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八月十一日(日)
しおりを挟むほぼ実録
とある八月の午後の診療所。
怒涛の如く混み合う患者の波が、ふっと切れた瞬間。
診察室のドクターの真うしろにある診察用ベッドに、あたしはぐったりと腰を下ろした。
ナースA、ナースBがそれに続く。
あたし 「はぁ~、ごほんごほん、ずるずる、こんこんこん、はぁ~、咳が止まらん」
ナースA 「ちゃんとご飯食べないからだよ! みんなが風邪ひいたらあんたのせいだからね!」
ナースB 「お肉食べないからだよ! カツとかさ」
ナースA 「栄養つけないからだよ! あ~肉食べたい、でも天ぷらも好き」
ナースB 「あ、今日天ぷら買って帰ろうかな」
あたし 「いいね、あたしも天ぷら好き。でもあんまり買わないなあ」
ナースA 「じゃ、自分で揚げるの?」
ナースB・あたし 「ひとり分じゃ揚げないよ」
ナースB 「めんどくさいからやったことない」
あたし 「挑戦したけど下手くそなの。揚げてるうちにズルッと衣がズル剥けちゃうの」
その瞬間、ナースBの肘が思い切りあたしの脇腹に食い込んだ。
「何? ゴホゴホゴホッ」咳き込む。
驚いてナースBの方を見ると、白目が大きくなったまん丸の目で、何かをあたしに訴え、さらに口パクで激しいジェスチャーを繰り返す。
あたしがハッと気づいたあと、ふたりして目の前のドクターのうしろ姿にゆっくりと焦点を合わせる。
ドクターは、ノートパソコンの暗くなったモニターに映った自分の頭を両手で直していた。
ナースAはすでにカーテンの向こうに逃げていた。
⚪︎
今日から夏休み、わーいわーい
思えば八月の到来とともに夏風邪魔王を召喚してしまい、十日余りを咳三昧で過ごし、ほぼ何も手につかなかったし、これといった日々の記憶は映画を観たことくらいだろうか。
なんて考えていたら、数日前の気まずかったお話を思い出した。
あたしはね、全く意識してなかったんだよ。
ドクターだって、おそらく気がつかなかったと思う。
なのにあんな至近距離で口パクジェスチャーとかするから……気まずくなったんだぞ。
知らん。
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