万愚節的日記とか(Apr.2024)恋愛編

弘生

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四月九日

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S20号のキャンバスを張ることにした
段ボールのマット感が好きなんだけど、気分的に超荒目のキャンバスのざらざらした感触に描きたい気分なんだ
描くものなんて全く未知だけれど

特別なアトリエを持たないあたしは狭すぎる部屋で、雑多な我楽多を端っこに避けて床面積を確保する
重たすぎるロールキャンバスを広げるために、四肢を使って丸まりたがるそれと全力で格闘する
数分でHP体力が消耗する

キャンバスサイズにカットするための線を引く
こんなに厚くて硬くて丸まってる頑固なキャンバスは、ズレないようにきちんと線を引いた方がいいからね
目分量の張りしろを加えて、線のをカットする
ザクザクザクザク……いい音
 
あれ? なんか、なんか違う……

嘘でしょ! あたしってば線の……線のを意気揚々と切っていた!

これは泣きます!
がっくり全身の力が抜けて、
「うそぉ、なにやってるのぉ!」
って、あたし自身のおでこをグーで叩いた

そしたら鼻血がぶぅーって出た
ぼたぼたと白キャンに赤い血がドロップする
そしたらあなたが飛んできて
「うそぉ、なにやってるんだよ」
って、あたしの鼻にティッシュをぎうぎう詰め込んだ

時間のかかる止血に辟易しながら、
「なんでいつも普通に失敗するんだろ」って言ったら、
「なんでいつも普通に失敗するんだよ」って訊く
「真似しないでよ!」
「真似じゃないよ」
「あなた誰」
「僕は君」
じっと止血しながら、あなたの瞳に映るあたしを見る
鼻に白いティッシュを詰め込んでる無様なあたし
その奥のあたしも、またその奥のあたしも……

「この部屋に合わせ鏡は要らないよね」
ってあなたが言って、鏡を一台取り外した
「そんなに自分を覗いてると、一番奥の自分に夢喰われちゃうぞ」
ってさ

「さあ、キャンバスをカットし直そう」
「手伝ってくれるの……? ありがと」
「僕がここにいる時くらいはね。キャンバス張る時に、また指に血豆作りそうだしね」


「見て見て、四つん這いから落ちた血滴と、立ち上がってから落ちた血滴の大きさがあんなに違う」
「何がそんなに楽しいんだい」
「衝撃の差が楽しいのよ」
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