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黄昏の吸血鬼
75.人に素直に*
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後ろから突かれるたび、ジョシュアの口からは堪えきれなかった声が溢れ出た。
散々、後孔を指で捏ねられ撫でられ弄り回されてから、イライアスの固くて張り詰めたものを突き立てられた。それがジョシュアの中で縦横無尽に暴れ回っている。
「ひあっ、……あ、ああっ!」
その剛直が中にある一点を掠めると、頭が痺れるような快楽をジョシュアへともたらした。ぐじゅぐじゅとはしたない音をたてながら、何度も何度も同じ場所を突かれる。
獣みたいに四つん這いになったまま犯されている。時折背後から聞こえる息を詰めたような声に何とも言えない気分になりながら、ジョシュアの頭はすっかりふやけてしまっていた。
「気持ちいいねぇ……わかる? ジョシュア、自分から腰、振ってるよ」
言われている言葉の意味が分からなかった。いや、分かっているのだろうけれども、それを否定したい自分がいた。恥ずかしいとは思うのに、今更自分の意思ではやめられなかったのだ。セックスがこんなに気持ちいいと思うのは、この男が初めてだったから。
「それに中、ヒクヒクしてる。すごい、いやらしい」
「んうっ……も、いうなっ」
「どうして? 言われるの好きでしょ?」
「んっ、あああっ!」
ズバリと言われて、ジョシュアは益々中を締め付けてしまった。こうして繋がっていては、イライアスに隠す事もできない。
声をかけられるのは好きだった。自分が一人ではないと意識できるから。例え眉根を顰めたくなるような妙な事を言われても、それがイライアスだと思うと何故だか許せてしまう。
「ああー、気持ちいいねぇ、ジョシュ……ね、後ろ向いて? キスしよ、キス」
「ふ、う……、んむっ」
この男がこうして自分に触れようとするのは、純粋に好意なのだというのは分かった。数日離れてみてそれが身に沁みた。普通はあんなに部屋でベタベタと触れ合わないし、当然身体を重ねる事だってしない。ラザールと部屋を共有した事で、ジョシュアにもその確信が持てた。
元々人懐こい性格ではあるのだろうけれども、ああも距離を詰めるのが自分だけなのには当然気がついている。そういうイライアスから与えられるものはどうしてだか心地よく、離れがたくさえ思われる。
こうやって請われるがまま、時折肌を重ねるようになってしばらく経つが。イライアスの優しさにつけ込んで、ジョシュアは未だ何も言えずにいる。今はそれが、ひどく心苦しく思われるのだ。
「イライアス」
「ん? どうしたの?」
「まえ、からがいい」
「……今日は随分と、」
ジョシュアがそう言って要求すると、イライアスは息を詰めた。そう呟いたかと思うとずるりと昂りを抜き去る。その瞬間にはジョシュアの背がぶるりと震えたが、すぐに裏返され、片脚をイライアスの肩へと引っかけられた。
いつもより少し、余裕のなさそうな表情がジョシュアにも見えた。こんな顔をさせているのが自分だと思うと、悪くないような気がした。
「今日の君は少し、しおらしくて素直だね。数日ぶりなのもあるし、余裕、あんまないかも」
イライアスが、言いながら笑おうとして失敗したような顔になる。そんなイライアスが少しおかしくて、ジョシュアもそこで笑ってしまった。
先程出て行ってしまったものが、再び中に押し挿ってくる。最初とは違って、遠慮も何もなくあっという間に奥まで収まってしまう。控え目に言ってもそれだけでジョシュアは気持ちが良かった。
律動はすぐに再開された。今度は、恍惚としたイライアスの顔がよく見える。自分と同じように、この行為で気持ち良くなっているのだと思うと、それが嬉しくも思われた。
ついつい言葉がジョシュアの口を吐いて出た。ほとんど無意識の事だった。
「は、あ、……きもちいい……」
途端に息を詰める声がジョシュアの上から降ってきて、心なしか中のものも大きくなったような気がした。ジョシュアの一挙一動にこの男が振り回されている。そう思うとどうしてだか嬉しく思うのである。
「今日はほんとに……むり、だめ、おれ……我慢できない――ッ」
そういう台詞を皮切りに、イライアスは腰を激しく使い出した。本当に余裕がないのか、ガツガツと奥を抉るような動きでジョシュアの中を蹂躙する。
「んんんっ、あ、ああああッ‼︎」
「ジョシュ……、ん、あーっ、だめ、すごい、きもちい……」
強すぎるほどの快楽に背筋を反って悶える。タイミングを合わせてそこを押し付ければ、更に奥の方にまで届いた。一度だけこじ開けられた事のあるその奥は、頭が白むほどの快感をジョシュアへともたらした。今どうしてだか、その時の事が思い出された。
今日はジョシュアもまた、腰が震えるほど気持ちが良かった。
「あっ、ジョシュ、おれもう、でる――ッ」
そう言ったかと思うと、本当にいつもよりも早くイライアスはジョシュアの中で絶頂した。ビクビクと中で震え、溜め込んだものをジョシュアの中に吐き出している。
ああまた、自分の腹の中がイライアスのそれでいっぱいになる。そう思うと堪らなくなって、ジョシュアもまた遅れて達した。
「んっ……、ジョシュも、イッたね……」
そのまま再び口付けられ、ジョシュアもそれを当然のように受け止めた。
「今日はなんかほんと、いつもと違うね……何か、あった? それとも俺と離れてて本当は寂しかったとか?」
長い口付けの後で、ジョシュアはそう聞かれた。いつもの茶化すようなそれだったが、イライアスはどこか嬉しそうである。
それはジョシュア自身も思っていた事だった。眠るところを叩き起こされたせいか、それとも神経を張り詰めすぎて精神的に疲れ切ってしまったせいか。今日はどうしてだか、そういう気分だったのだ。
自分から煽った自覚もあった。珍しく、己の意思でわざと言った言葉もある。こう言えばきっと、イライアスは嬉しいだろうからと。
何年も共にいるという訳ではないが、この男とはこの数ヶ月で誰よりも、濃い時間を過ごしたとジョシュアは思っている。だから少しずつジョシュアにも分かってきていた。どうすればこの男は喜んでくれるか。
ジョシュアはぼんやりとしながらも、イライアスの言葉に返事を返した。
「そう、かもしれないな」
「……え?」
そう答えれば途端、イライアスがポカンとした表情を浮かべた。
きっとジョシュアの否定する姿を想像して、いたずらに茶化すような言葉をかけたのだろう。だが、それをジョシュア自身が肯定とも取れる言葉を返してしまった。唐突な発言にきっと、イライアスは困惑しているに違いなかった。
その上でジョシュアは、更に言葉を付け加えた。
「あの二人を見たからかもしれない」
「?」
「ラザールと、アンセルム。ああいう風に想えるのは、想われるのは羨ましいと俺も思った。だから少し今日は……」
「……」
「ちゃんと、口にしてみようかと」
イライアスが、無言でジョシュアをジッと見つめている。それを感じながら、ジョシュアは言葉を続けた。
「お前と寝るのは、その……好きなんだ」
「!」
「そばにイライアスの気配がないと落ち着かなかった。同じ部屋に別の人間の気配があると、あまりよく眠れなかったんだ。イライアスの時は、そんな事もないのに」
「っああびっくりしたそっちか……」
「え?」
「なんでもないよ、続けて?」
「あ、ああ。……それもあるし、イライアスにはいつも助けられているなと思った。だから少しでも……イライアスが喜ぶ事を、返せればと」
そこまで言って、ジョシュアは様子を窺うようにイライアスを見上げた。その顔には驚きの感情が表れていて、どこか呆然としてさえいる。
普段ジョシュアは、他人に思っている事を告げるなんて滅多にしないが。イライアスの前では、ジョシュアもなるべく口にするようにしている。
自分をこんなに大切に思ってくれているからだとか、まるで家族のような繋がりを感じているだとか、そういう諸々の事情もあるのだけれども。
ジョシュアはただ単純に、この男が大切だと思い始めているのだ。まるで昔のエレナとのそれのように。今度こそ、この関係を手放したくないと思うのである。
今はまだ、イライアスとジョシュアが互いを思っているその程度は違うのかもしれないが。それでも、ジョシュアは今できる範囲でそれを返したいと思っている。
「……ねぇ、それ」
しばらく呆然としていたイライアスが、絞り出したように口を開いた。
「誘ってるって自覚はある?」
小首を傾げてニッコリと言った彼は、いつものイライアスだった。
少し強引でいつもふざけたようなフリをして、けれど寂しがり屋で人間が好きな吸血鬼。そんな男が、ジョシュアはやはり大切だと思うのである。
「……ある」
何かのキッカケがあれば、人が離れていくのはあっという間なのだとジョシュアは知っている。だからこそ今度は、その手を離してはいけないと思うのだ。
二回目の動きはとてもゆっくりだった。あっという間に復活したイライアスの剛直が、ゆるゆるとジョシュアの中へ出入りを繰り返している。互いにしっかりと抱き合ってその体温を感じながら、今までにないくらい密着していた。
耳元では互いの荒い息遣いが聞こえる。それを耳にしただけで、なぜだか酷く興奮していた。
イイところには中々当たらないという、その焦れったさが逆に良かった。時折、一際奥にまで腰が進むと、ジョシュアの目の前が白むほどの期待に胸が震えた。
そうしてしばらく、二人はゆるゆるとした動きを愉しんでいたが。やがて、その焦れったさの限界は訪れる。
「イライアス」
ジョシュアが、今までにない位切羽詰まったような声でイライアスを呼んだ。先に限界が来たのは、ジョシュアの方だった。
「ん、ジョシュア……?」
「もう、そろそろっ……はやく……」
「ッ……はやく、何? どうしてほしい?」
互いに囁き合うようにそう言って、イライアスはジョシュアに、言葉の続きを求めた。
「奥に、欲しい……ッたりない」
そういうジョシュアのお願いを聞いて、イライアスは一度、そこで大きく息を吐き出した。
「ん、わかった。もっと奥に、あげる」
そう言って微笑んだかと思えばイライアスは。ジョシュアの両脚を抱えて、上から叩き付けるように腰を打ち付け出した。先程よりももっと、奥を抉るように。そこをこじ開けるように。
その後の事は、ジョシュアもあまり覚えていなかった。脳天を突き抜けるような快楽に溺れて、何も考えられなくなってしまったのだ。上がる声が抑えられなくて口を塞がれたような気もしたが、それすらも分からなくなるほど、ジョシュアの思考力は吹き飛んでしまっていた。
「見て見て、これ……噛んだの覚えてる?」
翌日、随分と機嫌のいいイライアスにニコニコと報告されて、ジョシュアは自分が付けたらしいその手の噛み跡を見せられた。全く覚えはなかったが、昨日のあれではやらかしていても無理はないと思った。
けれども自分の頭はやけにスッキリとしていて、いっそ溜め込んでいたものを吐き出せて良かったとすら思えてくる。たださすがに、寝不足の時には勘弁してもらいたいものであった。
最後は自分から誘ってしまった手前、文句を口にすることはできなかったが。
最中に気を失うだなんて事にはあまりしたくないなぁと、笑うイライアスの顔を見ながら、ジョシュアはそんな事を思うのだった。
散々、後孔を指で捏ねられ撫でられ弄り回されてから、イライアスの固くて張り詰めたものを突き立てられた。それがジョシュアの中で縦横無尽に暴れ回っている。
「ひあっ、……あ、ああっ!」
その剛直が中にある一点を掠めると、頭が痺れるような快楽をジョシュアへともたらした。ぐじゅぐじゅとはしたない音をたてながら、何度も何度も同じ場所を突かれる。
獣みたいに四つん這いになったまま犯されている。時折背後から聞こえる息を詰めたような声に何とも言えない気分になりながら、ジョシュアの頭はすっかりふやけてしまっていた。
「気持ちいいねぇ……わかる? ジョシュア、自分から腰、振ってるよ」
言われている言葉の意味が分からなかった。いや、分かっているのだろうけれども、それを否定したい自分がいた。恥ずかしいとは思うのに、今更自分の意思ではやめられなかったのだ。セックスがこんなに気持ちいいと思うのは、この男が初めてだったから。
「それに中、ヒクヒクしてる。すごい、いやらしい」
「んうっ……も、いうなっ」
「どうして? 言われるの好きでしょ?」
「んっ、あああっ!」
ズバリと言われて、ジョシュアは益々中を締め付けてしまった。こうして繋がっていては、イライアスに隠す事もできない。
声をかけられるのは好きだった。自分が一人ではないと意識できるから。例え眉根を顰めたくなるような妙な事を言われても、それがイライアスだと思うと何故だか許せてしまう。
「ああー、気持ちいいねぇ、ジョシュ……ね、後ろ向いて? キスしよ、キス」
「ふ、う……、んむっ」
この男がこうして自分に触れようとするのは、純粋に好意なのだというのは分かった。数日離れてみてそれが身に沁みた。普通はあんなに部屋でベタベタと触れ合わないし、当然身体を重ねる事だってしない。ラザールと部屋を共有した事で、ジョシュアにもその確信が持てた。
元々人懐こい性格ではあるのだろうけれども、ああも距離を詰めるのが自分だけなのには当然気がついている。そういうイライアスから与えられるものはどうしてだか心地よく、離れがたくさえ思われる。
こうやって請われるがまま、時折肌を重ねるようになってしばらく経つが。イライアスの優しさにつけ込んで、ジョシュアは未だ何も言えずにいる。今はそれが、ひどく心苦しく思われるのだ。
「イライアス」
「ん? どうしたの?」
「まえ、からがいい」
「……今日は随分と、」
ジョシュアがそう言って要求すると、イライアスは息を詰めた。そう呟いたかと思うとずるりと昂りを抜き去る。その瞬間にはジョシュアの背がぶるりと震えたが、すぐに裏返され、片脚をイライアスの肩へと引っかけられた。
いつもより少し、余裕のなさそうな表情がジョシュアにも見えた。こんな顔をさせているのが自分だと思うと、悪くないような気がした。
「今日の君は少し、しおらしくて素直だね。数日ぶりなのもあるし、余裕、あんまないかも」
イライアスが、言いながら笑おうとして失敗したような顔になる。そんなイライアスが少しおかしくて、ジョシュアもそこで笑ってしまった。
先程出て行ってしまったものが、再び中に押し挿ってくる。最初とは違って、遠慮も何もなくあっという間に奥まで収まってしまう。控え目に言ってもそれだけでジョシュアは気持ちが良かった。
律動はすぐに再開された。今度は、恍惚としたイライアスの顔がよく見える。自分と同じように、この行為で気持ち良くなっているのだと思うと、それが嬉しくも思われた。
ついつい言葉がジョシュアの口を吐いて出た。ほとんど無意識の事だった。
「は、あ、……きもちいい……」
途端に息を詰める声がジョシュアの上から降ってきて、心なしか中のものも大きくなったような気がした。ジョシュアの一挙一動にこの男が振り回されている。そう思うとどうしてだか嬉しく思うのである。
「今日はほんとに……むり、だめ、おれ……我慢できない――ッ」
そういう台詞を皮切りに、イライアスは腰を激しく使い出した。本当に余裕がないのか、ガツガツと奥を抉るような動きでジョシュアの中を蹂躙する。
「んんんっ、あ、ああああッ‼︎」
「ジョシュ……、ん、あーっ、だめ、すごい、きもちい……」
強すぎるほどの快楽に背筋を反って悶える。タイミングを合わせてそこを押し付ければ、更に奥の方にまで届いた。一度だけこじ開けられた事のあるその奥は、頭が白むほどの快感をジョシュアへともたらした。今どうしてだか、その時の事が思い出された。
今日はジョシュアもまた、腰が震えるほど気持ちが良かった。
「あっ、ジョシュ、おれもう、でる――ッ」
そう言ったかと思うと、本当にいつもよりも早くイライアスはジョシュアの中で絶頂した。ビクビクと中で震え、溜め込んだものをジョシュアの中に吐き出している。
ああまた、自分の腹の中がイライアスのそれでいっぱいになる。そう思うと堪らなくなって、ジョシュアもまた遅れて達した。
「んっ……、ジョシュも、イッたね……」
そのまま再び口付けられ、ジョシュアもそれを当然のように受け止めた。
「今日はなんかほんと、いつもと違うね……何か、あった? それとも俺と離れてて本当は寂しかったとか?」
長い口付けの後で、ジョシュアはそう聞かれた。いつもの茶化すようなそれだったが、イライアスはどこか嬉しそうである。
それはジョシュア自身も思っていた事だった。眠るところを叩き起こされたせいか、それとも神経を張り詰めすぎて精神的に疲れ切ってしまったせいか。今日はどうしてだか、そういう気分だったのだ。
自分から煽った自覚もあった。珍しく、己の意思でわざと言った言葉もある。こう言えばきっと、イライアスは嬉しいだろうからと。
何年も共にいるという訳ではないが、この男とはこの数ヶ月で誰よりも、濃い時間を過ごしたとジョシュアは思っている。だから少しずつジョシュアにも分かってきていた。どうすればこの男は喜んでくれるか。
ジョシュアはぼんやりとしながらも、イライアスの言葉に返事を返した。
「そう、かもしれないな」
「……え?」
そう答えれば途端、イライアスがポカンとした表情を浮かべた。
きっとジョシュアの否定する姿を想像して、いたずらに茶化すような言葉をかけたのだろう。だが、それをジョシュア自身が肯定とも取れる言葉を返してしまった。唐突な発言にきっと、イライアスは困惑しているに違いなかった。
その上でジョシュアは、更に言葉を付け加えた。
「あの二人を見たからかもしれない」
「?」
「ラザールと、アンセルム。ああいう風に想えるのは、想われるのは羨ましいと俺も思った。だから少し今日は……」
「……」
「ちゃんと、口にしてみようかと」
イライアスが、無言でジョシュアをジッと見つめている。それを感じながら、ジョシュアは言葉を続けた。
「お前と寝るのは、その……好きなんだ」
「!」
「そばにイライアスの気配がないと落ち着かなかった。同じ部屋に別の人間の気配があると、あまりよく眠れなかったんだ。イライアスの時は、そんな事もないのに」
「っああびっくりしたそっちか……」
「え?」
「なんでもないよ、続けて?」
「あ、ああ。……それもあるし、イライアスにはいつも助けられているなと思った。だから少しでも……イライアスが喜ぶ事を、返せればと」
そこまで言って、ジョシュアは様子を窺うようにイライアスを見上げた。その顔には驚きの感情が表れていて、どこか呆然としてさえいる。
普段ジョシュアは、他人に思っている事を告げるなんて滅多にしないが。イライアスの前では、ジョシュアもなるべく口にするようにしている。
自分をこんなに大切に思ってくれているからだとか、まるで家族のような繋がりを感じているだとか、そういう諸々の事情もあるのだけれども。
ジョシュアはただ単純に、この男が大切だと思い始めているのだ。まるで昔のエレナとのそれのように。今度こそ、この関係を手放したくないと思うのである。
今はまだ、イライアスとジョシュアが互いを思っているその程度は違うのかもしれないが。それでも、ジョシュアは今できる範囲でそれを返したいと思っている。
「……ねぇ、それ」
しばらく呆然としていたイライアスが、絞り出したように口を開いた。
「誘ってるって自覚はある?」
小首を傾げてニッコリと言った彼は、いつものイライアスだった。
少し強引でいつもふざけたようなフリをして、けれど寂しがり屋で人間が好きな吸血鬼。そんな男が、ジョシュアはやはり大切だと思うのである。
「……ある」
何かのキッカケがあれば、人が離れていくのはあっという間なのだとジョシュアは知っている。だからこそ今度は、その手を離してはいけないと思うのだ。
二回目の動きはとてもゆっくりだった。あっという間に復活したイライアスの剛直が、ゆるゆるとジョシュアの中へ出入りを繰り返している。互いにしっかりと抱き合ってその体温を感じながら、今までにないくらい密着していた。
耳元では互いの荒い息遣いが聞こえる。それを耳にしただけで、なぜだか酷く興奮していた。
イイところには中々当たらないという、その焦れったさが逆に良かった。時折、一際奥にまで腰が進むと、ジョシュアの目の前が白むほどの期待に胸が震えた。
そうしてしばらく、二人はゆるゆるとした動きを愉しんでいたが。やがて、その焦れったさの限界は訪れる。
「イライアス」
ジョシュアが、今までにない位切羽詰まったような声でイライアスを呼んだ。先に限界が来たのは、ジョシュアの方だった。
「ん、ジョシュア……?」
「もう、そろそろっ……はやく……」
「ッ……はやく、何? どうしてほしい?」
互いに囁き合うようにそう言って、イライアスはジョシュアに、言葉の続きを求めた。
「奥に、欲しい……ッたりない」
そういうジョシュアのお願いを聞いて、イライアスは一度、そこで大きく息を吐き出した。
「ん、わかった。もっと奥に、あげる」
そう言って微笑んだかと思えばイライアスは。ジョシュアの両脚を抱えて、上から叩き付けるように腰を打ち付け出した。先程よりももっと、奥を抉るように。そこをこじ開けるように。
その後の事は、ジョシュアもあまり覚えていなかった。脳天を突き抜けるような快楽に溺れて、何も考えられなくなってしまったのだ。上がる声が抑えられなくて口を塞がれたような気もしたが、それすらも分からなくなるほど、ジョシュアの思考力は吹き飛んでしまっていた。
「見て見て、これ……噛んだの覚えてる?」
翌日、随分と機嫌のいいイライアスにニコニコと報告されて、ジョシュアは自分が付けたらしいその手の噛み跡を見せられた。全く覚えはなかったが、昨日のあれではやらかしていても無理はないと思った。
けれども自分の頭はやけにスッキリとしていて、いっそ溜め込んでいたものを吐き出せて良かったとすら思えてくる。たださすがに、寝不足の時には勘弁してもらいたいものであった。
最後は自分から誘ってしまった手前、文句を口にすることはできなかったが。
最中に気を失うだなんて事にはあまりしたくないなぁと、笑うイライアスの顔を見ながら、ジョシュアはそんな事を思うのだった。
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