お嬢様がほしい。騎士は一計案じる事にした

一ノ清たつみ(元しばいぬ)

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 ベアトリーチェに優しく慰めてもらったたその日の夜はというと。それはもう、アルバーノが我慢なんてできるはずもなかった。

「ね、ねぇアルバーノ? 昨日も私達シたわよね?」

 すっかり服を剥かれてベッドに押し倒されているベアトリーチェが、アルバーノに向かって困惑気味に言った。

「ええ、シましたね」
「流石に、毎日というのは……」
「お嬢様が甘やかしてくれるとおっしゃったので、昼間からずっと楽しみに……」

 それはアルバーノの心からの言葉だった。午前中は野郎どもへ無駄に気を使ったせいか、流石の彼も確かに疲労していたのだ。そんな彼を、昼間のベアトリーチェは優しく介抱した。
 疲れている旦那様の為、ベアトリーチェ自身がアルバーノを甘やかす。そう宣言したのは紛れもない事実だ。

「ええと……」
「もちろん、昨日のように激しくはシません。ゆっくりと愛し合いたいのです」

 アルバーノはベアトリーチェを大切に想っている。いくら自分がしたいと思っていても、彼女が嫌だと思えば止めるつもりは十分にあったのだ。
 手で優しくその頬を撫で、反対側の頬に口付けを送りながらそう言えば、ベアトリーチェは少しだけ警戒を解くように聞き返した。

「本当に?」
「ええ、もちろん。ベアトリーチェ様が途中で止めろとおっしゃるのであれば止まりますよ。私がちゃんと我慢できるとご存知でしょう?」
「……ええ、そうね。貴方は我慢強いもの」
「はい。……ベアトリーチェ様、この後はどうなさいますか? 私がこのまま続けても構いませんか?」

 ベアトリーチェのすぐ耳元で甘えるように囁けば、その身体が僅かに震えたのが分かった。もうひと押し。アルバーノは昂る心を気力で押さえつけながら、最後の言葉を囁く。

「ビーチェ……愛しております」

 言いながらそっと、ベアトリーチェの唇に口付ける。ゆっくりと長く、触れるだけの甘い口付けだった。
 唇が離れる間際、名残惜しくてちろりと覗かせた舌で彼女の唇を僅かに舐めれば、彼女が大きく息を乱したのを感じた。

「ビーチェ?」

 たったのそれだけで真っ赤になってしまったベアトリーチェを、愛おし気に眺めながら微笑む。こんな至近距離から彼女を見ていられるのだと思うと、それだけでアルバーノは胸が一杯だった。

「っもう、アルバーノったら……分かったわ、いいわよ。もう……貴方にそうやって見つめられると、私も堪らなくなるのよ」
「!」
「奥が、疼くの……」

 その最後の一言に、アルバーノは雷に撃たれたような衝撃を覚えた。己の分身は、すっかりヤル気満々である。
 
「……ベアトリーチェ様、最後のは反則ですよ」
「どうして?」
「貴女様のココに、早く種付けしてしまいたくなるからです。……私の子を孕んでほしいと。一刻も早く、吐き出してしまいたくなるのです」

 恍惚とした表情でそんな事を言いながら、ベアトリーチェの腹部にそっと手で触れる。途端に彼女がびくりと震えたのがアルバーノにも分かって、それがますます彼を興奮させた。

「いやだわ、恥ずかしい事言わないで」
「そんなベアトリーチェ様もお美しい……」
「もう、アルバーノったら――!」

 そんなやり取りの後で。二人はどちらからともなく唇を合わせた。先程のような触れるだけのものではなく、お互いの身をしっかりと絡めながらの濃厚なものだった。

 アルバーノは上に覆い被さるようにしてベアトリーチェを抱きしめ、彼女もまたアルバーノの首に腕を回していた。口付けをしながら、すっかり張り詰めてしまっているアルバーノ自身をベアトリーチェのそこに擦り付けるようにして腰を動かす。自分だけではない、彼女もまた興奮しているのか、ぬるぬるとした滑りをアルバーノは感じていた。
 擦られる度に震え、自分からも腰を動かそうとしているベアトリーチェに、一層愛おしさが募る。

 まるで、お互いの身が溶け合ってしまっているのではないかとすら錯覚した。時折漏れ出る熱い吐息は、二人の興奮を物語っているかのようだった。

「ふぅ、ん……アルバーノ、お願い、早くキて。今ので、私も貴方が欲しくなってしまったわ」

 とろんと蕩けたような表情で、ベアトリーチェがうわ言のようにささやく。そんな彼女の痴態に、アルバーノはますます煽られていった。

「っ、仰せのままに……ナカを拡げてから挿れ――」
「それも要らないわ」
「!」
「昨日も散々シているもの。……さっきので、貴方のカタチを思い出してしまっているわ……貴方なら、私を傷付けずにちゃんと挿れてくれるでしょう?」

 突然のベアトリーチェの言葉に、アルバーノの心臓が跳ねた。言われた通り、アルバーノは昨夜も散々ベアトリーチェのナカを貪ったのは事実であるのだが。まさか、ここまで欲してくれるとは予想外だった。
 
 自分の腕の中でのみ淫らに華開く赤い薔薇。
 ベアトリーチェにそのようなイメージを覚え、アルバーノは何とか己の興奮を抑えるように、ほぅっと深く息を吐き出したのだった。

「仰せのままに。ゆっくり、いきます。……痛かったらちゃんと言ってくださいね」

 アルバーノの言葉に、ベアトリーチェがこくりと頷き返したのを見てから。アルバーノは昂りきった欲望をナカへと進めていった。

「んあっ、ああっ、くる……!」
「ッ!」

 ベアトリーチェのナカが、アルバーノ自身に絡み付くように蠢いている。掴んだら離さないとでも言うように、アルバーノの分身が奥へ奥へと誘われていった。腰を少し進めるごとに、アルバーノの背筋に震えが走る程気持ちが良かった。

 そして、同じ程感じているのだろうベアトリーチェもまた、恍惚とした表情を隠しもせず、妖艶に腰をくねらせながらそれを受け入れていった。

「はぁ……、これで、全部ですよ」

 とうとう最後まで挿れきったアルバーノは、乱れた息を整えながらベアトリーチェに向かってそっと声をかけた。そのベアトリーチェはと言えば、目を閉じて上を向きながら何かに耐えるような表情をしている。
 そこにアルバーノの声が聞こえたのか、彼女はそっと目を開くと、アルバーノに向かって柔らかく微笑みかけた。

「ええ、そうみたいね。……今日は何だか、いつもと違うわ」
「違う、ですか?」
「そうなの。……弱っている貴方を見たせいかしら。貴方を抱き締めたくて仕方ないわ。身体がとても疼くの……」

 それはそれは盛大な殺し文句だった。絶句するアルバーノを前に、更に彼女の言葉は続いた。

「ねぇ、アルバーノ。このまま私を抱き上げてみてくれる?」

 そう言うと、ベアトリーチェはアルバーノに向けて両腕を広げた。言葉通りにこのまま抱き上げてくれと言うのだろう。だが、戸惑うアルバーノはすぐには動けなかった。

「ねぇアルバーノ、早く」

 甘えるような催促の声がアルバーノの耳朶を打つ。ようやくハッとして言われるがままベアトリーチェを、座った自分の腰の上に乗せるように抱き上げてみせた。

「んっ」

 彼女の自重でアルバーノが深く奥を刺激するのか、僅かに震えながら声を漏らす。そうして高くなった位置から、ベアトリーチェはアルバーノの首に再び腕を回した。

「はぁっ……今日は、このままシたいわ」
「えっ」
「こうやって、しっかりと抱き合いながらスるのもいいと思わない? 今日は本当に、私がアルバーノを甘やかしたいのよ」

 ベアトリーチェは言いながら、密着するようにアルバーノへと身体を寄せた。今までにないほど互いの体が触れ合っている感覚があった。
 呆然とするアルバーノも、無意識にベアトリーチェの背に腕を回した。
 
「こうして、お互いに身体を寄せて抱き合うと安心しない? 私、実はこうされるのがとても好きなの。……お母様が存命の頃、よくこうしてくれたわ。それがとても幸せだった……。アルバーノとはせっかくこうして夫婦になれたのだから、この幸せを貴方にも分けてあげたいの。……いつも、貴方には抱き締められてばかりだったから」

 ベアトリーチェはそんな事を口にしながら、アルバーノの頭を包み込むようにして抱き締めた。まるで話にあった母君のように。
 その温もりがどうにも心地良くて、アルバーノは彼女の胸にそっと頭を預けたのだった。
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