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八月八日(木)
しおりを挟む一週間前から咳が出ていて、熱もないしからだは動けるから高を括っていたら、一向に咳が止まらない。
確かに深い連続する咳き込みは、もともと少ない体力を消耗するから、仕事を終えてうちに帰ると、シャワーしてお腹に何か入れてすぐに横になってしまう。
夜中に咳き込んで目を覚ますたび、直前まで見ていた鮮やかな夢の構図の残像が、少しの間だけ暗い部屋の空間に浮かび上がる。
散々咳き込んで、涙目になって、汗をかいて、目がすっかり覚めてしまうので、ベランダに出て身体を冷ましながら夜空を見上げる。
よくも飽きずに毎夜毎夜熱帯夜よね。
ただ喉のヒリヒリだけを感じながら、何も考えずに空を見てると、本当に本当に身体が溶けて消えてゆくような感覚になる。
この肉体がなくなったとして、現時点では喉のヒリヒリ感覚だけは感じ続けるのだろうか、などとくだらないことを考える。
空を泳ぐ黄色い魚が大きな口を開けて、あたしを丸ごと呑み込んだりすることはあるだろうか、などと真剣に考える。
隣の住人がベランダに出てきたようだ。どうやら煙草を吸いに出てきたらしい。
季節を問わず、頻繁に夜中に咳が隣のベランダから聞こえてくる。きっと喘息があるのかもしれないが、煙草は止められないのだろう。ベランダ越しに煙草の煙がやってくる。
あたしは部屋に戻って、嗽をしてもう一度眠ることにした。
さっき見た夢の残像はすっかり霧散して、ほんの少しの色合いしか記憶にない。
次はどんな夢を見るんだろう。
そんな一週間を繰り返して、昨日から突然ひどいお鼻水……ティッシュボックス一箱を一日半で空けてしまった。
今日の鼻声は必要以上にすごい……声だけなら艶っぽくなってるかもしれない(笑)
ああ、去年の夏休みの悪夢がよみがえる。
でも、今年は一週間早い風邪引きだから、来週からの夏休みはきっときっときっと大丈夫だろう! と希望的推測をもって、有意義な夏休みを迎えられるはずなのである。
今日は、幅50cm×高さ180cmの段ボールにキャンバス地や布を巻き付けるだけの作業をしてヘトヘトになった。
あと2日、病院のお仕事に堪えれば、きっとそこそこ楽しい夏休みが手に入ると信じて、今日も早めに寝てしまおう。
……あたしがお暢気にこんなこと書いてる時に、九州の方で大変な地震が起きている。
被害が大きくなりませんように。大切な命が守られますように。
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