立ち尽くすラミウム。
ラディッシュは体から放たれる「白き輝き」が次第に収まり見せる中、初めて見る、その悩める彼女の横顔に、
(パトリニアって「ローブの人の名前」なのかなぁ……それに「アイツ」って……誰の事だろ……)
何故か胸は小さく痛み、ドロプウォートは、
(何ゆえラミィは、地世の導師の名前を知っていましたの……それに「パトリニア」……何処かで聞いた事がある気が致しますわ……)
言い知れぬ「不安と疑念」が首をもたげ、悲愴感漂うラミウムをそれぞれの思いで見つめていたが、分からない事を勝手な想像で悶々と考えていても無用の軋轢を生むだけ。
気持ちを切り替える様に小さく息を吐き、
「それに致しましても……」
屋根の上から白み始めた村を改めて見下ろし、
(恐ろしきは、選ばれし百人の天世人の「本気」ですわ……)
首席誓約者候補であり、四大貴族令嬢でもあり、並外れた能力を有する先祖返りでもあるドロプウォートは、何かを目にして思わず息を呑んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
45
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる