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四月十一日
しおりを挟むさあ、出かけるよ
今日はママの誕生日
決してそれ以上歳を重ねることのない誕生日
止まった歳の数だけ赤いミニ薔薇を抱えて
ママが似合うって言ってくれた流行らない赤い口紅をひいて
三つの列車を乗り継いで
ママの生まれ育った町に降りる
鎌倉は平日も人で溢れかえっている
大学のテニスコートのある小高い丘
ほら、一本の大きな桜の木
散り切った花びらで春絨毯が出来上がっていて
文学少女だったママが桜の木の下で本を読んでいて
気持ちいいね春の風
ママの欠片が眠る丘の上から鎌倉の海を眺める
光ってるね春の海
ふわふわ風と海のきらきらで綿菓子が作れそう
目を瞑って長い長い急な石の階段を降りる
あなたを信じたくて
あなたの服を掴んで
だから目を瞑って階段を降りていくの
あなたはそれを知らない
人混みの八幡様を通り過ぎて
閉ざされた美術館の外観に懐かしい匂いを感じて
雪ノ下教会には光の神様がいらして
この世界に誕り生まれたあとで
君のママは真に生きるために神様のもとにいるんだね
って、あなたが言った
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