お嬢様がほしい。騎士は一計案じる事にした

一ノ清たつみ(元しばいぬ)

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 自分の手の中で淫らに腰を振っている彼女を前に、アルバーノは歓喜に打ち震えていた。
 公爵家に拾われ、子供の頃から願い続けてきた望みが、今ようやく叶ったのである。これまでコツコツと積み上げてきた信頼と人望が身を結んだ。

 グチュグチュとはしたない音を立てながらひたすら腰を打ち付ける。己の肉棒を舐めしゃぶるようなナカの動きが、アルバーノを必死に求めているように思えて、より一層自身が昂るのが分かった。何度も何度も味わうように腰を打ち付けた。

「ああ……、本当にお美しい」
「はあああっ! おく、あっ、何かきているの! アルバーノ、アルバーノッ!」

 ひくひくと蠢くベアトリーチェのナカに絶頂の兆しを見つける。アルバーノはより一層奥へと、その欲望を穿った。

「はぁ、ビーチェ、お嬢様……大丈夫ですよ……そのまま、イッてくださいっ」
「ん、くんんっ、あ、ッああああああっ――‼︎」

 一際奥に太いモノを叩き付けた途端、ベアトリーチェが極まる。同時にナカを強く締め付けられ、その刺激に危うく達しかけた。それを何とか耐えきると、アルバーノは己の下でびくびくと震えながら息を整えている愛しい人へ、触れるだけの口付けを送った。

「ビーチェ……大丈夫ですか? 気持ち良かったですか?」

 そっと優しく言葉をかければ、緩く微笑みながら首肯される。そんな小さな仕草にすら喜びを感じながら、アルバーノは一層愛おしさを募らせていった。

 ここに至るまでは長く、そしても大きかった。それらを蹴散らしてここまで到達してきたが、それに罪悪感など湧かない。あのような者はそもそも、ベアトリーチェの夫として相応しくなかったのだ。アルバーノはそんな本心を心の内のみに留めながら、目の前の美しい人に深く口付けた。

(俺のけしかけた男爵の女なんかに心奪われるような者が、ベアトリーチェ様の隣に立つに相応しいわけがない。あの男は元々が不相応だった)

 だからアルバーノは、今回の微かな綻びを利用してその仲を引き裂いたに過ぎない。元々その程度の繋がりでしかなかったのだ。自分とベアトリーチェとの関係には酷く劣る。
 例え王太子殿下だったとしても、アルバーノのお眼鏡には敵わなかったのである。だからこそこうなるに至った。

 カルロス殿下の隙を狙い、その心をベアトリーチェから引き剥がす。そして、ベアトリーチェの行ったに過ぎない悪戯に手を加える。たったのそれだけで二人の絆は消え失せた。その程度で壊れる絆など、ベアトリーチェには必要ない。

 二人の仲がもっとより堅固なものであったのなら、カルロスがもっと己の立場を弁えていたのであれば、アルバーノも大人しく身を引いていたはず。
 しかし、実際にはそうではなかった。信用も忠誠も剣技も何もかも、アルバーノがカルロス殿下の上を行く。だからこうして今、アルバーノはベアトリーチェを手に入れたのである。
 こんな事もあろうかと徹底的に準備を重ねて今、それが実ったのである。ひどく感慨深いものであった。

「ベアトリーチェ様……」

 熱く息を吐き出しながら、愛おしげに口付けを降らせる。ここに至る経緯はどうあれ、アルバーノは心底ベアトリーチェの僕である。彼女に命を絶てと言われれば喜んでそうする。靴を舐めろと言われればいっそ喜ぶ。
 
 他人が見ればそれがどう映るか、言われなくても自分でも分かっている。市井で暮らすなどは皆、このザマを見ると気味悪がる。それを分かっているからこそ、アルバーノはこうして我慢して抑えていのだ。

「ん……アルバーノ」

 アルバーノがツラツラとそんな事を考えていた時だ。息を整えていたベアトリーチェから声がかかった。それだけでアルバーノは顔のニヤつきが抑えられない。何とか爽やかに見えるように工夫しながら返事を返した。

「どうしました? どこか辛いですか?」
「はぁ……少しだけ、疲れたわ。でも……」

 少し言葉を切り、恥じらうように言い淀んだ後で。ベアトリーチェはとんでもない事を言い出した。

「貴方はまだ一度も、達していないわ……その、ええと……私も頑張るから、貴方も好きに動いてちょうだい? 私ばかりが乱れるのは嫌だわ」
「⁉︎」
「んんっ、はあ……また大きく、なったわね。びくびくしている」

 嬉しそうに笑ったかと思うと、ベアトリーチェは緩く腰を揺らされる。何もかもが初めてであるはずなのに、このひとの仕草全てがアルバーノのツボを突いてくる。
 こんな事までされてはもう、アルバーノも限界だった。

「お嬢様……貴女は悪い子ですね」
「ふふっ……悪い子は嫌いかしら?」
「っ、……嫌いなわけないでしょうっ! 俺もここまで煽られてしまったら止まりません。覚悟、なさってくださいね」
「ふふふ……私も頑張るわ」

 美しく妖艶に笑うベアトリーチェに衝動のままに口付けて、ゆるゆると動きを再開する。始めは傷付けないようにゆっくりと。そこから段々と、自身の欲望を叩き付けるようなものへと変わっていく。

「んんっ、あ! あんっ、く、ああっ!」
「もう、止められませんからね、――俺ので鳴いてください」
「ひあぁっ!」

 ベアトリーチェの細腰を鷲掴みながら、最奥を抉るように叩き付ける。彼女の感じる所に擦り付けるのも忘れなかった。そこを抉るたびにナカがうねり、アルバーノの興奮を益々煽った。初めてとは思えないほど妖艶で可憐で、乱れ悶える様が美しいと思った。普段の紳士ヅラも忘れ、アルバーノは獣のように求めた。

「っんん、は、激しっ、ああああっ!」
「は、はっ、あ、お嬢様……奥に、出します。全部、俺のを呑み込んで、早く孕んでください。……おれ、ので――ッ‼︎」
「あ、はあっ、んん――!」

 最奥に叩き付けながら欲望を吐き出す。腰が震えるほど気持ちが良くて、出しながら何度も何度も種を擦り付けるように腰を動かした。すっかり吐き出し切ってしまうと、それを悦んで受け止めてくれたベアトリーチェへと再び口付けを送った。

「は……ビーチェ、ベアトリーチェ様……愛しています」

 手に入れた美しい彼女を優しく愛でながら、アルバーノはうっそりと微笑んだ。
 ここまで来たらもう、誰も自分達の邪魔はできない。その事実が途轍もなく嬉しかった。

「もう、俺のものです。離しませんよ」

 二度目の絶頂ですっかり疲れきってしまったベアトリーチェを優しく介抱しながら。アルバーノは耳元で囁くと、その腕の中に閉じ込めたのだった。


 ◇ ◇ ◇


 アルバーノは王城の中を突き進んでいた。昨晩の名残など何一つ残さず、毅然とした騎士の姿で長い長い廊下を闊歩していた。

 城に仕える侍女などは、アルバーノの姿を見る度に熱く溜め息を吐き出す者が多いのを彼は知っている。
 彼女達からは、何度か夜の誘いを受けた事があった。けれども当然ながら、アルバーノはベアトリーチェ一筋で。分厚い紳士の面を被りながら優しく断るのが常だった。
 だが、その丁寧な断り方とフォローが彼の更なる人気を呼んだ。強くて忠誠心の篤い、素晴らしい騎士。アルバーノはその噂を聞くたびにほくそ笑むのだ。

 公爵家などではない、ベアトリーチェに仕えるその身を輝かせるのすら、アルバーノにとっては仕事の内の一つだった。全ては愛しい彼女の為。ベアトリーチェが公爵家を離れた以上、それも無用にはなったが。利用しない手はない。
 己の美しさを十分理解した上で、アルバーノは突き進んでいた。向かうは国王との謁見の場。最後の仕上げだとばかりに、アルバーノは己に気合いを入れていた。
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