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六月四日(火)
しおりを挟む知り合ったばかりの人から、突然何の前触れもなく画像が送られてきた。
え? 見たことのない真っ白で華やかな花。
「庭の片隅で見つけました」
「何という花なのですか?」
「どくだみ。八重のどくだみです」
驚いた。
シンプルで力強く群生するどくだみとは、まるで姿かたちが違う。
「驚きました、華やかで」
「そうでしょう。どくだみはきらいな人が多いから、どうかなと思ったんだけど」
「匂いに関してはノーコメントですけど、どくだみのシンプルなフォルムと厚みのある白色は好きです」
「それならよかった」
ついこの間、溝巻希の追悼展で知り合った、溝巻と同年配くらいのはきはきした女性。
彼女の印象は……そう、小中学校の時のクラス委員のような感じ。
ショートカットでおでこが広くて聡明で、堂々としていて穏やかで。
クラスのみんなに分け隔てなく気配りを持って接するクラスの委員長。
勝手にそんな印象を受けたんだ。
「曖琉さんは絵描きさんなんですよね。知ってます。溝巻さんがよく私たちに言ってました。面白い絵描きの娘がいるんだ、って」
いきなりそんな風に声かけられて、見当はずれに、
「ありがとうございます」なんて、お礼言ったりして。
「曖琉さんの生の絵を観てみたい」
「ぜひぜひ!」
で、LINE交換したの。そしたら、この画像。
なんとも素敵な人だ。
庭で見つけた小さなときめきを、知り合ったばかりのあたしに送ってくれる。
他愛ないこと。
それも前触れなく。
気取ることなく。
こういうのって、すごく幸せな心持ちになれるんだよ。
ね、わかる?
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