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2-4*
しおりを挟むエドヴァルドがハッと気付いた時には、彼は自室のベッドに寝かされていた。何故だか頭がクラクラとして、体が火照って熱かった。先程まで誰かと大切な話をしていた気がして、けれど気を抜けばぼんやりとしてしまう頭は碌に働いてくれない。
ゆっくりと体を持ち上げて起き上がる。どうやら体調が悪い訳ではないようで、しかしなぜだか、腹の辺りが熱かった。
何かが自分の体に起こっている。それが何なのか、理由も判らず不安になる。どうにかして、この熱をどうにかしたかった。
そして、こんな時に何故だか。
エドヴァルドはアレクシスの事を思い浮かべる。あの両腕に包まれて抱き締められると、不安も何もかも溶けてしまう。それが今は無性に欲しかった。
ここの所、いつ何処に居ても、エドヴァルドはアレクシスの事を考えてしまう。
今の自分が生きているのは、アレクシスがそう望んだから。一度死んだ己に再び生を与えたアレクシスが、エドヴァルドと共に有り、そして共に幸せになる事を願った。だからこそエドヴァルドは今も生き、アレクシスの隣に居る。
とうに潰えたはずのこの命。彼が望むのならば、エドヴァルドは喜んでこの身を差し出せる。二人の間に子供を望むのならば、その母胎となる事もやぶさかではない。ただ、そんなエドヴァルドの気持ちを、当のアレクシスが理解しているのかどうか。エドヴァルドは知らなかった。
今はどうしてだか、アレクシスが欲しくて欲しくて堪らなかった。早くあの両腕に抱き締められたい。口付けをして欲しい。傍に居て欲しい。
そんな事を願っていたからだろうか。
突然、魔王アレクシスがその場に現れたのだ。酷く慌てた様子で、部屋の中に飛び込んでくる。
「おい、エドヴァルド! 大丈夫か!? 何をされた!」
入るや否や、アレクシスは叫びながら探していた。
エドヴァルドの事となると周囲など目に入らないのか、部屋の外でオロオロとする侍女の姿が一瞬見える。けれどもエドヴァルドには、最早アレクシスの姿しか見えなかった。
慌てて駆け寄ってくるアレクシスに、エドヴァルドは微かに微笑む。
眉尻を下げ、心配そうにベッドに乗り上げ、そう尋ねてくるアレクシスが、愛おしくて仕方がなかった。
エドヴァルドの頬を、アレクシスが包み込む。それが気持ち良くて、彼の心配をよそに、エドヴァルドは目を細めた。
「大丈夫なのか?」
「アレクシス」
「ああ、何だ? 何でも言ってくれ。何をしてほしい」
心配そうに言ったアレクシスの頬に手を寄せて、エドヴァルドは言う。ジッと燃えるようなその目を見つめて、彼は嬉しそうに言った。
「君は、俺との子供が、欲しいのかい?」
「!!」
「魔人になった今なら可能だと、聞いた気がする……もし、アレクシスが望むなら、俺もーー」
そこから先は、エドヴァルドは言わなかった。けれどそれだけでアレクシスにはちゃんと伝わったようで。アレクシスははっと息を呑むと、しばし言葉を失った。
けれど、その目をジッと見つめていたエドヴァルドには分かった。それは彼も望んでいる事なのだろうと。
その返事を急かすように、エドヴァルドがそっと口付けると、アレクシスは何かに堪えるように息を詰めた。
その目に浮かんでいる情欲の炎が、一気に高まっていくのをエドヴァルドは感じていた。
「当たり前、だろう。欲しくて欲しくて堪らないっ」
「良かった。なぁ、アレクシス……くれるかい?」
そこからはもう、お互いの事しか目に入らない。互いを愛し合う事しか考えられなくなっていた。
まるで獣のように口付けを交わし、邪魔な衣服を取り払った。混じり合うように体を寄せ合い、互いが互いの欲望を高めていく。
すっかり育ちきったアレクシスのものがエドヴァルドの中に挿入る頃には、待ちに待った刺激に体中が震えた。ゆっくりと背後から、エドヴァルドの中を割り裂くように、アレクシスは犯していった。
「ん、んんんっ、あっ! く、るっ、アレクシス――!」
「ああ……大丈夫だ、エドヴァルド。とても、中は柔らかい。んっ……私を、受け入れる準備は、すっかりできていたんだな。呑み込まれるようだ。遅くなって、悪かった」
「んっ!」
覆い被さるようになりながら耳元で囁かれ、エドヴァルドは腰が抜けそうになる程の興奮を覚えた。
ゆっくりと律動しながら、徐々に奥へと侵入してくる。それをはっきりと感じてしまって、エドヴァルドは悶えていた。早く早く、奥にまで欲しい。それこそ、二人が望む子供ができてしまうまで。何度も何度も奥へ、注いで欲しくて堪らなかった。
「あ、あぁぁっ、んっ、んんんっ――!」
「はっ――エドヴァルド、エド……」
「ん、ああっ、……アレック、もっと、おく……はやく、届かない」
「待てっ、乱暴にはしたくない、ゆっくりいくんだ」
「んんんっ、足りない、欲しっ……」
煽り煽られぐちゅぐちゅと何度も何度も腰を打ちつけられながら、時にその腰に尻を押し付け、互いの名前を呼んで口付けを交わす。
最早アレクシスと中まで溶け合ってしまっているかのように感じられて、エドヴァルドは言いようのない幸福感を覚えていた。
アレクシスの宥めるような声を聞きながら、何度も何度も中を擦られる。まるで獣がそうするような体勢で犯されていると、エドヴァルドは倒錯的な気分になった。
まるで、その人のメスとして支配下に置かれているかのような。実際、エドヴァルドはアレクシスによって半分は造られているようなもの。実質的に、エドヴァルドはそもそもアレクシスのものなのだ。それを今、まざまざと目の前に突き付けられている。
自身がマゾヒストになったつもりはなかったけれど、アレクシスがこうして孕ませようとしているのが自分だけだと思うと、エドヴァルドは何とも言えないゾクゾクとした気分を覚えるのだ。
自分はもう他者の為ではなく、自分がしたいように生きる事ができる。それがただただ嬉しかった。
すっかり力の入らなくなってしまった上半身の代わりに、腰を高く上げさせられ、上から叩き付けられるように犯された。
エドヴァルドの腹には、何度か吐き出してしまった精液がダラダラと筋を作ってはそこを汚している。閉じ切れなくなった開きっぱなしの口から、透明な唾液が垂れた。
もう何も考えられない程、エドヴァルドは何もかもを快楽に塗り潰されてしまっていた。ぴくりとも体を動かすことができない。叩き付けられる度に与えられる快楽に、頭の中がバチバチと弾けていた。
そんなエドヴァルドの肩に置かれているその手が、エドヴァルドの体をその場に固定している。強く強く腰を押し付けて、孕むためのそこに侵入するその瞬間を見計らっているのだ。
「うう、ん、はぁ……」
「はぁ……、エドっ、大丈夫だ……もうすぐ、そこだ」
アレクシスもすっかり熱に犯されていて、浮ついたような声音がひどく艶やかだった。
「この、奥だ。深い所まで犯してしまうには、こうしてすっかり力が抜け切ってしまわないと辛い。だから何度も、吐き出してもらった」
「うんんっ!」
アレクシスは言いながらエドヴァルドの分身をその手で擦り、ビクビクと震えた体の更に奥へと腰を進めた。きっとそうされている本人は、今どういう状態であるかも分かっていないのかもしれない。強請ったのは彼自身ではあるが、孕むために自分がどうなってしまうのか、全く理解していなかったのかもしれない。
「奥にまで到達するのは、大変なんだ……エドにも負担をかける。だから、そうしてこなかった……まさか、こんなにも望んでくれていたなんて」
「んっ!」
エドヴァルドのその耳元で、興奮したようにアレクシスが言えば、彼は小さく悲鳴を上げた。最早全身が性器ほどに敏感になってしまっているのだろう。何をしても、喘ぎ声にしかならない。
それを殊更愛おしく思いながら、アレクシスは更に腰を進めていった。
そしてとうとう。
奥の入り口を抜ける。
ぐぷんっ、と音がしそうなそんな感覚で、アレクシスはとうとう侵入を果たした。
その途端、閉じることもできないエドヴァルドの口からは、悲鳴にも近い嬌声が飛び出た。
「っああああーーっ!」
「っ……今、挿入った……これで、きっと望むように孕める、エドヴァルド」
最早二人とも汗に濡れ、アレクシスは必死で何度も、そこへ目掛けて腰を叩き付けていた。奥へ、孕ませるためのそこへ、種子を注いでやりたい。本当の意味で自分のものにしてしまいたい。アレクシスはその一心だった。
彼は最早自分のものだという、そのエドヴァルドの言葉を信じていない訳ではない。そうではないが、本当にそうなのだという二人の証が欲しかった。互いに互いが唯一だという、その証が。手に取れる証が。
何度も何度も奥に出入りを繰り返し、エドヴァルドはアレクシスのもので快楽に濡れている。擦る度にその体は甘イキを繰り返し、喘ぎを漏らしている目の前の人に、アレクシスは益々愛おしさを募らせていった。
正しさに溢れていたこの男の心を汚し、体まで汚し尽くしたというその事実が、アレクシスを堪らない気持ちにさせた。
あんな顔は二度とさせるまい、誰にも渡したくない。その一心だった。
エドヴァルドの腰が浮いてしまうほど奥の奥にまで叩き付けて。そんな彼が達してしまったその勢いで。
「ひっ、ああああああっ……!」
「ん、んんっ……!」
アレクシスもとうとう、何度目かの絶頂を迎えた。奥の奥で、種子を擦り付けるように吐き出す。
それまでに何度か出しているにも関わらず、長い長い吐精にアレクシスは唸った。まるで本能に任せる獣のように、孕ませるという本来の目的のために。幸福感に酔いしれながら。
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