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ハルキとカイトの甘い雰囲気は、瞬く間にぶち壊される事になった。
「近い、寄るな」
「!」
「は?」
その間に割り込んできたのはジェルヴァジオだった。カイトとハルキの間に無理矢理入り込み、二人をその場で引き離したのだ。
突然の事に抵抗も出来なかったカイトは、そのままジェルヴァジオの胸元に抱き込まれてしまう。あっという間の出来事に、カイトは恥ずかしがる余裕すらなかった。
そして、それを見たハルキは明らかに不服そうに、その場で冷たい声を上げる。
「カイトが変態に穢される」
「……大人しく聞いていればつけ上がりやがって。コレはもう俺のだと言ったろう、気安く触れるな」
「は? お前なに言ってんの。……この穀潰しがッ」
「ご、ごく──」
「俺知ってんだかんな。アンタこの百年で、アレ、やらかしたでしょ?」
「ッ貴様、何で知って──、俺を脅す気か⁉︎」
半笑いになりながらそんな事を言ったハルキに、ジェルヴァジオはたじろいでいる。彼の腕の中から二人のやり取りを眺めていたカイトは、ハルキが一歩リード、だなんて現実逃避気味にそんな事を考えていた。
世界にその名を轟かす“神子”の力がハルキによって私的にも使われている。そんなひどい事実を誰も指摘できないまま、二人の大人気ない口喧嘩はそのまましばらく続いた。
カイトも最早お手上げで、この後自分は一体どうすればいいんだろうかな、早く部屋に入って休みたい、だなんて上の空で考えていた時だった。
ようやくカイト達に、救いの手が差し伸べられたのだ。その場で勇気ある者がひとり、その声をあげたのである。
「あの、お取り込み中のところ大変申し訳ないのですが……」
「ああ?」
「なに!」
チンピラのような二人の声が重なる中で。そのような中にあっても、片手を上げながら穏やかな声で言ったのは、騎士であるセルジョだった。
「その……我々には一体何が何だか分かりませんので、この件について説明をしていただけると、大変ありがたいのですが……」
物腰柔らなその言い方と、苦笑する彼の緩い微笑みに、ハルキもジェルヴァジオも毒気を抜かれたようだった。バツが悪そうに言い争いをピタリと止めると、二人ともその場で黙り込む。
このタイミングを見計らい、カイトを抱きとめているジェルヴァジオの腕をトントンと叩く。するとカイトは、それでようやく腕の中から解放された。嫌だった訳ではなかったが、公衆の面前でそのような事をするのはやめて欲しかったのだ。
解放されたその場でホッと一息を吐くと、セルジョを見て礼を言う。随分と久しく感じるセルジョとのやりとりに懐かしさを覚えながら、カイトはいつものように穏やかに言った。
「助かった、セルジョ」
「っいえ……この場の皆が思っていたいた事でしょうし、貴方もお困りのご様子でしたので」
「ん」
カイルだった頃の話し方に時折混じるカイトの相槌。それがこの場の何人を悶えさせるかも知らず、カイトは何事もなかったかのように話を続けた。
「何から話すか……って、何だよハルキ、そんな顰めっ面して」
「不意打ちはずるいと思った」
「は?」
「や、何でもないよ、こっちの話。もうこの際さ、面倒だから全部説明しちゃえば? カイトがカイル・リリエンソールだったってところから」
「……ハルキ、当然のように全部知ってるんだな」
「当たり前だよ。俺は神子で、大事なカイトの事だしね。あとはついでに仕方なーくそこのまぞとの事とかも話しちゃおうよ……」
「っこの雰囲気で唐突なボケは笑うからヤメロな。ってかちゃんと“く”まで付けろよこの馬鹿っ」
「……分かったよ、ちゃんと真面目に呼ぶ。もうボケは言わない」
「ん」
相変わらず息の合った会話を挟みながら、カイトはセルジョ達へもこの事件のあらましを話して聞かせた。
いつの間にか人払いがされていたのか、その場には関係者であるカイト達と、あの誘拐事件に関わった者達だけが残されているだけだった。
カイトがそのカイルであった事、ジェルヴァジオと北部で死闘を繰り広げていた事、そして──解放されたいと言った神子の願いを叶える為、カイルが異世界へとその当時の神子を送り届けた事を全て語って聞かせた。
あれほど恐れ、話すのを躊躇していた過去の事だったが、ハルキやジェルヴァジオが側に居るのだと思うと心強く思えたのだった。
それはおおむね、アウジリオ達の推測した通りだった。そのアウジリオとエルネス、二人の近衛騎士が、何かを言いたそうに目を合わせるなどしてはいたが、カイトの話やセルジョの問いかけに横槍を入れるような輩は現れなかった。
「──で、だ。ジェルヴァジオにここまで連れて来させて今に至る。領地に帰れと言ったのに聞きやしない」
「当たり前だろう。かつてお前を殺した国に帰ると聞いて、大人しくしてなぞいられるか。俺は二度と同じ過ちは繰り返さんぞ」
「……だ、そうだ」
少しばかり気恥ずかしそうに頬を染めたカイトを見て、ハルキと何故だかセルジョが納得のいかない顔をしていた。
「っでは、魔族がこの城内に入れるのは、一体どのような訳でしょうか。大魔導師殿の結界は、魔族の侵入をも拒むはずです」
「ああそれは、ここに来る前に大魔導師殿にお会いしたからだ。ジェルヴァジオに術を施し、俺の言う事には一部逆らえないようにした」
「カイト殿は、かのお方をご存知なので……?」
「カイルの頃に一度会っている。あの方も、俺の力の事は何故かご存知だった」
「そう、でしたか……」
「ああ。お陰で少し仕事を頼まれているんだが、まぁ何とかなる。そう難しいものではないし。それに、ジェルヴァジオはここでは俺の許しがなければ何もできない。そう大魔導師殿にもお願いしてある。……元から凶暴な所は変えられないが」
「一言余計だ」
「そこは事実だろうが」
「……違いないが、人間相手とはいえ、領主としての体面というものがあるだろう」
「あれだけの騒ぎを起こしておいて何を今更──」
そうやって何とも、旧知の間柄のような仲を見せつけられてしまい、一同は閉口する。
かつてどんなに殺し合おうがいがみ合っていようが、時が経てば水に流せる。そんな関係を築ける者がどれだけ貴重か。カイトとジェルヴァジオのその関係を、多くの者が羨んでいた。
「それで、他に聞きたい事は?」
「……はい、では私から。カイト殿は、これからどうするのですか? また、ハルキ様と共に城へいらっしゃるので?」
カイトがそのように聞くと、セルジョが真っ先に問いかけた。どこか期待したような眼差しで、カイトはそれを少しばかり疑問に思う。
「ああ。俺は今も昔も神子の従者だ。コイツが居るところならどこへでも行く」
「それなら、私もまたカイト殿の護衛として──」
「それならば心配いらん」
カイトが城へ戻ると分かった途端、そのように言い出したセルジョにジェルヴァジオの冷たい声が浴びせられた。
「護衛は俺がする。お前達ひ弱な人間共には任せてはおけないからな。俺はその為に来たのだ」
ふんぞり返ったようにそんな事を言ったジェルヴァジオに、セルジョが微笑みながら言葉を返す。
「……封じられてお力が出せない割に、随分と自信がおありですね? いざという時は城内に慣れていた者の方が何かと──」
「俺の術にかかった男に気付けない時点で、貴様は頼りにならない。護衛は諦めろ」
その二人の間にもどことなく火花が散っているように感じられ、周囲の者──特に近衛の騎士達の顔はひどく引き攣っていたようだった。
しばらくは彼らの無言の戦いも続いたが、アウジリオ達城の者達の仲介によってその場を収めるに至った。
変わらず神子であるハルキの従者としてカイトが、そして、ハルキの護衛にはセルジョ、そして、カイトの護衛にはやはりジェルヴァジオが就く事となった。一部からは大きな反発が寄せられたが、それが一番平和的な解決法だったのだ。
話を何とかまとめ、疲れ切った様子のアウジリオはそこでその場の解散を無理矢理宣言した。皆が治まるところに収まり、一見すると平和を取り戻したようにも見えた。
「ねぇ、セルジョ、俺達結構いいコンビだと思うんだ。手ぇ組まない? あの野郎をぶっ潰すために」
「おや、それは楽しそうな考えですね。私に出来る事ならばご協力致します」
そうして彼等は、騒がしくも新たな日常を歩んでいくのである。
少しばかり違う形にはなってしまったけれども、様々な事を許されるようになったカイトとハルキは、その国で日本とも変わりない自由を得た。
ハルキはカイトにとって、何よりも大切な人だった。それは今も昔も変わらない。唯一同じ苦しみを持つ、最高の理解者として。
そしてまた、ジェルヴァジオも同様に大切な者になった。この男の前でなら、カイトは全部を曝け出す事ができた。ハルキとはまた違った形で、醜い所も含めて全部を見せる事ができた。
カイトは心から笑えていた。少しばかり窮屈で、しかし騒がしく慌ただしい毎日がこれからも続いていくのである。
「またやりやがったなクソ餓鬼共ッ!」
「こわぁー、ねぇカイトカイト、今のアイツの言葉聞いた? チンピラみたいだよ」
「ちょっと待て、おい、……今度はセルジョもやったのかよ……」
「いえ、私はただハルキ様のご命令通りに──」
カイトは自然な笑みで笑う事ができる。自分を卑下するでもなく、他人を羨むでもなく。
これからもずっと、それは続いていくのである。
了
「近い、寄るな」
「!」
「は?」
その間に割り込んできたのはジェルヴァジオだった。カイトとハルキの間に無理矢理入り込み、二人をその場で引き離したのだ。
突然の事に抵抗も出来なかったカイトは、そのままジェルヴァジオの胸元に抱き込まれてしまう。あっという間の出来事に、カイトは恥ずかしがる余裕すらなかった。
そして、それを見たハルキは明らかに不服そうに、その場で冷たい声を上げる。
「カイトが変態に穢される」
「……大人しく聞いていればつけ上がりやがって。コレはもう俺のだと言ったろう、気安く触れるな」
「は? お前なに言ってんの。……この穀潰しがッ」
「ご、ごく──」
「俺知ってんだかんな。アンタこの百年で、アレ、やらかしたでしょ?」
「ッ貴様、何で知って──、俺を脅す気か⁉︎」
半笑いになりながらそんな事を言ったハルキに、ジェルヴァジオはたじろいでいる。彼の腕の中から二人のやり取りを眺めていたカイトは、ハルキが一歩リード、だなんて現実逃避気味にそんな事を考えていた。
世界にその名を轟かす“神子”の力がハルキによって私的にも使われている。そんなひどい事実を誰も指摘できないまま、二人の大人気ない口喧嘩はそのまましばらく続いた。
カイトも最早お手上げで、この後自分は一体どうすればいいんだろうかな、早く部屋に入って休みたい、だなんて上の空で考えていた時だった。
ようやくカイト達に、救いの手が差し伸べられたのだ。その場で勇気ある者がひとり、その声をあげたのである。
「あの、お取り込み中のところ大変申し訳ないのですが……」
「ああ?」
「なに!」
チンピラのような二人の声が重なる中で。そのような中にあっても、片手を上げながら穏やかな声で言ったのは、騎士であるセルジョだった。
「その……我々には一体何が何だか分かりませんので、この件について説明をしていただけると、大変ありがたいのですが……」
物腰柔らなその言い方と、苦笑する彼の緩い微笑みに、ハルキもジェルヴァジオも毒気を抜かれたようだった。バツが悪そうに言い争いをピタリと止めると、二人ともその場で黙り込む。
このタイミングを見計らい、カイトを抱きとめているジェルヴァジオの腕をトントンと叩く。するとカイトは、それでようやく腕の中から解放された。嫌だった訳ではなかったが、公衆の面前でそのような事をするのはやめて欲しかったのだ。
解放されたその場でホッと一息を吐くと、セルジョを見て礼を言う。随分と久しく感じるセルジョとのやりとりに懐かしさを覚えながら、カイトはいつものように穏やかに言った。
「助かった、セルジョ」
「っいえ……この場の皆が思っていたいた事でしょうし、貴方もお困りのご様子でしたので」
「ん」
カイルだった頃の話し方に時折混じるカイトの相槌。それがこの場の何人を悶えさせるかも知らず、カイトは何事もなかったかのように話を続けた。
「何から話すか……って、何だよハルキ、そんな顰めっ面して」
「不意打ちはずるいと思った」
「は?」
「や、何でもないよ、こっちの話。もうこの際さ、面倒だから全部説明しちゃえば? カイトがカイル・リリエンソールだったってところから」
「……ハルキ、当然のように全部知ってるんだな」
「当たり前だよ。俺は神子で、大事なカイトの事だしね。あとはついでに仕方なーくそこのまぞとの事とかも話しちゃおうよ……」
「っこの雰囲気で唐突なボケは笑うからヤメロな。ってかちゃんと“く”まで付けろよこの馬鹿っ」
「……分かったよ、ちゃんと真面目に呼ぶ。もうボケは言わない」
「ん」
相変わらず息の合った会話を挟みながら、カイトはセルジョ達へもこの事件のあらましを話して聞かせた。
いつの間にか人払いがされていたのか、その場には関係者であるカイト達と、あの誘拐事件に関わった者達だけが残されているだけだった。
カイトがそのカイルであった事、ジェルヴァジオと北部で死闘を繰り広げていた事、そして──解放されたいと言った神子の願いを叶える為、カイルが異世界へとその当時の神子を送り届けた事を全て語って聞かせた。
あれほど恐れ、話すのを躊躇していた過去の事だったが、ハルキやジェルヴァジオが側に居るのだと思うと心強く思えたのだった。
それはおおむね、アウジリオ達の推測した通りだった。そのアウジリオとエルネス、二人の近衛騎士が、何かを言いたそうに目を合わせるなどしてはいたが、カイトの話やセルジョの問いかけに横槍を入れるような輩は現れなかった。
「──で、だ。ジェルヴァジオにここまで連れて来させて今に至る。領地に帰れと言ったのに聞きやしない」
「当たり前だろう。かつてお前を殺した国に帰ると聞いて、大人しくしてなぞいられるか。俺は二度と同じ過ちは繰り返さんぞ」
「……だ、そうだ」
少しばかり気恥ずかしそうに頬を染めたカイトを見て、ハルキと何故だかセルジョが納得のいかない顔をしていた。
「っでは、魔族がこの城内に入れるのは、一体どのような訳でしょうか。大魔導師殿の結界は、魔族の侵入をも拒むはずです」
「ああそれは、ここに来る前に大魔導師殿にお会いしたからだ。ジェルヴァジオに術を施し、俺の言う事には一部逆らえないようにした」
「カイト殿は、かのお方をご存知なので……?」
「カイルの頃に一度会っている。あの方も、俺の力の事は何故かご存知だった」
「そう、でしたか……」
「ああ。お陰で少し仕事を頼まれているんだが、まぁ何とかなる。そう難しいものではないし。それに、ジェルヴァジオはここでは俺の許しがなければ何もできない。そう大魔導師殿にもお願いしてある。……元から凶暴な所は変えられないが」
「一言余計だ」
「そこは事実だろうが」
「……違いないが、人間相手とはいえ、領主としての体面というものがあるだろう」
「あれだけの騒ぎを起こしておいて何を今更──」
そうやって何とも、旧知の間柄のような仲を見せつけられてしまい、一同は閉口する。
かつてどんなに殺し合おうがいがみ合っていようが、時が経てば水に流せる。そんな関係を築ける者がどれだけ貴重か。カイトとジェルヴァジオのその関係を、多くの者が羨んでいた。
「それで、他に聞きたい事は?」
「……はい、では私から。カイト殿は、これからどうするのですか? また、ハルキ様と共に城へいらっしゃるので?」
カイトがそのように聞くと、セルジョが真っ先に問いかけた。どこか期待したような眼差しで、カイトはそれを少しばかり疑問に思う。
「ああ。俺は今も昔も神子の従者だ。コイツが居るところならどこへでも行く」
「それなら、私もまたカイト殿の護衛として──」
「それならば心配いらん」
カイトが城へ戻ると分かった途端、そのように言い出したセルジョにジェルヴァジオの冷たい声が浴びせられた。
「護衛は俺がする。お前達ひ弱な人間共には任せてはおけないからな。俺はその為に来たのだ」
ふんぞり返ったようにそんな事を言ったジェルヴァジオに、セルジョが微笑みながら言葉を返す。
「……封じられてお力が出せない割に、随分と自信がおありですね? いざという時は城内に慣れていた者の方が何かと──」
「俺の術にかかった男に気付けない時点で、貴様は頼りにならない。護衛は諦めろ」
その二人の間にもどことなく火花が散っているように感じられ、周囲の者──特に近衛の騎士達の顔はひどく引き攣っていたようだった。
しばらくは彼らの無言の戦いも続いたが、アウジリオ達城の者達の仲介によってその場を収めるに至った。
変わらず神子であるハルキの従者としてカイトが、そして、ハルキの護衛にはセルジョ、そして、カイトの護衛にはやはりジェルヴァジオが就く事となった。一部からは大きな反発が寄せられたが、それが一番平和的な解決法だったのだ。
話を何とかまとめ、疲れ切った様子のアウジリオはそこでその場の解散を無理矢理宣言した。皆が治まるところに収まり、一見すると平和を取り戻したようにも見えた。
「ねぇ、セルジョ、俺達結構いいコンビだと思うんだ。手ぇ組まない? あの野郎をぶっ潰すために」
「おや、それは楽しそうな考えですね。私に出来る事ならばご協力致します」
そうして彼等は、騒がしくも新たな日常を歩んでいくのである。
少しばかり違う形にはなってしまったけれども、様々な事を許されるようになったカイトとハルキは、その国で日本とも変わりない自由を得た。
ハルキはカイトにとって、何よりも大切な人だった。それは今も昔も変わらない。唯一同じ苦しみを持つ、最高の理解者として。
そしてまた、ジェルヴァジオも同様に大切な者になった。この男の前でなら、カイトは全部を曝け出す事ができた。ハルキとはまた違った形で、醜い所も含めて全部を見せる事ができた。
カイトは心から笑えていた。少しばかり窮屈で、しかし騒がしく慌ただしい毎日がこれからも続いていくのである。
「またやりやがったなクソ餓鬼共ッ!」
「こわぁー、ねぇカイトカイト、今のアイツの言葉聞いた? チンピラみたいだよ」
「ちょっと待て、おい、……今度はセルジョもやったのかよ……」
「いえ、私はただハルキ様のご命令通りに──」
カイトは自然な笑みで笑う事ができる。自分を卑下するでもなく、他人を羨むでもなく。
これからもずっと、それは続いていくのである。
了
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