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六月八日(土)
しおりを挟む買っちゃった買っちゃった。
ここ何年も、自分を小細工する装飾品を買ったことがない。
あたしはある意味SDGsな人間だから、装飾品も持ってるものを形を変えて利用する。もしくは装飾品でないものを装飾品にする。もしくは身の回りの余った何かで作る。というか、大袈裟にいうと、二つとない自分だけのものを持っていたいの。
あたしの食指を動かしたのは、籐のピアスだった。
バイトの帰り道、手作りマルシェが開かれているのを発見。
いつものあたしなら、するりとスルーするのに、小さなオレンジ色に光る丸いものが目に入った。
実際測ってみると直径3センチほどの木に糸を巻きつけただけのブローチだったのだけど、目の悪いあたしに何故かその小さな代物が遠目にもピカリッて光って、思わず瞬きをして立ち止まってしまったのよ。
吸い寄せられるようにそのブースに近づき、それがブローチであることを確認した。
どこの家にもあるような余った糸を巻きつけたのだという。
う~ん、何やら近いものがあるな。
籐のピアスが気になる。
あたしが一番気に入ったのは、濃い藍のシンプルなピアス。
「これが一番好き」って言ったら、
「さすが、お目が高い。藍で4回染めてるんですよ……この中で一番高いんです」って言われれて苦笑した。
「欲しかったな~」と指を咥えていると、
「でも、実際つけると大きくても目立たないですよ」とフォローが入った。
あたしは、
「そっか、黒髪には映えないか」と、潔く諦めたあと、いや、藍に合う色に髪を染めればいいんじゃ…‥なんて考えて、またひとり苦笑した。
でも、珍しく、なんだか本当に珍しく、何かを買いたい! という欲求を抑えきれなくなっている。何でだろう。何か満たされない気分がずっと続いて、不機嫌が続いてるからかしら……
あたしは黒髪にも合う、ナチュラルな籐のピアスを買うことにした。藍に比べると個性はマイルドだけど、こちらは4度染めのピアスほど高価ではない。
結局、オレンジとイエローの糸巻き巻きブローチ2個と籐のピアスがあたしの物になったんだよ。
早速その場で、墨色のワンピースに元々付けていた、自作の絵のブローチのそばにオレンジとイエローのブローチを装着。かわいい! ブローチだらけ!
ふと気づくと、あたしが来た時はだあれもいなかったこのブースに、やけに人集りができている。
「ありがとう、あなた福の神です、お客さんいっぱい来ました」って、木のブローチをひとつプレゼントしてくれた。
「そっかなあ~、お役に立てたならうれしいです」と、上機嫌になったのよ。
必要不可欠でない物への散財は、極々たまには必要不可欠だと思った次第で。
オレンジ色が引き寄せた小さな癒し。
あのお姉さん、商売上手よね、ふふふ
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