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四月五日
しおりを挟む「あっ!」
「あっ!…………」
入浴剤で白濁したバスタブに、確かに消えゆくあたしのマグカップ
「今、落ちたよね? だから持ち込むなって」
「だって……」
あたしは手探りでカップを探す
音もなく底に沈んだカップからコーヒー色がうっすら立ち上る
そっと持ち上げると、コーヒーのほとんどはまだカップに残り、白いお湯が表面張力で塞いでいる
けれど、すでに飲むわけにはいかない
「だって……今日は特別、うん、特別にコーヒー風呂にしてみました」
「吐くならもっと上手いウソを言え」
「ウソじゃないよ、昼間の過呼吸で崩れた平常心と重心を取り戻すんだもん、ほら」
あたしはマグカップを逆さまにして、湯船に投入した
「なんて中途半端なことを……」
「リラックス効果があるよ、きっと」
「ないと思う」
「お砂糖は入ってないから大丈夫、ミルクは美白効果……」
「そう言う問題じゃないね」
呆れた顔であなたがお湯をかき混ぜると、一部うっすらコーヒー色に濁っていたお湯は元の白濁したお湯に何事もなかったように混ざってしまった
「ほら、不安なことはこうして忘れちゃえ」
あたしはどこに行ったのかわからない、コーヒー色の所在を探す
白濁の中に霧散した僅かなコーヒーは、あなたの中のあたしであるような気がした……んだ
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