我が身は死人の世界

一ノ清たつみ(元しばいぬ)

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無敗の吸血鬼

07.吸血の夜(強制)後

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 ようやく赤毛の男が戻ってきたその時。ジョシュアは思わず目を見張った。

「やった、さっきのコほんと当たりだったわ!」

 ニコニコと上機嫌な赤毛の腕の中には、先程すれ違った女性が抱かれていたのだ。ある意味では予想通りだ。思わず引き攣る顔を隠しもせず、ジョシュアは大きく溜め息を吐いた。
 その途端にだ。赤毛からはおかしそうな笑い声が上がった。

「うっは、マジで聞いた通りだしっ! 俺らの三大欲求もなしに“影の”は本当、よく吸血鬼やってられんねぇ」
「……っ大きなお世話だ」

 未だ吸血に慣れないジョシュアの話を聞いたのだろう。赤毛は肩を揺らしながら言った。少しだけムッとして、ジョシュアはつっけんどんに言葉を返す。けれど赤毛はそんな彼を気にもとめていない。
 さっさと足を進めると、近くにあった大ぶりのソファへと、その女性をやさしく寝かせた。

 ジョシュアは余程『好きで吸血鬼になった訳では無い』、とでも言い返してやりたかったのだが。グッとそれを呑み込んだ。言葉にできなかった訳ではない。言い返せなかった訳ではない。
 、と内心では思ってしまっているからだ。化け物退治の専門家だった身としては失格である。そんな理由で馬鹿正直にも、ジョシュアは何も言う事ができなかったのである。

(吸血鬼である方が生きやすいだなんて、そんな馬鹿みたいな話……)

 人生、狡賢い方が、嘘吐きの方がどれほど生きやすかったろう。けれどもどんなになっても、生来の性質は変える事が出来なかったのである。今までよっぽど苦労をして、それなりに何とか適応して、生きながらえてしまったのである(既に一度死んでしまってはいるが)。
 もっと別の道もあっただろう。もっと楽な道もあっただろう。けれど何処か諦めきれない頑固な部分があって、ジョシュアはズルズルと、今の今まで来てしまったのである。後悔をする暇もない程必死に、毎日を生きたのである。その結果がこれだったというだけの話。何とも世知辛い。
 ジョシュアはすっかり考え込んでしまった。
 そんな時だった。不意に、赤毛が言ったのだ。

「――まぁ、こんな世の中意外と狭いけど、俺らも意外と沢山居るし? 妙な吸血鬼がひとりやふたり、居ても可笑しくないのかもしれないねぇ」
「は……」
「本当、この世界って面白いよね。色んなのが居て、飽きがこないわ」

 随分とご機嫌な様子でそう言った赤毛に、ジョシュアは思わず息を呑んだ。

 ミライアほど色々と世話を焼いてくれる訳では無いが、赤毛は一度だってジョシュアの事を否定したりはしなかった。揶揄ったり自分の要求を通そうとする我儘を言ったりはするし、始終ふざけ半分ではあるが。
 それでも、弱っちいジョシュアの事を蔑んだり、馬鹿にするような言動はなかった。弱い事を理由に、力づくで従わせるような事もしなかった。行動も言葉も随分とぶっ飛んだ男だが、ちゃんと大事な所ではジョシュアの話を聞いてはいるのだ。

 今更そんな事に気付かされてしまって、ジョシュアは状況も忘れて立ち尽くしてしまった。ミライアとはまた違った形で、ジョシュアをそういう個として認める。
 彼が人間だった頃、そうしてくれた人は一体どれほど居ただろうか。
 しばらくその場から動く事はできそうになかった。

「――うん、まぁ合格だね。今度また声かけるかなぁ……、ねぇ、“影の”も飲む?」

 ようやく金縛りが解けたのは、赤毛からそんな言葉をかけられた時だった。
 ハッとして赤毛に顔を向けると、口元に血を滲ませながらコテン、と首を傾げる男の姿が目に入った。
 顔だけは抜群に良い男の問いかけに、ジョシュアはああ、だとかいや、だとかそんなような返事を返す。咄嗟の事に、未だ頭が切り替えられなずにいたのだ。先の赤毛の言葉のせいなのだろうか。ジョシュアは男の顔を、まともに見返す事が出来なかった。
 そんな調子のジョシュアに、赤毛はすかさず反応する。

「なにその微妙な返事……、姐さんからはさぁ、機会があれば飲み方教える位はしてやれーって、言われてんだよね」
「!?」
「俺、同族でもお気に入りには優しいからぁ、そん位はやったげてもいいよ!」
「いっ、いや、お構いなく……別に、今のところ問題な――」
「えっ、でもホントちゃんと食べないと殺されちゃうよ?」
「…………」
「俺ら結構敵多いし、姐さんに付いてくんなら同族に追われるかもしれないし……」
「うぐ……だ、けども、……それは自分でも分かってる。その内に、とは思ってる」

 その忠告はもう、耳にたこができるほど、何度も繰り返し言われていることだった。血を飲めと。しからばその身は再び死に向かうのだと。
 そこまで分かっていながらしかし、ジョシュアは行動を変えられなかった。彼だって、分かってはいるのだ。今のままではいけない事くらい。
 人の命を吸って生きる、それがどんなに覚悟のいることか。踏ん切りがつかなかった。本当の意味で人でなくなってしまう。それが恐ろしかった。

 赤毛にすら同じことを言われるも、ジョシュアは普段通りを貫くつもりだった。今日は飲まない。そう、頑なに意思表示をすれば、ミライアは強制することはなかった。だからそれが、ふたりの間でのスタンダードだった。
 曲げるつもりはない。どんなに他者に言われようが、ジョシュアは赤毛に対してもそのつもりだった。彼が諦めるのを待つのである。ミライアと、同じように。
 だがひとつ、ジョシュアは大きな思い違いをしている。ミライアという吸血鬼は、意外にもその態度とはかけ離れたように優しい性質を持つ。彼女はジョシュアの好きなようにさせ、手助けは極力しないような、そんな吸血鬼なのである。

 だがしかし、赤毛の吸血鬼はと言えば。

「まったまた……、俺優しいから手取り腰取り教えてあげるよぉ」

 ジョシュアの話を、普段まともに聞かないのである。そして冒頭でも自称したように、彼は逐一教えてあげる程には、“優しい”男なのである。

「ちょ……“赤毛の”っ、待っ、おい!?」

 突然、赤毛に背後に立たれ、脇の下に両手を差し込まれ、ジョシュアはその場で持ち上げられた。まるで子供にするように。
 ぎゃあっと小さく悲鳴を上げてジョシュアが暴れるも、赤毛は全く意に介さず。そうしてジョシュアは、その女の目の前へと連れて来られてしまった。

「シィッ、静かにしないとこのこ起きちゃうよ! それに家主もいつ帰ってくるか分かんないし!」
「っーー!」

 女の傍にジョシュアを置きつつそんな事を言って、赤毛は彼の抵抗を封じる。叫ばれて面倒事になったら、困るだろう?透けて見える赤毛の思惑に、ジョシュアは思わず口を結んだ。

 だが実のところ、赤毛の催眠術で眠っている女は赤毛が術を解かない限り起きやしないし、まさにその家主が、目の前にいる女その人だったりするのだが。そんな事実を知らされていないジョシュアは、まんまと赤毛に騙されるのである。

「そうそう、いい子。ほら、俺が飲んだとこまだ治りかけでやぁらかいから、少し押せばすぐ血が出てくる」
「おい、ちょっ、待て待て、俺はホントに――」

 グズグズとそんな事を言いながら抵抗にもならない抵抗を続けるジョシュアだったが。その場でニコニコと笑みを崩さない赤毛は無情にも。
 ジョシュアの頭を引っ掴むと、問答無用で女の首筋、赤毛が飲んだその傷跡へとジョシュアの口を押し付けたのだった。
 まさかそこまで強引にやられるとは思っていなかったジョシュアは、不意打ちにまんまとそこへ牙を突き立ててしまった。途端、鼻先から香ってくる芳しい匂いにクラリとした。
 流石のジョシュアだって、口の中に血液を突っ込まれてしまってはどうしようもない。無理矢理忘れさせていた欲求がたちまち戻ってくる。急激に襲ってくる空腹にも負け、彼は渋々、体は喜んで、その血液を吸い上げた。自然と湧き上がってくるそれを、じわり舐めとるような吸血だ。
 少量ずつ、本当に吸血鬼なのかと疑われそうな飲み方であっても、ジョシュアは気にしない。どんなにミライアから不満げな視線を浴びせられようが、彼はそれで良かった。
 人としてのプライドでも残っているのか。とうに人でなくなってしまっているのに、今更そんな事を言ってどうする、だなんて、時々馬鹿馬鹿しく思うこともある。けれど何故だか、ジョシュアは譲れなかった。

 そんな、どこまでも頑固なジョシュアに向かって、赤毛は不満げな声を上げた。

「ええー? 何それ、傷口舐めてるだけじゃん。ちゃんと口ん中、入ってんの?」

 目の前でそう言われても、ジョシュアはこのスタイルを変えるつもりはなかった。吸血に抵抗感があるのは変わらないし、血液の量が少なくても彼は耐えられるのだ。まだ、完全な吸血鬼ではないのかもしれない。そう思うと、どこかでホッとする自分がいた。
 ジョシュアは行動を変えるつもりはない。赤毛に抗議するように睨み付けると、彼は考え込むように首を傾げた。
 そうだ、そのまま俺に呆れて突き放してくれ、だなんて、ジョシュアは内心で思う。
 だがしかし、そうは問屋が卸さない。これで終わらないのが、赤毛――ミライア曰く“普通ではない”男の厄介なところなのである。

「全くもう、……見てて、ほら、こうするんだよ!」

 ジョシュアの隣でそう言うが早いか。赤毛は突然、女の二の腕を掴んだかと思うと。ジョシュアが止める間も無く、ガブリとそこに牙を突き立てたのだった。隣でそんな様を見せつけられ、驚いたジョシュアは女の首筋から口を離してしまう。
 けれども、赤毛はそれを気にも留めず。ジョシュアの目の前でニヤリと獰猛そうな笑みを浮かべると。手本とばかりに、音を立てながら血液を吸い上げ始めたのだった。
 予想外の行動に、ジョシュアは声も上げられなかった。なにせこの時、彼はその光景から、目を逸らすことができなかったのである。無意識に、ジョシュアはゴクリと生唾を呑み込んだ。

 吸血――つまり食事は性行為のそれと高い相関性があると言われている。ジョシュアにはそんな知識などはない。
 けれども、それ(吸血)が、どこか見てはいけないものであるかのような。そんな奇妙な背徳感を、ジョシュアはいつだって感じていた。吸血が苦手な一因であるのかもしれないが。まるで、他人のまぐあいを覗き見ているかのような。
 そして今この時もまた、ジョシュアは頭に血が登るかのような、妙な羞恥を覚えて。咄嗟に赤毛のから目を逸らしてしまうのだった。覗き見て楽しむ趣味はない。そう主張しているかのようだ。
 けれども今この場において、ジョシュアのそんな行動は、油断に他ならなかった。何せ、目の前には赤毛が居るのだから。
 好色家の、変人の、“赤毛の”吸血鬼である。油断も隙も、見せてはいけないのである。
 ふ、とジョシュアの視線が逸らされたその一瞬だった。赤毛が突然、動き出した。

「!?」

 無防備なジョシュアの身体を床に押し倒し、その場で馬乗りに乗り上げる。ジョシュアの両腕を器用に脚で拘束して、その顎を掴み口を開かせたのだ。
 こんな突然の凶行に、まさに鳩に豆鉄砲でも食らったような顔をしているジョシュアに対して。赤毛は更に、その口を自分のソレで塞いできたのだった。
 止める間もなかった。ハッと息を呑んだジョシュアの口内に、赤毛から血液がごぼりと注がれる。
 赤毛が口にしていたものを、口移しでジョシュアの口の中へ流し込んで来たのだ。防ぎようもない。ジョシュアは反射的にそれを、一気にゴクリと飲み下してしまった。
 人間の血液の、鉄臭いそれであるはずなのに。今のジョシュアにはそれが、芳しい甘い香りのするご馳走であるかのように感じられた。おまけに、自分が普段飲んでいる量よりも随分と多い。そんな量を一度に飲まされ、ジョシュアはクラリと自分の頭が揺れるのを感じた。
 あの時、初めて血液を口にした時のような――いやさそれよりも余程、満足感が大きい。今までに感じた事のない、頭が痺れるような陶酔感に、ジョシュアはすっかり酔ってしまった。

 赤毛は、そんなジョシュアの変化にも目敏く気付いたようだった。口付けたまま満足気にニンマリと笑うと。残しておいた血液を再び、その口へと流し込んだ。先程よりも随分と少ない。けれどもう、何の抵抗感もなく、ジョシュアはそれを飲み下していた。喉が鳴ったのと同時に目を細め、満足気にはぁ、と吐息を漏らすのだった。
 そして、まるでそれを見計らったかのように。赤毛は何と、そのまま口付けを深めたのだった。体勢的に、そして精神的にも碌に抵抗も出来ない状態であるジョシュアは、まさに据え膳。赤毛は最初から狙っていたのだろう。
 ミライアには釘を刺されている。けれども赤毛は、相手を陥落させるような技術を、山程に存じているのである。

 舌の裏を擦り合わせるように押し付けながら、上喉の奥の方にまで狙いを定めて舌先で刺激する。時折その舌を捕まえて吸い上げたり、歯列の内側を舐め上げたりと、赤毛はジョシュアを追い詰めていった。
 どちらのものとも分からない唾液が口端から零れ落ちても、嬌声のようなか細い声すら漏れ出てしまっても、もう何が何だか分からない。
 ジョシュアが偶に、自分から赤毛の舌を追いかけてしまったり、触れやすいように角度を変えてしまったりと、無意識に赤毛を煽ったりなどしてしまっていたのだが。本人にその自覚はない。快感に貪欲なのは、人も吸血鬼も同じらしかった。
 人間――特に女性は、匂いで相手を決める事が多いと言うが。果たしてそれは、吸血鬼にも当てはまるものなのか。赤毛は公言している通り、ジョシュアの匂いに釣られて出てきたクチであるが。ジョシュアも実のところ、赤毛の匂いが嫌いではなかったりしていて。なんだかんだと、このふたりの相性は悪くないのである。

 随分と長い間口付けていた赤毛がジョシュアから口を離した時には、二人とも息が上がってしまっていた。ジョシュアは最早ぐったりとしていて、赤毛はどちらかと言えば随分と元気になってしまった様子であった。
 ジョシュアは呆けながらもその息を整え、そして赤毛はジョシュアの首筋に鼻を埋めながら一層息を荒くした。

「あぁーーっ、ヤバ、これ失敗したかも……我慢我慢っ……あ、無理だわコレ」

 ブツブツと何やら呟き出した赤毛と、意識があっちの方へと飛んでいってしまっているジョシュア。そんなふたりが正気に戻るまでは、あと数分。
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