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四月十六日
しおりを挟む早朝ぽっかり目が醒める。
波音があたしの脳みそを柔らかくさらってく。
そうだ、昨夜は海で眠ったんだっけ。
隣にあなたはいなくて、テントの外から話し声が聴こえる。
「にーちゃん、煙草くれよ」
「いいですよ……あっ、2本しかない。じゃぁ、おっちゃんと1本ずつね」
「すんません。にーちゃんいい男だね」
「ええ、よく言われます」
なんのこっちゃ?
一体誰と話してるの?
あなたと明らかに自由人と見受けられるおじさんが、海を見ながら肩を並べてる。
あなたはだれとでも分け隔てなく話が出来る人。
警戒心は解かないまま、どんな時でも偏見を持たないで、素性の知らない人とも笑い合える不思議な人。
あたしはそのおじさんが去るまでテントの中で眠った振りをしていたけど、正直なおなかがぐぅって鳴った。
あなたは腕時計を見て、
「おっちゃん、オレの煙草うまかったでしょ。吸い終わったなら、もうお帰りよ」って、さりげなく立ち去ることを促す。
「ありがとな、にーちゃん」
愛おしそうに丁寧にテントをたたむあなたは、なんて嬉しそうな顔をしてるのかしら。
何においても広げる時よりしまう時の方が、より楽しそう。
ある意味変態よね。
海のそばのコンビニで朝食のおにぎりを調達。
あなたはいつも鮭と明太子ね。
君はいつも焼きおにぎりと梅しそだ。
さあ、穏やかな心持ちで仕事に行っておいで。
うん、行ってきます。
職場の誰にも言わない、海からの出勤。
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