Ms.Augustのくねくね日記(Aug.2024)

弘生

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八月十一日(日)

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ほぼ実録

 とある八月の午後の診療所。
 怒涛の如く混み合う患者の波が、ふっと切れた瞬間。
 診察室のドクターの真うしろにある診察用ベッドに、あたしはぐったりと腰を下ろした。
 ナースA、ナースBがそれに続く。

 あたし  「はぁ~、ごほんごほん、ずるずる、こんこんこん、はぁ~、咳が止まらん」
 ナースA 「ちゃんとご飯食べないからだよ! みんなが風邪ひいたらあんたのせいだからね!」
 ナースB 「お肉食べないからだよ! カツとかさ」
 ナースA 「栄養つけないからだよ! あ~肉食べたい、でも天ぷらも好き」
 ナースB 「あ、今日天ぷら買って帰ろうかな」
 あたし  「いいね、あたしも天ぷら好き。でもあんまり買わないなあ」
 ナースA 「じゃ、自分で揚げるの?」
 ナースB・あたし 「ひとり分じゃ揚げないよ」
 ナースB 「めんどくさいからやったことない」
 あたし  「挑戦したけど下手くそなの。揚げてるうちにズルッと衣がズル剥けちゃうの」

 その瞬間、ナースBの肘が思い切りあたしの脇腹に食い込んだ。
 「何? ゴホゴホゴホッ」咳き込む。
 驚いてナースBの方を見ると、白目が大きくなったまん丸の目で、何かをあたしに訴え、さらに口パクで激しいジェスチャーを繰り返す。
 あたしがハッと気づいたあと、ふたりして目の前のドクターのうしろ姿にゆっくりと焦点を合わせる。
 ドクターは、ノートパソコンの暗くなったモニターに映った自分の頭を両手で直していた。
 ナースAはすでにカーテンの向こうに逃げていた。

     ⚪︎
 
今日から夏休み、わーいわーい
思えば八月の到来とともに夏風邪魔王を召喚してしまい、十日余りを咳三昧で過ごし、ほぼ何も手につかなかったし、これといった日々の記憶は映画を観たことくらいだろうか。
なんて考えていたら、数日前の気まずかったお話を思い出した。

あたしはね、全く意識してなかったんだよ。
ドクターだって、おそらく気がつかなかったと思う。
なのにあんな至近距離で口パクジェスチャーとかするから……気まずくなったんだぞ。
知らん。
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